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1157  俺が「参った」

 そこら中に水飛沫だ。まあ叩いた方向は湖方面へと叩いたので陸に移動している俺の方には飛んできていないが。

 で、やはり婆さんはまたしてもコレに驚く。俺が「動いていない」のに勝手に水球が破裂したからだ。

 当然婆さんの魔法が不発した訳では無いから、これに婆さんは首を捻る事になる。「何故だ」と。

 そして自らの失敗が原因では無いと分かっているから、じゃあ誰がやったかと言うと、俺しかいない。

 でも、俺は婆さんから見ると「動いていない」としか見えていない。だから余計に混乱をしている。


「何をしたんだい?これじゃあ私が何をしようが全部こうなっちまうのかねぇ?でもね、まだ、はいそうですか、と言えないんだよ。」


 婆さんはまだ納得していなかった。実力差があると感じていても俺に攻撃をこのまま仕掛け続けるつもりだ。

 もうこうなると婆さんの魔力が空になるまで迎撃し続けるしかない様に思う。


「あーあ、徹底的にやるのは良いけどさ。婆さん、後どれくらいやれば「参った」って言ってくれる?」


「あのねえ、私が「参った」と言ったとしても、引き下がりはしないよ?あんたはこの湖に不和を起こす。ここで消えてもらわにゃ安心できないんだよ。だから、いくらでもやってやるさね。」


 今度は湖から鋭く先が尖った水の「槍」が飛んでくる。でも、それは別にノーモーションで飛んできた訳では無く、ちゃんと婆さんの詠唱が終わった後に湖から浮かび上がってきてこちらに飛んできた。


(事前にこれだけの手順があると「テレフォンパンチ」なんだよなぁ)


 俺の目の前でその「水の槍」は静止している。もちろん俺が加速状態に入っているからだ。


 婆さんの「我が求めに応え敵を穿て」という詠唱、そして槍の形の水が湖から浮かび上がってから飛んでくる。

 これでは「攻撃します」と一々言ってから動いている様なものだ。そんな事前の「お知らせ」なんてしてからこっちに攻撃が飛んでくるなんて、こちらの「準備」が整ってしまう。


 俺はこの目の前の空中で静止している「水の槍」を思いっきり引っ叩く。


「で、婆さん。もしかしてだけどさ?魔力、全然使っていないんじゃないもしかして?湖に何か仕掛けがあるの?そうなると婆さんの魔力切れ、ってのを狙ってるんだけど、それ、もしかして無理?」


 迎撃した水の槍が目の前で水が弾けてから俺は婆さんに質問したのだが。これの答えをあんまり聞きたくない。聞きたくないと思ってもどうしても確かめなくてはいけなかった。このまま俺にとって不毛な事をこれ以上続けないために。


「これもダメかい・・・ああ、そうさね。種は明かせないけど、この湖全ての水が私の自由自在だよ。魔力も全く使わないで、ね。どうだい?「参った」かい?」


 苦い顔して婆さんが笑う。そして俺へと冗談も付けて。

 確かに俺は「参った」。どうやっても婆さんを降参させる事ができなさそうだったからだ。


「あー、婆さん。確かに「参った」よ。だから、俺がこの場は引く。じゃあな。」


 俺は婆さんに手を振って背を向ける。


「どう言う事だい?これ!説明して行かないか。何でそっちへ行くんだい!あんたは何を考えてんのさ!」


 そう叫んで婆さんは俺を引き留めようとするが、船からは下りない。


「リザードマンの事情をしっかり聞き出してくる。んでもって場合に因っちゃ婆さんの敵になるかもな。」

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