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107  到着

 爽やかな風が吹く道を歩く。帝国の壁が近づけば近づくほどにその巨大さを主張してくる。

 あまりの外壁の長さに万里の長城を思い出させる。道は入り口と見られる門の方に繋がっているがその門は閉じられていた。

 代わりにと言っては何だが、見張り役なのか門兵と思わしき人が三人地べたに座って駄弁っていた。

 門が開いていない以上は帝国に入れない。仕方が無いのでその門兵に話しかける。


「すいません、こちらの門は何故閉まっているのですか?開けてもらう事、通行はできないんですか?」


「おい、お前さんたち、まさか森の道を通ってここまで来たのか?」


 少し驚いたように質問を質問で返された。それに答えないと話が進まなさそうなので素直に頷く。


「たまげたね。こっちの道は開通させたはいいが、魔獣の出没が多くて利用が皆無だったんだ。グルードスがいねえとヤバいんだぜ?」


 グルードスと聞いて引っ掛かる。森の中で二匹心当たりがあった。


「もしかして騎乗した人と、馬車を引いた旅人がこっち来ませんでした?」


 それは、あっと言う間に俺たちを追い抜いて行ったグルードス、それと途中で助けたあのタグデスの事だ。


「おう、そういやつい昨日馬車が来てたな。その前にも随分と慌てた様子の奴が一人来てた。」


 道の途中で残骸も無かったので無事だとは分かっていたが、タグデスは帝国にちゃんと到着できたようだ。これで途中で魔獣に襲われていたとかだと後味が悪い。何事も無くて良かった。


「で、先ほどのこちらの質問何ですけど?」


「おお、すまねえな。この門は通行はできねえんだ。悪いな。壁沿いに向こうへ行けば開いてるのがある。まあだいぶ歩くんだが。そっちに行ってくれ。」


 指を地平線に向けるが視界内にその開いている門とやらが見えない。歩くのがちょっと億劫になってしまったので聞いてみる。


「こちらのは何故開けられないんですか?・・・あ、魔獣の件で?」


「おう、森からはここまでだいぶ余裕はあるけどな、万が一にも魔獣が入り込んじゃならねえってんで、こちらは常時閉まってるのさ。言っちゃなんだが、俺たちゃ左遷組でな、こんな詰まんねえ見張り仕事を毎日こなしてんのよ。」


 開いていないのは魔獣がらみなので納得した。それと、聞いてもいない個人事情を聞かされてこの場を即去りたくなったので、話をこれ以上長引かせない様にバッサリ会話を切る。


「そうですか。ではもう行きますね。ではお疲れ様です。」


「おう、気いつけてな。おっと、言い忘れてた。帝国へようこそ。」


 門兵はそのように入国者に挨拶をするみたいで、そう言ってきたその門兵たちは既にこちらに興味を無くしたのかすぐに仲間たちと駄弁り始める。


 かなり長い距離を歩いてやっと開いた門が見えてきた。そこには様々な人が長い列を作って順番に検問を受けていた。徐々にそれは短くなっていく。


「よし、並ぼうか。それにしてもアレ凄い大きさだなぁ。」


 門が近くなるにつれて帝国の中の街並みが良く見えてくるのだが、遥か彼方の霞む遠くに城が目に入るのだ。

 こんな所からでもその存在を圧倒的に主張する建造物。それがどれだけの規模なのかここからでは想像すらつかない。いや想像がつく方がおかしい。

 それを観光できたらいい思い出になるだろうな、と思いながら静かに自分たちの番を待つのだった。

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