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1179  安心を得たいがために

「こ・・・コイツ!皆!全員でかかるんだ!怪しい動きをする前に一息にやってしまうんだ!」


 ユレールが怒ってそう言い放つのだが、男衆は一人も動かない。ジッと俺を睨んで警戒を続けるだけであった。コレにまたしてもユレールが叫ぶ。


「何してるんだよ!皆動けってば!もう!やらないってんならアタシがやってやる!」


 ユレールは一人俺へと突っ込んで来ようとしたが、これを婆さんが止める。


「お止し。ユレール、言っただろう?私の言う事を聞かないならお前だけ戻すよ?ここに来る前にした約束をもう忘れたのかい?お前は黙って居な。」


 婆さんのこの言葉でユレールがグッと堪えた顔で立ち止まる。俺はこのまま話し合いができればいいな?などと思っていると。


「私がやる。お前たちは下がっていなさい。」


 どうやら話し合いはまだまだできそうにも無い。そうして婆さんが魔法を唱えたかと思うと、俺は水の膜に閉じ込められた。

 球状でいてその膜の厚みは一ミリくらいだろうか。指で軽く触ってみると硬質な触り心地だった。どうやら柔らかそうに見えてその実、堅牢であるらしい。


「なあ婆さん。俺は話し合いがしたいんだが?もうちょっとだけ詳しい説明をさせちゃ貰えないかね?これじゃあオチオチ喋れもしないんだが?」


 閉じ込められた、と言う点で言うとこの中の空気が無くなると窒息死してしまう。まあ触ってみた所で直感なのだが「普通」の状態でも全力で殴れば壊す事は出来そうだな、と。

「力」を使えば簡単に壊せるとも思えたが、今の俺の懐には卵がある。なのでコレにどのような影響が出るかが分かったものでは無いのでそれを控えようと思っているのだ。

 卵が魔法カバンに入るか一度試してみたのだが、入れる事はできなかった。なので少し慎重にこの場は経過を見なければいけないなと思っている。

 卵が万が一にも割れたら嫌だし、まあそう簡単に割れる代物では無いだろうとも思うのだが。慎重に越した事は無いだろうと。


「あんたの話は信じられるよ。でもね。こいつらが納得しないんだよ。あんたはここに来たばかりだからね。こいつらは信じはしないさ。私が良くてもダメなんだよ。一通り満足するまでこいつらには湖の周囲を回らせるつもりだよ。」


 どうやらこちらの声は向こうに届いているらしい。そして婆さんの声もちゃんと聞こえた。この膜で声が通じないかな?とも考えたのでちょっとだけホッとする。


「じゃあ婆さんはリザードマンたちを殺すとか言った考えは持っていないって事で良いか?じゃあ殺すだ全滅させるだ、なんて言っているのはこの湖に住んでる奴らでどれくらいの割合いるんだ?」


 この質問にも婆さんが答えてくれる。ユレールは婆さんに止められているから口を挟んでこないようだ。俺が居ない間にこってりと絞られたのかもしれない。


「そうさね。三割強、と言った所かい。そんな事を聞いてどうするんだい?」


「じゃあソレ、婆さんが抑え込んでくれよ。もうリザードマンは湖には来ないからさ。あいつ等は問題が解決して住処に戻って行ったからもうここには来ないよ。ずっと長い事婆さんたちはリザードマンと接触は無かったんだろ今まで。じゃあこれからもずっと無いから。それで良いだろ?」


「そうだね。私はそれでいいと思うんだけどね。ここに居る奴らはそうじゃ無いのさ。馬鹿どもなのさ。知ってしまったからね。蜥蜴人が湖まで来れる距離に居ると。」


「いやいや、生活圏が違うから、彼らだって問題が起きていなけりゃこうして接触する事なんて起きなかったくらいに距離は離れてる。生きるために必死になってこの近くまで逃げて来ただけで、もう問題も解決して戻って行ったんだ。もう無理にこっちに来て関わるような事をして来ないから安心してくれないか?」


「駄目だねぇ。こいつらは自分の不安を払拭したいが為だけに蜥蜴人たちに殴り込みをしようって馬鹿どもだから。」


 婆さんのこの言葉で男衆の顔が苦いモノに代わった。どうやら痛い所を突かれているらしい。


「とにかくこいつらは一度痛い目でも見ないと分からない奴らなのさ。例え蜥蜴人たちがもう居なくなって安心だとしてもね。だから、あんたの説得は聞き入れたりしないんだよ。すまないね。」


 婆さんは俺の強さを知っているし、どうやら信用もしてくれている。だから俺の話を聞いてリザードマンの事はもう解決した、と受け入れてくれている。

 だがこの場に居るこの男衆と、それとユレールのガス抜きのためにもある程度は暴れさせないといけないとも言っているのだ。

 力で抑え込んだり、こうして時には不満やら不安の解消をさせてやるなどのコントロールをしなくちゃいけない婆さんの立場に少しだけ同情する。でも、こっちとしてもリザードマンへのちょっかいを出すという点には目を瞑れない。


「一難去ってまた一難って、それは流石に可哀そうってもんだろ?俺はリザードマンたちの味方に付くけど、婆さん、それで良いか?」


 俺はここで敵対宣言をしておく事にした。

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