表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1186/1346

1186  丁度いいのか?

 少々長くはなったが「竜」の説明を婆さんに聞かせ終わった。すると婆さんがもの凄く顔をしかめさせる。


「とんでもない話を聞かせてくれるじゃないかまったく。で、その懐のヤツって言うのは、一体何なんだい?まあ何となくだがもう分かっているんだけどねぇ。」


 知らないなら、それで良かった。知らないで良いなら知りたくは無かった。婆さんはそんな感想をもったんだろう。大きな溜息を吐きだした。


「じゃあちょっと実物を見て貰おうかな。ほら、コレが「竜の卵」だよ。多分想像とか、物語?に出てくるようなのとはかけ離れているかもしれないけど。正真正銘、本物なんだよ、信じられ無いだろうけど。」


 俺は懐からそう言いながらそのブツを取り出して見せる。こんな掌に乗る小さく、白い、丸い物が「竜の卵」だと言われても普通は信じられ無いはずだ。だけど婆さんはこれを信じた。


「分かってるさ。もうあんたの言う事に一々嘘だと疑って見たりはしないよ。まあしかし、コレがねぇ。」


 婆さんはまじまじと俺の手の上の卵を見つめる。そして次には手を卵へとかざす。


「試してみたい事がある。やってみていいかい?何、ちょっと魔力を出して吸わせてみるだけさ。ほら。」


 婆さんの手の平から白い光がぼんやりと出る。するとその光が卵にスルスルと細い糸のようになって吸い込まれていった。


「おやまあ、腹でも空いてるのかねぇ?こんなにも反応早く魔力を吸っちまったよ。・・・お前さん、これをどうする気だい?孵化したら「竜」が出てくるんだろう?」


「ああ、そうだね。幼体ではあるだろうけど。連れ回す、って言うのは目立つだろうからしたくないんだよね。でもこいつがいつ出てくるかは分からないし、どこかに置いてけ堀にもしておきたくは無いんだよ。ほったらかしにしていても勝手に育つんだろうけどさ。」


 婆さんは何故そんな話を振ってきたのか読めない。ただの雑談、流れと言った感じなのかな?と捉えて見るが、そもそも俺は今フラグを起てたのでは?と思い至る。


「婆さん?まさかのまさか?・・・飼うつもりか?」


「そうさねぇ。説明を聞いて研究したくなったねぇ非常にさ。かなり久しぶりに「調べてみたい」と強く思ったのは確かだねぇ。」


 愉快そうにそう言って婆さんが笑う。もうここまで来るとピンときた。そもそもこの湖は婆さんの結界に閉ざされていた。

 長年そうした状態だったこの湖はもしかしたら魔力溜まりになっているのではないか?と。そして湖の水を婆さんが自由自在に操れると言う事はずっと婆さんはこの湖に自身の魔力を溶け込ませていたのでは?ソレは今でも行われているのでは?

 そう考えるとここはこの「竜」を育てるのにベストな場所だ。となるとどうにも。


「都合が良過ぎる・・・これも黒い神様のお導きってか?まあなんにせよ俺には負担にならないから良いか?」


「おや?なんか言ったかい?で、どうなんだい?」


 俺のこぼした呟きはどうやら小声過ぎて聞こえなかったようだ。「そんな事より」と言った具合に俺へと真剣な眼差しを向けてくる婆さん。

 どうなんだいと口にする婆さんはもう竜の観察をする気マンマンに既になっていた。俺はこれに「おい、俺の事はもうどうでもいいのか?」と口に出しそうになった。それをグッと堪える。

 この卵が俺の手元から離れたらこの場所からはもう「オサラバ」できるだろう。これまでに経験してきた出来事に照らし合わせるとそう感じる。


「ここで孵化させられない?俺もこの卵からどんな形の「竜」が産まれるか見てみたいんだよ。」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ