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1037  姫様は楽しいようです

 コレは殺し合いじゃ無く、俺の力を見るためのモノだったはずだ。

 ここまで積極的に人体急所を狙ってくるのは相当な殺意からとしかあり得ないだろう。


(最初から俺の事をこのタンゾウって言うのは殺しにきていたんだなぁ。そうだよなぁ?明らかに俺だけが正体不明で怪し過ぎるもんな)


 安全最優先。お姫様の命大事。このタンゾウは先ず一番最初にソコを取ったのだ。自分の役割として。

 ソウシンに関してはおそらくはタンゾウも納得したのだろう。ソウシンの口にした昔の思い出とやらをタンゾウも知っていたに違いない。

 で、そうなれば俺と言う訳だ残ったのは。不確定要素。姫様の無事を確保するのに俺を真っ先に排除。

 過激である。大人しくしていたと思えばソレはカモフラージュで、かなり極度な考えの持ち主だ。


(俺は姫様の命なんて眼中に無い。って知って貰えばいいのかね?)


 俺は迫る匕首の先を集中して見つめる。するとピタリと俺の鳩尾の1cm手前で刃が止まる。

 加速状態のレベルを最大まで引き上げたからである。そして俺はゆっくりと姫様の後ろへと回り込む。

 姫様の左右にはツバキとソウシンが立っている。タンゾウの後ろ側には三人の護衛がこの立会を見守っているのだが。

 加速を解けばその護衛三人が一斉に構える。今にも刀を抜き放って斬りかかってきそうな迫力も出して。


「貴様・・・どうやって姫様の後ろに!」


 タンゾウも直ぐに体勢を立て直して俺へと鋭い視線を飛ばしてきた。護衛とタンゾウのこの反応の速さ、対応は超一級品だと言えるだろう。

 しかしツバキは違う。「え?」と言って振り返れば驚いた顔になって呆然。

 ソウシンはと言えばタンゾウの言葉でハッとして大きく振り向いて驚きの表情で刀に手を掛けて固まった。


「・・・ん?おおう!何じゃ!凄いでは無いか!あそこからワラワの背に回って来るじゃと?どう言う仕掛けなんじゃ!?タンゾウがあんな顔をしたのを初めて見たぞ!あっはっはっはっ!良い良い!笑わせてもらったのじゃ!お主の力は見せてもらった。ワラワを最初から狙っていたなら既に今ワラワの命は無かったのぅ。ワラワを父上を脅す道具として攫おうとする気だったら、この場の誰もがお主の動きを捉える事ができておらん。この場の者たち全員が始末されていても可笑しくは無い。タンゾウ、コレで納得がいったか?」


 この姫様の言葉で匕首をしまうタンゾウ。他の護衛の者たちも警戒態勢を解いた。どうやら最低限の信用とやらは持って貰えたようだ。

 ソウシンは「これほどの・・・」と呟いてジッと俺を見つめてくる。ツバキと言えば「コレがサイトウ殿の本気・・・」とブツブツとこぼしている。


「では参ろうかのう。ここからじゃと、どの道から行けばトウノスケに見つからずに屋敷に着く?」


 姫様はそう言ってタンゾウに道案内をしろと命じている。

 ここまで来るのにあっちこっち迷路かの様な小道を何度も曲がって来た。

 なのでここからその屋敷に行くにしてもいくつかのルートがあったりするのだろう。

 取り合えず今俺へと「妖術使いなのか?」と言った質問が来ていないのは良い事だ。

 後で聞かれるかもしれないが、今はさっさと屋敷に行ってゆっくりと話ができる状況にするのが最も良い。

 ここでこれ以上の長話もできないだろうし、このモノノフの権力者の懐に入れたならば、トウノスケとやらにちょっかいを出される心配も無くゆっくりできる。

 姫様も余り長時間屋敷の外に出ている事もよろしくは無いだろう。こうしてここまで姫様が直接来る事すら危険だったのだから本当なら。

 本来だったら使いの者を代わりに派遣してツバキとの面会、事情の説明、話し合いとするべきだ。

 なのに実際は直に姫様が自らツバキと対面すると我が儘を言ったのではないだろうか?

 そう考えるとタンゾウのいきなり俺を殺そうとしてきた過激な行為がちょっとだけ分かる。怪しき者は先ず排除、は正しい行いだ護衛として。


 そう考えながらも細い路地を右へ左へと幾度も曲がって辿り着いたのはデッカイお屋敷だ。

 塀が何とも100mくらいはあろうか?これだけで眩暈を起こしそうになる。


「ドンダケデカいのよ・・・逆にこの屋敷の中で迷子になりそうやんけ・・・」


「ぬははは!サイトウと言ったな?屋敷の広さに驚いたその顔、平民じゃな?面白い顔になっておったぞ。うんうん、今日は良い一日になりそうじゃ!」


 俺の素直なリアクションに姫様は楽し気な顔を浮かべて屋敷の門をくぐって中へと入っていった。

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