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1175  まんまと踊らされているのか?

 ガサゴソと草むらをかき分け、木々の隙間を縫ってセッドが現れる。

 そしてジッとクレーターの底を見つめて何か言いたげになりつつ、俺へと向かって頭を下げてきた。


『感謝してもしきれない。またコレで以前の生活に戻れる。すぐに戻ってこの事を報せに行きたいのだが、いいだろうか?』


「あー、ちょっと待ってくれないか?色々と言いたい事も聞きたい事もあるだろうから。セッドに先にそこら辺を教えておいた方が良いだろうし。」


 俺は「白龍」、あの存在が世界にとってどういったモノであるのかザックリと教えた。

 その時のセッドの驚き様と言ったらなかった。俺でも「あ、分かる」と直ぐに判別できる程の表情の変化だったから。

 そもそもこの「竜」の事は教えちゃいけない事でも無い。なのでここでリザードマンたちに今後この「白龍」と同じ存在が来たら対処を間違えない様に、との思いで教えた。

 ついでに言うと、この世界に生きる知恵持つ者たちはこの「竜」と言った存在を知ら無さ過ぎると思って、ちょっとでもこういった事はこの世界の者たちが認識しておかないとイカンだろうと思っての事だ。


『その様な存在だったとは・・・むむ、これからはこの事は皆にも教えて代々引き継いでいくのが良いか。おっと、皆の所に向かいたいのだが・・・アレはどうするつもりでいる?』


 一通り話が終わった後にセッドがクレーターの底へと視線を向けた。そこには「白龍」が残していった卵が。


「なんとなくだけど、君らの所に残しておくのはマズいと思っているから俺が持っておくよ。ちなみに聞くけど、ここであの卵、管理できると思う?」


 俺はセッドに問いかける。コレにはセッドは難しい顔を浮かべた。


『駄目だろうな。今先程教わった話を皆に伝えればおそらくだが三つに分かれると思う。一つは崇め奉る者、一つは「畏れ」て無かった事に、見なかった事にしようとする者。そして最後は、恨みで直ぐに卵を「消そう」とする者だな。』


 将来別の世界の神様になる候補である。崇め奉って守り神にしようとする考えも出てくるだろう。

 それとは違って、もう一つは強大な力を前にして恐れてその存在を意図的に無視しようとする、と。知らなければどうと言う事は無い、と言った所か。そんな大きな物を自分たちの懐に収めておきたく無い、と言った感じだろう。

 三つめはこうして追い出された事に因っての恨み辛みで、この卵に対して攻撃性を示すと言う方向か。こんな将来「危険」なモノを放っておくわけにはいかない、と。


「やっぱり「勘」は当たったなぁ。まあ、そんな事を聞いちゃうと増々俺が持っておかないといけない感じジャン?あーあ、これもアレか?黒い神様の思惑の内なのかね?真実はどうだか知らんけど、まんまと踊ってる様な、踊らされてる様な?そんな感じだなぁ。しかも、嫌な感じじゃ無いのがまた嫌だ。コワイコワイ。」


 こうして俺は懐に卵を入れて保護し、その後はリザードマンたちの居る場所へ戻る事になった。

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