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1240  やっと出られそうだ

 この言葉に返事をして良いモノかどうか。俺は最終的に沈黙を選んだ。沈黙は金、雄弁は銀だったか。

 俺がここで話す事は何も無い。だけども部屋の中が静かになった。まるで俺に「喋れ」と言っているかのように。


「・・・何故、何も答えんのだ?ふむ?許可を出さんと喋れんか?そちの名は何と言う?」


 俺はコレに最後まで黙って居ようと思った。これから俺はここを去る予定だ。もう事は全部終わったし、チェルから頼まれた「代わりをしてくれ」というのはもう本物が帰って来たのだからお役御免だ。

 後はこの掛けられている魔法を解いて貰って魔法カバンを回収、ずらかるだけだ。一々聞かれたからと言って名前を教える事も無いだろう。


「何も喋る気は無いのか?まあ、良いだろう。こうしてアレクも戻って来た事だ。早く解放されたいと思っていると言う事でいいのかの?・・・本当に何も喋らん気か。」


 俺は黙る。相手が諦めるまで。こういう状態になったら喋ったら負けだ。余計な流れになりそうな時に口を挟めばいい。


「では、国王陛下。私は早速トイレンと仕事に取り掛かろうと思います。御前失礼いたします。」


 王子様がそう言って部屋を出るので俺もそれと合わせてその後ろに付いて行く。

 チェルも、三人組も一緒に。扉が閉まる音がして廊下には溜息が幾つも吐かれた。


「おい、影武者の、えー、何だったか?サイトウか。お前は陛下の前で何であそこまでかたくなに黙って居たんだ。」

「肝が冷えた~。不敬罪とか、侮辱罪とか言われてその場で殺されてもおかしく無かったじゃん?何で無駄に黙ってたのよ、も~。」

「さて、俺たちもレクと一緒にまだまだ仕事だ。お前ら、行くぞ。」


 王子様の執務室へとこのまま向かう事になっているッポイが、ここで俺は切り出す。


「なあ?いい加減俺を解放してもらいたいんだけどな?もう俺出て行きたいんだけど?」


 この言葉に何故か三人組に不思議がられる。チェルはそこら辺は分かっているので何も言ってこない。

 王子様は至って冷静に勧誘してくる。


「ねえ、考え直さない?ウチの国に仕えようよ。そうしたらお給料は弾むし、権限も地位も名誉もあげるからさー?」


 この言葉に俺は何処に引っ掛かる部分があったのかは分からないのだが、ちょっとだけキレてしまった。


「あぁ?要らねーよそんなもん。勝手にやってろ。それよりも俺の要望は?聞いてくれるつもりあるの?無いの?どっち?ねえ?暴れても良い?いい加減ムシャクシャしてきたんだけどさぁ?」


 俺のこの一言で三人組が警戒態勢に入って王子様と俺の間に立つ。しかしここでこの空気を壊したのはチェルだった。


「分かった。すぐに連れてくるからクソ殿下の部屋で待ってろ。ついでに金もそん時に渡す。」


「あ、ここから部屋まで道が分かんないから案内宜しく。んじゃ、行こう。」


 このチェルの一言で俺はクルッと態度を元に戻す。チェルがスタスタと廊下を歩き始めるので俺はその後ろに付いて行く。

 コレに王子様が。


「えー?チェルは僕のお付きのメイドでしょー?何でそっち優先なの?」


 などと言って愚痴をこぼしていた。

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