1245 山登りだけじゃ無かった
一泊した。何事も無く過ごす事ができ、久しぶりに気を抜いてゆっくりできたことが良かったのか。俺の目覚めはスッキリしていた。
後は宿を出てそのまま門から山へと向かうだけ。既に昨日宿に入る際に支払いは終わらせてある。そのまま鍵を返却して宿を出た。
「・・・門を出る際にチェックがあるんじゃなかろうか?俺は何もそもそも持って無いな?身分証明?そんなの作ってねぇ!そんなの作ってねえ!なんて言ってミル・・・」
とあるお笑い芸人を思い出しつつそんな風に言ってみた。でも、虚しい。俺はこの国に入る際に特殊な入り方をしたので身分証明を作る合間など無かったのだ。
もしかしたら団長に捕まらなかったらソレはそれで門兵に不審者として捕まって牢屋へと入れられていた可能性と言うのもあったはずだ。
どちらが良かったのかなどはそれこそ今更比べられない。もし牢に入れられていたパターンだった場合にその後にどのような事に巻き込まれていたか分かったモノでは無いからだ。
「強行突破、正面突破するか。一応はソレをできる力はある訳だし。これ以上この国に留まる理由も無いし。」
多分この国での俺の役目というのはもう終わったはずだ。ここまで邪魔が入らずに街の中を歩く事ができたのがその証拠だと思いたい。
こうして門の目の前まで来た俺は早速加速状態になって開いている門からゆっくりと歩いて出る。
もちろんこの「力」を使うと俺以外は動かない。こうなれば急いで出る必要も無く、俺は堂々と門を出る。そして大分距離が離れた所で加速を解除した。
「うまく行った、か。オサラバ、サラバ。今頃は王子様は書類処理に追われてヒイヒイ言いながらチェルにどつかれてたりするのかな?・・・そういやこの国の名前、最後まで知らんかったな?まあもう関係無いか。覚えておくつもりも無いし?」
気楽な気持ちで俺は道を行く。教えて貰った門から出て真っ直ぐと俺は歩いている。このまま行けばちゃんと山へと繋がっているはずだ。
どうにもこちらの道は人がおらず、門を出る際にも出て行く旅人などは見かけられなかった。
しかし狩人の様に弓を担いだ者たちがチラホラみられる。その人達はどうやら狩りを生業としている様な空気だ。
この先には山しか無いんじゃなかったのか?と思っていた俺の目の前に広大な森が見えてくる。
「まさかこの森の奥まで行ってから山?また一悶着起きそうな、予感・・・」
只々山へと繋がっている一直線の道だと思っていたら障害がそびえ立つ。回り道などは無いかと思ったが、森へと道は直行している。分かれ道は見かけられなかった。
「ワーオ、どうしようかな、コレ。山越えだけが目的なのに森を突っ切るとか言うのは予定に無いぞ?」
ここで加速状態になって絡まれない様に一気に突っ切るか、あるいは地道に森を通常状態で踏破するか迷った。
「どうする?未だストレスの解消は完全じゃ無いぞ?そんな精神状態で「力」何て使いたくないんだけどなぁ・・・」
宿でスッキリとした睡眠を取れたとは言え、俺のストレスゲージの減りはまだまだ少ない。ここでむやみに「力」を使った行動をすると後々がもっとコワイ。
しかしだからと言ってノーマルで行動すればどんな出来事と遭遇するか分からない。
そんな事を考えていたら森の入り口、目の前に到着してしまった。




