1171 話し合いに応じてくれるらしい
近づけば近づくほどに驚きの白さ、とでも言えばいいのか。鱗が輝いている。キラキラと輝いて美しい、を通り越して目に眩しい。
で、俺から声を掛けようと思っていたら先に相手側から質問をされてしまった。
「貴様は我の邪魔をする者か?そうであれば面倒だが動くしかない。即刻排除する。」
目を瞑ったままクレーターの中にとぐろを巻いて静かに呼吸をしている「白龍」。どうやら寝ていると言う訳では無いらしい。しかしその声は俺の脳内に響く。
「あー、ちょっと待って。俺は敵じゃ無いよ。あんたの邪魔もしない。けれども話はしたい。構わないかな?」
この返事にどうやら疑いは持たないでくれたようで。
「どんな話をしたい?我の邪魔をせぬと言うのなら多少の時間は設けよう。それにしても我を前にしても怯えぬとは相当な度胸の持ち主よな。面白いぞ。」
「白龍」はまだ目を瞑ったままで一切の動きは無い。だが俺の脳内へと語りかけるその声はどうにも機嫌が悪いと言った感じでは無い。なので思い切って聞いてみる。
「後どれくらいで魔力が溜まりそうだ?神様の所に行くのと自分の分身を生み出すのにまだ年月はかかりそうか?」
この質問に「白龍」の目が片方だけ開く。そして俺をその視界に入れて警戒心を露わにする。
「貴様、何者だ?どうやって我を知った?返答次第では消す。」
いきなり脅された。さっきまで別段不機嫌では無かったはずなのに一瞬だ。俺はこの「白龍」をブッ倒しに来た訳では無いので冷静になるように言う。
「落ち着いてくれよ。最初に言ったように俺にあんたへの敵意は無い。襲ってくると言うなら俺も反撃するけど、そこから動きたくは無いんだろ?知ってるよ。魔力を吸収してるんだよな?」
「何処まで知っている?貴様が我の邪魔をしに来たのではないと言うなら説明をせよ。」
俺が何処まで知っているのかを先ずは確かめるために「白龍」はどうやら会話を続けてくれる気になったらしい。
だけど警戒心は少しだけ上がったのか、もう片方の目も開いて俺を見据えてきていた。
「じゃあ、ちょっと長いけど話すよ。そうだなぁ。バハムと会った事を話せばいいかな?」
俺は何故「竜」の事を知っているのかを語る。先にこの「白龍」からの俺への疑いを解消するために。
まあ余計に俺の事を信じちゃ貰えないと言う展開になる可能性も捨てきれなかったが。それでも話しておかないと本題に入るのに遅くなりそうと言うのもあった。
「と言う訳で。俺はまあまあ深い所までは事情を知っているんだよ。で、ここからが本題なんだけどさ。ここ、リザードマンたちが住んでいた場所なんだよねぇ。で、あんたがいきなりここに訪れたもんだから、彼ら、ビビッて逃げちゃった訳よ。で、そもそも、あんたの邪魔さえしなければぶっちゃけ彼ら、ここに戻って来ても大丈夫かね?」
そうなのだ。彼らリザードマンにこの「竜」の事情を話し説明すれば、この「白龍」の邪魔はしないはずだ。そもそも敵わないと早々に判断して逃げ出しているから、それこそ戻って来たからって手を出そうとなんてこれっぽっちも思わないはずだから。
でもどうにも話は良い方には行かなかった。
「竜と友となったとは、俄かには信じられん話だな。だが、そこはいいとしよう。しかしこの場に戻って来られるのは困る。だからこそ初めに脅してあの者らを散らして近づかないようにさせたのだからな。」
どうやら俺の話は信じられ無くとも納得はしてくれたらしい。けれどもリザードマンがここに戻って来る事はどうやら駄目であるらしかった。




