双竜
白亜紀。それは、世界中に恐竜がいて、生き残りをかけて、本気で争っていた時代。
今ではすっかり有名になっている、ティラノサウルスやトリケラトプス、プテラノドンなどもこの時代。
最終的には隕石が落ちて、恐竜達が絶滅に陥ってしまう、恐竜最後の時代なのだが、そんな中、無事にこの時代を生き抜いて、氷河にも耐え、後に人類の脅威となった恐竜がいた。
ごく普通のティラノサウルスの卵。そこには、二つの小さな命が宿っていた。
もうすぐ生まれてくるだろう。母がそう思っていた時のこと。不思議なことが起こった。
二つの卵が、同時に揺れているのである。
一秒のズレもなく、等しいスピードで、等しい強さで揺れている。
母親が不思議に思っていると、いきなり、同じタイミングで、一瞬のズレもなく、二匹の恐竜が生まれて来た。珍しいこともあるんだなあ、と、そんなことを思いながら、無事に生まれて来た、ふたごの赤ちゃんを眺めていた。
いくらふたごでも、行動から何まで、全てが一致しているというのは奇跡ではないか。偶然とは、とても思えない。このふたごは、以心伝心を使える恐竜だ。
以心伝心を使える恐竜は、自分が知る限りでは初めてだ。
この二匹を育てていけば、この、厳しい恐竜世界でも、普通に生きていけるのではないか。そう思い、母親は、二匹に、狩の仕方などを教えた。
二匹には、もともと狩の才能があり、それに加えて、以心伝心の能力を持つ二匹は、いつからか、恐竜の世界において最強の地位に位置し、恐竜たちの王となった。
王として、この恐竜世界に君臨した二匹は、他の恐竜たちから、こう呼ばれていた。「双竜」と