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1246  森の中でやっぱりこんにちは

 森は特にこれと言って異常を感じる様な空気は発してはおらず、弓を担いだ者たちがサッと音も静かに入っていくのを俺は横目で眺めた。


「何も無い、何て事は無いんだろうな。きっと今の狩人がらみで何かしら起こるに決まってるんだ。そうに決まってる。」


 覚悟は決めた。俺は森の中へと入る。その姿を後ろから見ていた奴が数名居るのだが、コレに俺はこの時に気付かなかった。気付けなかった。


 だから今こうして前後左右を囲まれて脅されている。追剥だ。持っている物をこちらに寄越せ、である。


「森に入って十分もしないでコレ?何だかしかもこいつら慣れてんな?まさかこうして見慣れない奴が森に入ったら脅して金目の物を巻き上げてるのか?」


「うるさい!さっさとそのカバンをこちらに寄こしな!そうすりゃ命だけは助けてやるよ。」


 この男たちは四人組である。そして顔がバレない様に布で覆っていて目だけを出していた。

 全く気負っていない所からしてもう何度もこうした行為を繰り返している事が窺えた。全員が弓を構えて俺へと向けて狙いを定めている。


「早くしないか!死にたいのか?カバンをこっちに投げろ。早く!」


 その一言と共に脅しのために、俺の脚元に矢が一本刺さる。俺は別にその場から動いていない。奴らがワザと外しているのだ。ここまでがワンセット、と言うヤツだろう。

 ここまで来れば普通の者だったら言う通りにして両手を上げて命乞いでもするのだと思う。けれども俺は普通じゃ無い。


「なあ?あんたらは何人こんなことして殺して来たんだ?遠慮しないで、いいか?」


「ああ?んだテメエ?痛い目見たいって事か?じゃあ遠慮なくその足を射抜いてやるよ!」


 脅しに屈せずにカバンを渡そうと言った動きをしない俺にイライラしたのか、リーダーと見られる男が俺のふくらはぎを狙って矢を放とうとした。

 痛いのは御免だ。俺はその瞬間に加速状態に入る。そして矢を構えているままに止まっているリーダーの右脛にデコピンをしてやった。


(多分だけど、骨くらいは折れてるだろうな。でも、まあ、可哀そうとは思わないんだけど)


 俺は「力」の解除をする。すると静かな森の中に不自然な「ベキ」っといった音が響く。


「ぎ!?いああああああああ!?いってぇ!ほ、骨が?お、折れて!?」


 脚の折れた男は音と共に前につんのめってうつ伏せに地面へと這いつくばっている。急激に右脛が勢いよく後ろへとぶっ飛んだからだ。バランスを崩してそのまま前へと顔から落下だ。

 コレに残りの三人がオロオロし始めた。しかし俺はここで俺の「モノサシ」に掛けてもう一度聞かねばならない事を口にする。


「コレは犯罪だな?で、お前らは一体コレで何人の人を殺してきた?何度人から荷を脅し盗ってきた?」


 荷を盗んできただけならこの場で俺はこいつらを殺そうと言った事はしないでおこうと思った。だけどまあ、脚の骨くらいは折って痛い目見せて、自分がどれだけの罪を犯してきていたのかくらいは自覚させてやろうと考えている。


「クソ!死にやがれ!」


 俺の背後を塞いでいた奴が弓を構え始めた。しかし遅い。矢を番えて狙いを定めて、なんて時間が掛り過ぎだ。

 俺をこの場で殺したいなら、声を発しない、早撃ち、くらいはしないと駄目だろう。そしてこいつらはそんな達人では無い、と言う事だ。

 段階を踏んで一々時間が掛っている攻撃では俺を殺せない。その時間の間に俺がその攻撃に対して集中してしまうからだ。

 そうなったら後は「力」を発動させて加速状態に入るだけ。相手は動かずに止まったまま。そんな中で俺だけが動く事が可能なのだから狡いモノである。


 同じくそいつの脛をデコピンしてから加速を解除する。すると最初の男と同じ動きで同じリアクションを取る。


「ぎゃあああ!?ひィ!?お、折れて、俺の脚!?折れて、ええええ!」


 痛みによって上がる悲鳴が森の中にこだまする。ここで俺は嫌な予感がした。


「なぁ?これって・・・森の肉食獣をおびき寄せちゃうんじゃないのか?」


 俺の頭に過ぎったのはちょくちょく物語中で使われるテンプレ展開。それは当たって欲しくない勘。


「駄目だ。森の奥から何だか微かにミシリミシリと音がこっちに迫って来てやがる。」


 こうしてやっぱり森の中でも面倒な事が起きたのだった。

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― 新着の感想 ―
[一言] (๑╹ω╹๑ )久しぶりに汚ねえ花火にしてもいい人材が来ましたね。
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