1176 帰り道で
卵を落として割ってしまわない様にと思って帰りは少々ゆっくり目に戻った。セッドには三つの内どのタイプかと思って道中に聞いてみたが。
『三つ全てが混ざっている、と言えばいいか。偉大なる存在だと感じはするが、知りたくは無かったと言う微妙な部分もある。そして、まあ少しだけ、その卵は直ぐに壊してしまうのがいいのでは、とも思う。』
「あー、ごめんな。そう言うの考えずに教えちゃったからなぁ。考え無しだった。スマン。じゃあ他の奴らにこの話はしない方が良いか?」
『いや、しない訳にはいくまい。同じ存在がこの世にはいるのだろう?だったらそれを知っているのと、知らないのとでは助かる可能性も大きく変動する。この話は直ぐにしておくのがいいだろう。先ずは長に説明をしなければならん。』
こうして話し合いをしつつも森の中を物色しながら歩く。何を探していたかと言うのは食料だ。
俺の魔法カバンの中にもうイカは無い。なので森の恵みを得つつゆっくりと歩いている。他の食料も多少は残ってはいたが、心許無い。
なので野草や山菜、果実などを見かけるとそれらを回収して魔法カバンに詰め込んで行く。水樽はまだまだ残りはあるが、湖に一旦戻って補給をしないといけないだろう。
この日は途中で身体の大きさが70cm程もある凶悪な顔をしたウサギ?を仕留めた。その額には二本の立派な角があり、不用意に近づいて体当たりでもされればそれで腹に大きな風穴を開けられてしまうだろう程の鋭利なモノだった。
『こいつを一瞬で仕留めてしまうとは・・・しかも何をしたのかサッパリ分からなかった。コレはもう何と言えばいいのか・・・』
俺はセッドの目の前で直ぐに「力」を使ったのだ。この動物性たんぱく質を逃がしてはいけないと思って見つけて直ぐに俺は「力」を発動して即座に仕留めに行った。
今はリザードマンたちの元までの帰還中だったので狩りのための「追跡」をしていない。なのでこの遭遇は偶然なのだ。
この偶然を逃しては次にいつこうした獲物を見つけられるかは運である。しかも相当な低い運だ。この広い森の中、見つけようと思って動いても早々にこの様な大物は見つけるのは困難であるし、こうして見つけるにしたって数時間はこの森の中を彷徨う事になる。
そしてセッドは俺がどの様にしてこの獲物を狩ったのかが分からない事で戦慄している。
『全員で攻撃しても敵わないと感じるはずだな、これほどの力の差があるとは。ラールが殺されなくてよかった。』
どうやらあの決闘の話の事らしい。最初から俺は彼らに危害を加えるつもりは無かったのだが。それでもセッドからすると攻撃をしたラールが俺の怒りを買って殺されなくて良かったと言いたいようで。
「えー?いやいや、最初から俺は言ったじゃん?話し合いがしたいって。それと何か困りごとが有れば協力するって言ってたよね?そんな事を言っておいてむやみやたらと殺そうとしないってば。」
今回は特にそうだ。ユレールのあの短気っぷりに俺は逆に冷えに冷えた。婆さんからの魔法もそうで、事情とそれから湖の面子のアレコレを考えての攻撃だったので、しょうがない事だと思って対応したのであって。俺が積極的に「やっちまおう」と思ってけしかけた訳じゃ無い。
ユレールの態度を見ていなかったらもうちょっと婆さんに「直接的」な攻撃をしていたかもしれないと考えるとかなりユレールから受けた影響は底が深い。
もしかしたら「力」を使って婆さんの肩を軽く突いていたかもしれないな、などと思うとゾッとする。あんな年寄りを黙らせるのに過剰な力の行使になる所だった。そうなれば俺は「やっちまった」と後悔をしていた事だろう。
「俺は戦闘狂じゃ無いけどね。あーあ、湖に戻るのは水の確保のためとは言え、ちょっと行きたく無いな?」
そうぼやいた辺りで森の中は暗くなり始めたのでそこで野営の準備となった。




