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1154  水で出来ている

「我が血と結びし水よ。強固なる塊となって顕現せよ。」


 静かにそう婆さんが呪文を唱えた。で、出てきたのは何か?ソレは水で出来た巨人だった。

 ウォーターゴーレム、と言ったら良いだろうか?身の丈2m50は在ろうかと言ったそのゴーレムが婆さんの乗る船の背後に現れた。

 恐らくはこのゴーレムは湖の水で出来ているのだろう。となるときっと婆さんの魔法はこの湖の水全てを使用できるに違いない。

 そして船もこいつが水の中で動かしていたのだ。漕ぎ手が居なくとも自由自在に進む船の答えがコレだったと。


(うわぁ・・・なんだろうか? 霊界探偵の漫画のアレみたいだな?シーマン?だったっけ?名前は御●洗だったよな?よく覚えてんな、俺)


 あのウォーターゴーレムの中に閉じ込められたりするのだろうか?そうしたら桑◯の●元刀で斬り裂いて領域を破らないと出てこれないとか?


 などと言ったくだらない事を今俺は考えていた。そう、こんなくだらない事を考えられるのは既に「力」を発動したからだ。

 そして今の状況と全く関係無い話を思い出す時は、既に俺のストレスはMAXに近い状態である事は言うまでもない。

 リザードマンの衝撃と、そしてこの森に転移してきた事への不満、そしてこの湖で出会った婆さんとユレールとのやり取り。

 もう俺の心の耐久値はゼロになる目前であった。爆発しかけているそんな時にこうして加速状態に入ってしまったがゆえに、俺は即座に昔読んだ漫画の内容を思い出したのだ。

 ストレスが多大に掛かっている状態で「力」を発動するとすぐに俺は現実逃避に入り込んでしまう。

 そしてその後の行動は大抵ぶっ飛んだ事をしでかすのだ。俺はゆっくりと水でできたゴーレムへと近づく。


(加速状態の時には水の上を歩く事ができる、じゃあこの水のゴーレムはどうなる?)


 その巨体の脚の部分へと触れてみる。するとまるで表面はツルっとした粘土でも触っているかのような感触だ。手を押し付けてみるが、めり込んで行ったりしない。


(不思議な感触だなぁ。あ、忘れてた。今加速状態だわ。そんな状態で触っちゃったらこいつの脚、どうなる?)


 解除した時に今まで水面を歩いた跡は水柱を上げた。じゃあこの水ゴーレムは?普通に湖の水面と同じに吹き飛ぶのか?

 あるいは耐久力が有ってそのままの形を保てるのか?もしくは体勢を崩したりするのか?

 一応はちょっと触れてみただけではあったので、そこまでの威力は伝達しないはずだと思いたいのだが、どう言う結果になるかは予想ができない。


(もっと考えて慎重に動くべきなのに、迂闊にも珍しさに惹かれて思わず触っちゃったよ・・・)


 ゴーレムと言うとファンタジーでは定番だ。けれども土で出来た物、鉄が使われていたりする物、もしくは木が材料などもあったりするだろうが、水はそんなにメジャーでは無いと思う。

 マイナーとも言う気は無いが、それでもこうして自分の目の前に形として現れると、もの凄く触ってみたくなったのだ。

 でも、ここで俺の悪戯心が沸き上がる。どうせ婆さんに「参った」と言わせなければ、この場は引いては貰えないのだ。

 徹底的にやっちゃってしまおう、そう思ってしまったのである。思ってしまえばもう止められない。

 これまでに急激で連続のストレスにさらされ続けた俺はこの時に爆発してしまった。もう後戻りできない。気が済むまで止まらない。

 俺は水ゴーレムのその表面をペチペチと満遍なく引っ叩き続けた。

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