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1193  この後の俺の運命や如何に?

 少しづつパーティ会場から貴族たちが消えて行く。それを最後まで見送る「アレクサンドロス」。

 パーティーの主役としてお客を最後まで見送るために残っている。

 最後の一人が居なくなるまで扉の前で見送りを終えるまで、彼に声を掛けてくる貴族は一人も居なかった。

 パーティー会場にはポツリと、最後の最後に残ったのは「アレクサンドロス」のみとなる。

 ミリアーネとガインネルは一番最初に早々とこの会場から出ていっている。続きは個人部屋で、と言った具合にイチャイチャしながら消えて行った。

 国王陛下も王族専用の出口からトイレンを伴い出ていっている。やっと一人になった「アレクサンドロス」はやっと自分の私室へと帰る事ができるようになる。


 こうしてパーティー会場の後片付けをし始めたメイドたちを後にしてやっと誰も居ない、心配しないで済む「アレクサンドロス」の私室へと戻って来て、やっと俺は大きく溜息と共に文句を吐いた。


「何で俺がこんな事に立ち会わねばならんのだ?・・・ぐぅあああぁぁぁぁあ!どうすりゃいいんだよ!?マジで!?」


 そう、俺は今、変装して「アレクサンドロス」となりこうして誕生パーティーに出席していたのだ。

 ホントにどうしてこうなった?である。よもや今回のパーティーで俺の正体を見抜いた者は居ないだろうとは思うのだが、それでも心配だ。


「バレて無いよな?バレていたらソレはそれで速攻逃げるけどさ。何で俺、無理矢理こんな事押し付けられたんだ?騎士団長め・・・恨むぞ・・・」


 ただいま本当の王子様は行方不明だ。騎士団がいくら探しても見つかっていない。俺はその間の「影武者」として雇われているのだ。そんな訳で流れとして当然ながらこの格好をさせられている。


「クソ王子もぶん殴ってやりたいけどさぁ?でも、なあ?」


 一部の騎士は王子の行動を知っているのだが、それは口止されている。あと知っているのはトイレンだけ。トイレンが挨拶に来た時にはヒヤヒヤしたが、バレてはいない様に思えた。


「あー、でも、もしかしたら今日ので違和感を得て疑っているかもしれないな。何を、と言った具合では無いだろうけど。普段とは違うと言った具合に捉えられていたかもなぁ?」


 俺はトイレンの挨拶に返事もせずにヘラヘラして喋ったりしなかった。いや、あの会場で一言だって喋っていないので、外見からは絶対にバレてはいないだろうと思う。

 喋っていたら直ぐにバレた。声だけは全然似ていないと騎士団長からのお墨付きだ。

 そう、俺はこの「顔」だけは本当に王子様と全く同じだと言われたのだ。だから今の俺は「かつら」を、金髪のかつらを被っている。

 眉毛も金にして、まつ毛すらも金、目の色は碧眼と言った具合である。今の俺は完全にこの世界の一般的な特徴をしていた。


「まさか王族専属で変身させる魔法を使える者が居るってサァ?驚きだよねぇ・・・」


 シミジミそう俺は呟く。まさか俺に変身の魔法が掛かるとは思っていなかった。俺は魔力を持たないのに、こうして「通用する」魔法と、そうで無い魔法が存在する。

 本当にご都合主義だと神に嫌味を言ってやりたい。俺は魔法を掛けられた瞬間に金髪碧眼になったのだ。その時一番驚いたのは俺だろう。掛かった?である。


 二番目に驚いたのが魔法を使用した王族専属の魔法使いだろうか。彼はいざと言う時に王族を逃がすための「囮」を作り出すための重要な役割を受けており、かなりの高給取りであるようで。

 その魔法の精度を上げるため日々の努力を怠らないらしい。この魔法使いの事は王族と重役しか知り得ない隠し事であるらしく、他の木っ端役人や身分のまだまだ低い貴族たちには到底知り得ない事案であると言われた。

 で、俺が金髪碧眼になった時に「たったこれだけの魔法で」と言って俺の「そっくり具合」に驚いていた。影武者を作り出すための魔法なので骨格や顔の作りなどの細かい所も変化させられる魔法だったのだろうと思う。だけどそれらをいじらずに金髪碧眼にしただけで、俺はこの国の第一王子とそっくりになってしまったという訳だ。髪の長さだけは大きく違ったので俺はかつらだけを装着する事になった。かなりの長髪でその髪は腰辺りまでとなっている。これを被ったら何処からどう見ても本人そのものと太鼓判を押されたほどだ。


 この事はトイレンには話されていない。国王陛下は知っている。騎士団長が自ら報告に行っており、今回の王子様の行方不明は水面下で続けられる事になった。


「いや、高いお金をもらえるのはいい、けど、いや、良くない。これほどまでにストレスマッハ!だとは思いもよらなかった・・・」


 こんなパーティーに出席しろなどといきなり言われてリハーサルも無くすぐ本番に突っ込まれた。

 そしていきなり何も聞かされていない俺が会場中央でまさかの「婚約破棄」されるという「何の冗談だ?」と言った流れである。死ねると言うものだ、主に精神が、である。

 俺は婚約破棄など突き付けられても「はあ、そうですか」としか言えない。そしてガインネルがアレクサンドロスを愚か者と断じた説明も「はあ、そうですね」としか。

 騎士団長は既に王子様の事など細かい所まで知っている。パーティー前にその点は説明を受けていた。何故そんな奇行を王子様がするのかも、だ。


「優秀な王子様です事・・・んあァァァァァあ!俺の癒し!癒しは!?・・・とほほ、もう今日は寝よう。明日の俺がきっと頑張って・・・くれそうも無い!」


 俺はフワフワで上等なベッドに盛大に飛び込んで、暴れ出したい気持ちを抑えるように強く目を瞑って眠りについた。

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― 新着の感想 ―
[一言] (๑╹ω╹๑ )もうすでに影武者しているとはガチで思いませんでした。これから影武者になるとかのフリだなとは思いましたけど。
[一言] すでにやっかいごとに巻き込まれていたでござるの巻。 マジコレどーするの?といいたくなる状況。
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