表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR

新釈シンデレラ

作者: 帷
掲載日:2017/11/01

初投稿です。

お見苦しい点が多々あると思いますので誤字、脱字など、コメントで報告お願いします。

私、新田玲菜(にったれいな)は進学校に通う高校二年生。頭も悪い訳じゃないし、運動も得意、顔もそれなりに良い方だと思っている。

そんな、大体は満足のできるであろう生活を送っている私の悩み。

私は今、学校で一番ハイスペックだと謳われる、榎本樹(えのもといつき)君に片思いしている。そして、樹君は、同じクラスの地味女、矢口彩(やぐちあや)をよく気にかける。


あんな奴よりも、私の方がかわいいのに。私の方が、周りからの評判は良いはずなのに。



そう思いながら、下校途中にある公園に入った。

すると、何かとぶつかった。


小学校低学年くらいの女の子だった。ウェーブがかかった金髪のロングヘア、フリルやリボンがたくさん付いた水色のロリータ服。頭には、服と同じ、大きな水色のリボンをつけている。かなりの美少女だと思う。でも。


(何よこの子…気味悪い)


そんな風に思った。その子はぱっと笑顔になり、言った。


「童話!買いませんか!?」


訳がわからない。


「私は童話の魔女。童話を売ってるの。」


…あぁ、ごっこ遊びの最中か。


「子供のごっこ遊びになんて付き合ってられないわ。」


そう言って、公園を出ようとした。


「…シンデレラのお話はどう?」


シンデレラ。

美少女が周りの女を蹴散らして王子の心を手に入れる話、だったっけ。

…もしも本当に、そんな風になるのなら。

…他の女を、矢口彩を出し抜いて、樹君と付き合えるのなら。


いつの間にか、私は『童話の魔女』に言っていた。

「買うわ。シンデレラの話。」


それを聞いた『童話の魔女』は、何か書類のような紙を取り出した。


「契約書よ。そこに名前を書けば、シンデレラの物語はあなたの物。」


見たことのない文字で書かれた契約書。そこに示された意味も知らないまま、私はサインした。

『童話の魔女』はそれを受け取り、去っていった。


「頑張ってね♪」


という言葉を残して。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


翌日、教室にて。


(…何よ昨日の。何も変わらないじゃない。)


教室もクラスメイトも、矢口彩も樹君も。何一つとして、変わったことはなかった。ため息をつく私に、先生が声をかけてきた。


「新田、お前今日日直だろ。体育館への渡り廊下、掃除しといてくれ」

「はーい」


先生の前だし、明るく返事する。

とはいえ、掃除は面倒くさい。…そうだ。良いこと思い付いた。


「矢口さーん!渡り廊下の掃除、代わってくれない?」



笑顔で矢口彩にそう言った。

いつもと同じ様に、彼女は快く引き受ける。…やったね。


…あれ?掃除させられるって、まんまシンデレラじゃん。


「やっぱいい、私やる」


矢口彩からほうきを引ったくって、そう言った。


早く、『シンデレラ』になれないかな。そうすれば、矢口彩は悲しげな顔をするのだろうか。廊下への移動中、ずっとそんなことを考えていた。

だからって、掃除が楽しくなる訳もない。吹きさらしの廊下だから、風通しがよく、枯れ葉が落ち始める今の季節は寒い。早く教室に戻りたい。

…いいや。ゴミも落ち葉も、溝によせちゃえ。

そうして私は、ご機嫌で教室に戻った。次の教科は体育だったはず。



「…あれ?」


ない。体育館用の靴を家に忘れてきてしまった。


「どうしたの?」

困った様子の私に声をかける人がいた。樹君だ。事情を話すと、


「じゃあ俺の靴履いてよ。俺はバスケ部だし、バッシュ履くから」


そう言って靴を貸してくれたのだけれど。当然、サイズが合わずガボガボだ。


「ははっ、やっぱ大きいよな。靴紐、きつく縛ればいけるかな?」


笑いながら、靴紐を締めてくれる樹君。

私いま、樹君に、王子に靴を履かせてもらってる?

足元に目をやると、靴に書かれたglass(ガラス)という文字に気がついた。ガラス社の靴なのかな?

…ガラス社の靴。もしかして、ガラスの靴?面白いじゃない。

物語は順調に進んでる。あともう少し。あと少しでハッピーエンド。

そう考えると、思わず笑みがこぼれた。


体育は、女子が体育館でバスケ、男子はグラウンドでサッカーの予定だったが、今日は雨。男子は外に出られないので、体育館で男女合同でフォークダンスをすると先生が言っていた。


きっとこれは、舞踏会。だとしたら樹君と最初に踊るのはもちろん私。

そう、まさしく、シンデレラと王子。

こんなにも、うまくいくなんて。


まぁ、フォークダンスだから離れちゃうんだけど。

ふと樹君を見た。樹君と踊っているのは、矢口彩だ。

楽しそうな笑顔の二人。とても、不愉快だ。


キーンコーンカーンコーン。


はっとして時計を見ると、授業終了の時間。

ああ、十二時の鐘か!さぁ早く私を選んで樹君…!


ワクワクしながら教室へ戻る。しかし、何やら渡り廊下が騒がしい。

雨で床が濡れているらしい。中には滑って転んで怪我した人もいたとか。私には関係ないけれど。



教室に戻ってしばらくすると、髪は濡れ、手や制服は泥だらけ、靴を片方しか履いてないという格好の、矢口彩が入ってきた。手には、落ち葉やゴミが入ったビニール袋。

女子が口々に、汚いなどと悪口を言う。

そういえばこいつのこと忘れてた。

くすりと笑って、耳打ちした。


「汚い格好よくお似合いよ。あなたに良いこと教えてあげる。王子と結ばれるのは私なの。あなたの出番はもう無いのよ」


ぽかんとした矢口の顔。完璧だ。これでもう敵はいない。私は席に着いた。


その後少しして、ずぶ濡れの樹君が入ってきた。


「大丈夫?これ使って。」


タオルを差し出す。

樹君はそれを受け取り、思いもよらない事を言い出した。


「今日、渡り廊下掃除したの、新田だよね。ゴミちゃんと取らないで、溝に寄せたでしょ。」


――――は?どうして?

驚く私に、彼は続けた。


「ゴミがつまって、雨水が廊下に溜まってるんだよ。ちゃんと掃除してれば怪我人もでなかったろうに…。さっきまで、矢口さんが片付けてくれてたんだよ。」


そして矢口彩に向き直る。


「靴脱げてたの、気づかなかった?」


そう言って、矢口彩に靴を履かせる。


―――――何よこれ。違う。どういうこと?



思わず教室から逃げ出し、雨の中、初めて『童話の魔女』と会ったあの公園へ走る。公園には、私を待っていたかのように、『童話の魔女』が傘をさして立っていた。


「――ちょっと!どういうことよ!?」


きょとんとする『童話の魔女』。


「ガラスの靴は履いたし、王子とも踊ったわ!なのにどうして王子と結ばれるのが私じゃなくてあいつなの!?」


それを聞いた『童話の魔女』は、歪んだ笑みを浮かべて言った。


「確かに私はシンデレラの物語を売ったわ。でも―――」




「――――あなたがシンデレラになれるなんて一言も言ってないのよ?」




「何よそれ!訳わかんない!!」

「あら。じゃあ説明してあげる。あなた、靴合わなかったでしょ?掃除をしたのはあの彩って子。それに、舞踏会で時間まで王子と踊ったのも、王子に履かせてもらった靴が合ったのも、あの子。シンデレラはあの子。あなたは、意地悪な姉よ。」


驚く私に『童話の魔女』は問う。


「ところで、意地悪な姉の結末は知ってる?」


するといきなり鳩が飛んできた。『童話の魔女』は続ける。


「意地悪な姉はね、鳥に目をえぐられるのよ?」


「えっ…?ぎゃああああ!!!」


視界が真っ黒になり、痛みが襲ってきた。『童話の魔女』が言った。


「物語の終わりは人生の終わり。契約書通り、命、もらうわね」

「契約書!?あれ何書いてあんのかわかんなかったし!!こんなの…こんなのインチキよ!卑怯よ!!」


大声で抗議する私に、『童話の魔女』は落ち着いた声で言った。


「あなた、童話読んだことないの?童話に出てくる魔女は、決まって悪役でしょう?」






「最初に言ったじゃない。私は童話の『魔女』だって。」






『童話の魔女』がどんな顔をしてそう言ったのか、私にはもうわからない。

読んで頂き、ありがとうございました。

女子に靴を履かせることに定評のある樹君(笑)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ