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124  興味を引かれて覗いてみれば

 やはりここでもまた光と闇は存在した。厨二病の話では無い。スラムだ。

 何処にも栄えている所の裏にはうらぶれた場所が出てくる。

 人気の無い通りを少年はひたすらに走って行く。


(あー、この分だと貧乏な孤児院とか、浮浪孤児とかが出てくるのか?後味悪いなーそうなると)


 少年を捕まえずに後を付けるのは原因を探るためだ。とは言え別にそれを俺が解決する気までも持っている訳じゃなかった。

 清貧を貫けと説教するつもりも無い。救ってやる気も無い。前世の地球とは全く異なる理のこんな社会だ。

 俺が手出しできる事なんて無いも等しい。ならばさっさと金だけとり返せば良いと返されればぐうの音も出ない。

 だけどその行動を取る上で元になったモノが何なのか、それが気になるのだから仕方が無い。

 例えそれが「お決まり事」と言う予測があったとしても。


 だけどその俺の予測は少しだけ違った所に落ちた。


「今月の分はこれで終わりだ。うちの奴らに手を出すな。約束だ。」


「ふん。ツマラネエな。これじゃあ鬱憤晴らしができなくなったぜ。」


 少年が金を渡したのはヘラヘラとした笑い顔をするチンピラ三人組だった。


「おい!金は渡したんだ。これ以上関わって来るな!」


「てめえらは自分の命を金で買ってんだ。払えなくなれば餓鬼どもを始末する。俺たちゃそれだけさ。」

「所場代さえ払えば手出ししねえよ。まあ痛い目を見たけりゃいつでも相手してやんよ。」

「お前ひとりで面倒見るのも辛えだろ?いっその事逃げちまうか?ギャハハハハ。」


 聞くに堪えない会話がなされている。俺はどこぞの黄門様じゃねえぞと言いたくなる程の。

 だけど男たちがその場から消えるまでそこに俺は出て行く事は無い。

 事情は分かった。ならばこの後味が悪い気分をどうやって綺麗サッパリ無くすかだ。


 その場からチンピラ共が離れていく。完全に見えなくなってからセレナに頼んだ。


「あいつらに関わる全部根こそぎ潰したい。後を付けてくれないか?」


「畏まりました。主様のお心のままに。」


 そう答えたセレナがシュッと音を立てて屋根の上に飛んだかと思えばチンピラたちが消えた方向の屋根へと飛んで姿が見えなくなった。


 それを確認して俺は隠れていた道の角から出て行って、俯いて悔し気に拳を固く握る少年に声をかける。


「金返せやコラ!餓鬼がカッコつけやがってからに!この落とし前はどうしてくれるんじゃい!」


 それは今の場面を見てしまった俺の馬鹿!と言う気持ちを込めた自分に対する言葉だ。

 それと同じに少年に対しての、どうして俺を狙ってスリをしたんだ、と言う憤りだ。

 知らなければどうでもよかった。だが今こうして知ってしまったからにはどうする事もできない。


 ならば毒を食らわば皿まで。テンプレに巻き込まれてしまったら最後まで。


 ただでさえ皇女から助けてコール、皇族の後継争いに巻き込まれているのだ。今更この程度の厄介事ぐらいだったらまとめて抱え込んだって変わらないだろう。

 そう自らに言い聞かせる。まあヤケッパチとも言う。ここにきて俺のテンションはおかしな方向に行っていた。


 そこでの少年の反応は早かった。逃げる体勢をすぐ取りこちらの顔を見もせずに俺と反対の道に駆けて行こうとする。だが無駄だ。

 加速する俺に逃げ切れる訳が無い。逃げ道を塞ぐようにいつの間にか現れる俺を見て少年はギョ!とした顔で凍り付くのだった。

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