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1215  気分の悪くなる展開は良く無い

 さて、この続きはまた後で、だ。気絶していた偽メイドが目を覚ましたからだ。チェルはこの刺客を尋問すると言っていた。

 だけども俺はいくら自分が命を狙われたからと言って女性を拷問にかけて喜ぶ様な異常性癖をしていないのでチェルがやり過ぎないようにと願っている。

 そんな俺の心配を知らぬと言いたげないつもの笑顔のチェルは単刀直入で質問をした。


「お前は団長の指示で来たって事で良いか?黙って居ても構わねえが、できるなら頷くか、首を振るかだけでもして貰いてぇんだがな?」


 今の状況を把握し始めた刺客はキッッと強い目線でチェルを睨む。俺の姿はその視界に入っていない。何故なら気配を消して刺客の後ろにいたからだ。それにこの刺客が気付いている様子は無い。


「貴様・・・完璧にお前を模倣したはずだ。何故第一王子は直ぐに私を偽物だと気付いたのだ?」


「何だよ、私の質問に答えないで逆に質問でお前が聞いて来るのかよ。それにしてもすぐにバレたのか?はっ!おもしれぇなあ?私に似せたのか声を?ちょっとソレで喋ってみ?」


 刺客は別段手足を縛っていると言う訳では無い。なのでここで妙なマネをすれば即座にチェルがソレを阻止するだろう。

 そして俺もしっかりとこの刺客を監視しているのでとりあえずは安全と言った所か。それでもまだこの刺客が何をやらかすか分かったモノでは無いので注意深く俺は観察を続ける。

 刺客の方はチェルの方に意識を向け過ぎていて俺が後ろに居る事にまだ気付いていないみたいだ。


「王子を殺す指示を受けた。毒殺が良いだろうと言われた。死体は隠す。目撃者が居ない様に機を計れと指示もな。さあ、質問には答えたぞ?」


「肝心の「誰に」って所をお前の口から聞きたいんだが?まあ私の質問は最初に団長って言ってるし、そう言う事ってんで良いな?じゃあ教えてやるか。私はな?クソ殿下の前ではこんな喋り方で対応してんだよ、いつもな。まあぶっちゃけ、コレが素だな。分かったかよ?」


 この答えにこの刺客が「まさか」と言った顔になる。うん、信じられ無いだろうが本当だ。王族相手にこの様な態度で接するメイドがいようか?いないだろう。異様だ。

 でもそういった日常が有るからこそ、今回の暗殺は即座に未遂に終わらせられたのだ。良い事なのか、悪い事なのかはさておきである。

 悔しそうな表情を刺客は浮かべるが、それも一瞬だ。諦めたと言うか、自分の失敗を認めたと言うか。

 だけどこの刺客のミスは団長の責任が大きい。それを教えてやらねばなるまい。


「なあ?何で団長は君にこの事を教えなかった?いや、教えるのを忘れたのか?・・・あー、自分は分かってる、でも他人は分かっていない、って言うのに気を持って行かなかったのか。恐らくはそれだな。君の失敗じゃ無くて、団長が悪いよ、コレは完全に。あ、でもそうしたら、もしかしたら俺が毒殺されていたかもしれない?あ、チョ、コレヤバいやつだった。良かった、団長が伝え忘れて。」


 相手のミスで自分の命が助かったと思うとちょっと複雑だが仕方があるまい。喜んでいいはずだ、この場合は。

 きっとこの刺客をそのまま中に入らせた場合にチェルとは「別人」だと俺が気付かなかった可能性もある。

 しかも出されたお茶と菓子を疑いも無く食べてそのままアッサリ御陀仏、なんて言ったら笑い話にもならない。


「!貴様いつから私の後ろに!?・・・気配も魔力も感じなかった・・・ふっ、私も鈍ったものだ。仕方が無い、か。」


 刺客はそう呟いてその手に短刀を持っていた。本当に小さい、小さい物で、掌の中に納まるサイズだ。だがその刃の部分は切れ味鋭そうにキラリと光っていた。そして刺客はソレを自分の喉に突き立てようとした。


 チェルは反撃を警戒して刺客との間合いを取り過ぎていてソレを止めるには間に合わない。いや、チェルは別にこれを止める気が無さそうに只眺めている。


 俺は刺客の背後にいたが、すぐに短刀に気付いた。けれども俺も距離を取っている。大体チェルが離れていた距離と同じ程度に。


 多分刺客は自らの命を絶つのにこの二人はソレを止めるのは間に合わないと判断したはずだ。


「だけどそれはやらせないけどさ。ねえ?君を解放するって言ったら信じるかい?」


 俺はこの刺客の手を優しく掴んでいる。短刀の切っ先は喉には到達していない。

 それもそうだ。俺はこの自殺を止めるために即座に加速状態に移行した。レベルMAXだ。

 そして刺客の側に寄って短刀が喉へと到達するのを止めるために手を「添える」位置に出して解除。解除した瞬間に力を入れてソレを掴み止めた。

 刺客はコレに驚いている。明らかに絶対に間に合わないと考えていたのに、こうして自殺を止められているのだ。どうしたって驚くに決まっている。自分の考えていた事と真逆の事が起こったのだから。


 チェルはと言うと別段この事に関しては驚いた様子は無い。寧ろ俺の言った言葉の方に「勝手に何言ってんだクソ殿下」と言ってくる。俺はコレに「言った通りだけど」とだけ返した。

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