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1188  これから先もこんななのかな

 渡された卵を大事に懐にしまう婆さん。どうやら毎日少しづつ魔力を注いでいくつもりの様で、今日の所はこれ以上は魔力を卵に与えないようだ。


「で、俺の事はどうする?とりあえずはもうこの場に用は無いんだよな、俺。逃がさない、って言うのであればこっちも考えが有るけど?」


「ああ、そうだったねぇ。こいつの生まれる瞬間に立ち会う気は無いのかい?ああ、どうやらソレは諦める気みたいだねぇ。・・・私の力じゃ止められないんだろ、どうせ。ならすぐにでも行っちまったら良いさね。戻ればユレールがまたうるさいだろうよ。」


 ここから離れるにしても、せめて道はどっちに行けば見つけられるかをザックリと教えてくれと、俺は婆さんにお願いする。


「街はどっちだ?指をさしてくれるだけでいい。そっちに真っ直ぐ向かうから。取り合えず向かう方向だけでも無いと只々遭難するだけだしな。」


「短い間だったけどあんたの事は忘れられそうにも無いねぇ。ホレ、あっちさ。できればもう来ないでくれると助かるよ。」


 そう言われて俺は婆さんの指さす方へと歩き出す。するとユレールが「あいつ!」と声を荒げる。

 でも婆さんがすぐにユレールの方へと近づいて来るので婆さんと俺とを交互に見て迷っている。どうやら俺を追いかけて背中からグサリとやってやろうと思ったのだろう。

 だけど何も言わずに婆さんが戻って来るのでその行動に思い切って移れないらしい。一度俺に攻撃を受け止められている事も影響しているだろうけども。


(コレでここでの件は「お終い」かな?じゃあ次は・・・はぁ、何をやらされるのかねぇ?)


 結局は俺の安息の地もここでは無かったという事だ。そもそもそんなモノを俺が得られるのかが今となっては疑問になる。

 しかしその事を考え続けると気が滅入るので、今はこの森から抜ける事をひたすら考える。


「あ、水の補給をさせて貰ってからにすりゃ良かった。でも、うーん、ユレールがきっとうるさいだろうからコレで良かったのか?まだ水樽の残量は・・・余裕はありそうか。」


 こうしてまたしても森を彷徨う事にはなったが、目標ができた。街へと辿り着いて人心地つく事である。

 非常に小さい、小さい目標ではあるが、今は只々、フカフカベッドで深く、長く、眠ってしまいたいのである。


「あ、お金、無い。クッソ!面倒臭いなぁ。そもそも単純に言って、働き場所見つけられるかな?と言うか、そうだよ、白龍の鱗、売れるんじゃないか?・・・いや、駄目だな。絶対にダメだ。」


 街に着いてお金を得るのに白龍の鱗を一枚売ってしまおうかと思ったのだが、このパターンは絶対にやっちゃいけない。

 俺はそれを知っている。知っているのだ。きっともの凄い金額が付くに違いない。そしてソレに関連してナンヤカヤ起きて、それによって問題が降って湧いて来るのである。

 それに俺が無理矢理に巻き込まれ、またしても「ドッタンバッタン」になるに違いない。俺には分かるのだ。


「地味に力仕事を探して、地味に仕事をして、地味な給料を貰う、ただそれだけを目指そう。うん、無理だ、絶対に無理だ・・・」


 俺はそれも知っている。街に着いたらあれよあれよと「アチラ」から俺へと容赦無し、問答無用で厄介事が体当たりしてくる。それを俺は何度も経験している。


「うぅ・・・癒されたい、癒されたいよぅ・・・何で俺がこんな目に・・・」


 森の中を歩き続けて独り言が多くなってきた。危険な兆候だ。一刻も早くどうにかしないと爆発した時がコワイ。

 俺は一人ブツブツと「大丈夫だ」「街に着いたらベッドで寝る位の事はできるはずだ」「そう易々と初っ端から来るはず無い」などとアブナイ言葉を繰り返して自分を慰め誤魔化し続ける。まるで自身に催眠術でも掛けるように。

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