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1147  出向く前に

「ユレール、あんたの意見なんて聞いちゃいないんだよ。口を閉じな。自分で出来ないと言うのであれば魔法で塞いでやるよ。ホレ。」


 婆さんは今度はユレールの口を覆う位の水玉を作り出した。そしてそれをピタッとユレールの口にくっつける。

 モガモガと何かを言いたくて藻掻いているユレールだが、水玉が口を塞いでいるので何を一体言っているか分からない。


「さて、馬鹿でうるさい小娘はコレで良いとしてだ。あんたらはここで待機してな。私が一人で行ってくる。今日中に戻って来なかった場合は決め事の通りに動くんだよ、いいね?」


 さて婆さんはそう言って船に乗ろうとするが、俺はそれを止める。


「婆さん、ちょっと待ってくれ。俺も行く。後それと、聞きたい事があるんだけど。婆さん、この湖にやって来たって言う侵入者は、殺すつもりなのか?」


「おや?ユレールがあんたを囮に、なんて言ったけど、気にしないでいいんだよ?ここで待っていればいいさ。あんたは私の客人だからねぇ。それと、そいつらがしつこい様なら、魔法で追っ払うつもりさ。もちろん脅しも兼ねるから殺す気で放つつもりさ。それがどうしたのかい?」


「そもそも、そいつらは、敵なのか?そうじゃない場合はむやみな殺生になるんじゃないのか?」


「何を言いたいのかは分かったよ。確かにね。分からんでも無いさ、あんたの言っている事はねえ。でも、そういう「甘え」はここでは自分たちの首を絞めかねないのさ。そもそも言っただろう?ここに居る者たちは少なからず何かしらの事情があってここに辿り着いたと。なら侵入者の奴らがどの様な奴らなのかは関係無いのさ。私の判断で奴らは追っ払う。それだけさ。」


「殺さないで良いならその方が良いって事でもあるんだよな?なら最初は話し合いから始めればいいじゃないか。婆さんのその言い方だと殺さなくてもいいだろう、っていう結論にさえなればむやみに殺すなんてマネしなくて済むじゃないか。」


 ユレールが侵入者へ突撃するだの、殺すだの、殲滅するだのわめいた事で、逆に俺の心が冷静になっている。

 そう、そのやってきた者たちと話し合いをすればいいじゃないか、と。いきなり殺し合うなんて殺伐とした空気に晒されるのは勘弁だから。だってここに来る前にも邪龍とやり合っていたばかりなのだ。

 ここに飛ばされてきて、いきなりこんなのはうんざりだ。殺す殺される、なんてのを人はそもそも好きでやるもんじゃない。

 しなくても良いならそれで良いじゃないか、と他人事だからこそ、今そう思ってしまっている。

 まだここにきて間もないのでこの湖に住む者たちの肩を持つと言った感じでも無いので、やってきた侵入者がどう言った事情を抱えているのかと言う事に対して気が行ったのだ。


「呆れたねえ。確かに殺しは私だってできる事ならやりたくないけどね。でもこればっかりはしょうがないだろう?さあ、もう行くよ。付いて来るなら船に乗りな。」


 何だろうか?俺は婆さんとの会話に違和感を感じる。何かズレている。多分噛み合ってない。

 だけどどこら辺が噛み合って無いかが分からない。分からないままではあるが、そのまま船に乗り込んで婆さんと一緒にその侵入者と言われた者たちの所に向かった。

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