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1198  口の悪いメイド

「・・・あ?なんだコイツ?殿下じゃねーじゃん?どう言う事だよ団長さんよ?とりあえずコイツ殺していい?」


 何でいきなりバレたのか?いや、目も髪も黒いからすぐバレるだろ、と思ったが、最初にこのメイドは俺をアレクサンドロスだと思って口を開いていた。恐らくは変装していると言った具合に判断したはずだ。

 でもこうして直ぐに見抜いた。俺が本物じゃ無いと。このすぐバレるのはどうした事なのだろうかと思う。そしてとりあえず殺していい?宣言である。このメイドは「ヤバイ」確定だ。


「あの、団長さん?俺、もしかしてこのメイドさんに殺されないといけない感じですか?」


 にこやかな顔なのにメイドの方から何故か冷たい空気が流れてきている様に、俺は今感じている。それがこれほどまでに怖い事だとは俺は今まで感じた事などない。

 コレに俺は何故だか咄嗟にこう思った。「コレが殺気と言うモノか」と。

 何故かその冷たさがジリジリと増していく。と思ったらすぐにソレは霧散した。団長が説明し始めたからだ。


「チェル、君も気付いたか。そうだ。彼は殿下では無い。だが、今から「殿下」だ。意味は分かってくれるな?」


「あいつ今回に限って見つからなかったんかい。ウザいわー。めっちゃウザい。でもさ、こいつが何者なのかハッキリしないじゃん?国の安全のためにやっちゃっておいた方が良いよ?それこそ代理なんて他にできる奴、幾らでも居るじゃん?魔法でチョチョイ、って。あいつにやらせればいい。何でこんな何処のどいつかも分からない、何企んでるかも知れない奴城に入れちゃったの団長さん。しかも何こいつ?着てる服スゲー訳分かんねえな?・・・団長さん?あー、なんかその顔見たら分かっちゃった。疲れてるね、団長さん。」


 俺の身元保証がはっきりしていないから、そして見るからに怪しい格好だからか。このチェルと言うメイドは安全のためにも俺をぶっ殺しておいた方が良いと。コワイ、その思考がコワイ。城から追い出す、とかじゃ無く、この場で殺す気マンマンだったこのメイドは先程は。

 その先ず「速攻で殺す、訳分かんないから殺す」みたいな思考がアブナイ。殺してから考える的な人物がこれほどまでにお近づきになりたくないものだとは思ってもみなかった。

 俺は自分の身の安全のためにもここで「表明」をしておかないといけない。いつこのチェルと言うメイドが気が変わって俺の命を狙ってくるか分かったモノでは無い。


「ワルモノジャナイヨー、アヤシクナイヨー、私、イウ事チャントキキマスヨー。只の、只の、イッパンジンデスヨー。」


「もう時間が無い。チェル、すまないが例の者を呼んできてくれ。それと支度も全て君の手で済ませて欲しい。」


「あーもう、クソだねぇ。団長さん、これ、デッカイ貸しだからね?全く面白く無い事になってきやがったよ。おい、お前、じゃなかった。殿下、私は用を先に済ませてくるから、風呂入ってその汚ねえ顔面だけでも隅々まで洗って綺麗にしとけ。身体は服で何とか誤魔化す。じゃ、行ってくる。」


 ピューっと風が吹いたかのように姿を消したチェル。俺はそれに驚いた。素早い身の熟しで隙が無かったのだ。しかも終始あのニコニコフンワリな笑顔のままでずっと喋っていた。あの笑顔は恐らくは「仮面」なのだろう。あの顔がもし真顔になる時は凄く本気でヤバイ状況の時になるのだろう。


「あのメイドさんって、いつも王子様にあんな態度と言葉遣いなんですか?あれ、許されてるんですか?つか・・・駄目だ、一杯一杯だ。何処からツッコミを入れればいいんだ・・・」


 俺は自分の今居る現状に頭を抱えた。これほどまでに超速に事態が俺を置いてけぼりで進んで行く事にストレスが酷い。酷過ぎて思考がマトモに働かない。


「アレが通常だ。まあ公式の場では「普通」にしてはいるんだが。それも殿下が許している。さて、すまない、もう時間がどんどんと過ぎている。夕方に差し掛かるころに招待客が集まり始める。それまでには準備をお願いします「殿下」。それと、この様な事に巻き込んで、本当にすまない。やり遂げてくれ、頼む。」


 そう言って団長は深く頭を下げてきた。ここまで俺に頼ってくるのはどうにも「藁にも縋る思い」と言うヤツなのだろう。

 ここまで来たら俺も中途半端になっていないで覚悟を固めないといけないだろう。


「で、リハーサル・・・一度流れを知っておきたいんだけど?」


「すみません殿下。そのお時間はもう既にありません。」


 時間が無い、いわゆるぶっつけ本番。一発勝負と言われた。もしかしたら挨拶と言う事で一言だけでも発しなければいけないかもしれない場面があるかもしれないのに?

 ダンスを求められたら断らずに踊らないといけないだろうに?俺はこんな社交ダンスなど一度たりとて踊った経験など無い。

 精々が学生時代にやったフォークダンスくらいだ。しかもチョー簡単なヤツ。しかも俺はそんなのすらも踊る気が無かったので、ちょっとだけやって後の全てをバックレていた過去を持つ。


 こうして俺は「ヤバし、死す」と思いつつも、このままボーっとしている訳にもいかないので、チェルに言われた通りに風呂に入る事にした。

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