新釈シンデレラ
初投稿です。
お見苦しい点が多々あると思いますので誤字、脱字など、コメントで報告お願いします。
私、新田玲菜は進学校に通う高校二年生。頭も悪い訳じゃないし、運動も得意、顔もそれなりに良い方だと思っている。
そんな、大体は満足のできるであろう生活を送っている私の悩み。
私は今、学校で一番ハイスペックだと謳われる、榎本樹君に片思いしている。そして、樹君は、同じクラスの地味女、矢口彩をよく気にかける。
あんな奴よりも、私の方がかわいいのに。私の方が、周りからの評判は良いはずなのに。
そう思いながら、下校途中にある公園に入った。
すると、何かとぶつかった。
小学校低学年くらいの女の子だった。ウェーブがかかった金髪のロングヘア、フリルやリボンがたくさん付いた水色のロリータ服。頭には、服と同じ、大きな水色のリボンをつけている。かなりの美少女だと思う。でも。
(何よこの子…気味悪い)
そんな風に思った。その子はぱっと笑顔になり、言った。
「童話!買いませんか!?」
訳がわからない。
「私は童話の魔女。童話を売ってるの。」
…あぁ、ごっこ遊びの最中か。
「子供のごっこ遊びになんて付き合ってられないわ。」
そう言って、公園を出ようとした。
「…シンデレラのお話はどう?」
シンデレラ。
美少女が周りの女を蹴散らして王子の心を手に入れる話、だったっけ。
…もしも本当に、そんな風になるのなら。
…他の女を、矢口彩を出し抜いて、樹君と付き合えるのなら。
いつの間にか、私は『童話の魔女』に言っていた。
「買うわ。シンデレラの話。」
それを聞いた『童話の魔女』は、何か書類のような紙を取り出した。
「契約書よ。そこに名前を書けば、シンデレラの物語はあなたの物。」
見たことのない文字で書かれた契約書。そこに示された意味も知らないまま、私はサインした。
『童話の魔女』はそれを受け取り、去っていった。
「頑張ってね♪」
という言葉を残して。
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翌日、教室にて。
(…何よ昨日の。何も変わらないじゃない。)
教室もクラスメイトも、矢口彩も樹君も。何一つとして、変わったことはなかった。ため息をつく私に、先生が声をかけてきた。
「新田、お前今日日直だろ。体育館への渡り廊下、掃除しといてくれ」
「はーい」
先生の前だし、明るく返事する。
とはいえ、掃除は面倒くさい。…そうだ。良いこと思い付いた。
「矢口さーん!渡り廊下の掃除、代わってくれない?」
笑顔で矢口彩にそう言った。
いつもと同じ様に、彼女は快く引き受ける。…やったね。
…あれ?掃除させられるって、まんまシンデレラじゃん。
「やっぱいい、私やる」
矢口彩からほうきを引ったくって、そう言った。
早く、『シンデレラ』になれないかな。そうすれば、矢口彩は悲しげな顔をするのだろうか。廊下への移動中、ずっとそんなことを考えていた。
だからって、掃除が楽しくなる訳もない。吹きさらしの廊下だから、風通しがよく、枯れ葉が落ち始める今の季節は寒い。早く教室に戻りたい。
…いいや。ゴミも落ち葉も、溝によせちゃえ。
そうして私は、ご機嫌で教室に戻った。次の教科は体育だったはず。
「…あれ?」
ない。体育館用の靴を家に忘れてきてしまった。
「どうしたの?」
困った様子の私に声をかける人がいた。樹君だ。事情を話すと、
「じゃあ俺の靴履いてよ。俺はバスケ部だし、バッシュ履くから」
そう言って靴を貸してくれたのだけれど。当然、サイズが合わずガボガボだ。
「ははっ、やっぱ大きいよな。靴紐、きつく縛ればいけるかな?」
笑いながら、靴紐を締めてくれる樹君。
私いま、樹君に、王子に靴を履かせてもらってる?
足元に目をやると、靴に書かれたglassという文字に気がついた。ガラス社の靴なのかな?
…ガラス社の靴。もしかして、ガラスの靴?面白いじゃない。
物語は順調に進んでる。あともう少し。あと少しでハッピーエンド。
そう考えると、思わず笑みがこぼれた。
体育は、女子が体育館でバスケ、男子はグラウンドでサッカーの予定だったが、今日は雨。男子は外に出られないので、体育館で男女合同でフォークダンスをすると先生が言っていた。
きっとこれは、舞踏会。だとしたら樹君と最初に踊るのはもちろん私。
そう、まさしく、シンデレラと王子。
こんなにも、うまくいくなんて。
まぁ、フォークダンスだから離れちゃうんだけど。
ふと樹君を見た。樹君と踊っているのは、矢口彩だ。
楽しそうな笑顔の二人。とても、不愉快だ。
キーンコーンカーンコーン。
はっとして時計を見ると、授業終了の時間。
ああ、十二時の鐘か!さぁ早く私を選んで樹君…!
ワクワクしながら教室へ戻る。しかし、何やら渡り廊下が騒がしい。
雨で床が濡れているらしい。中には滑って転んで怪我した人もいたとか。私には関係ないけれど。
教室に戻ってしばらくすると、髪は濡れ、手や制服は泥だらけ、靴を片方しか履いてないという格好の、矢口彩が入ってきた。手には、落ち葉やゴミが入ったビニール袋。
女子が口々に、汚いなどと悪口を言う。
そういえばこいつのこと忘れてた。
くすりと笑って、耳打ちした。
「汚い格好よくお似合いよ。あなたに良いこと教えてあげる。王子と結ばれるのは私なの。あなたの出番はもう無いのよ」
ぽかんとした矢口の顔。完璧だ。これでもう敵はいない。私は席に着いた。
その後少しして、ずぶ濡れの樹君が入ってきた。
「大丈夫?これ使って。」
タオルを差し出す。
樹君はそれを受け取り、思いもよらない事を言い出した。
「今日、渡り廊下掃除したの、新田だよね。ゴミちゃんと取らないで、溝に寄せたでしょ。」
――――は?どうして?
驚く私に、彼は続けた。
「ゴミがつまって、雨水が廊下に溜まってるんだよ。ちゃんと掃除してれば怪我人もでなかったろうに…。さっきまで、矢口さんが片付けてくれてたんだよ。」
そして矢口彩に向き直る。
「靴脱げてたの、気づかなかった?」
そう言って、矢口彩に靴を履かせる。
―――――何よこれ。違う。どういうこと?
思わず教室から逃げ出し、雨の中、初めて『童話の魔女』と会ったあの公園へ走る。公園には、私を待っていたかのように、『童話の魔女』が傘をさして立っていた。
「――ちょっと!どういうことよ!?」
きょとんとする『童話の魔女』。
「ガラスの靴は履いたし、王子とも踊ったわ!なのにどうして王子と結ばれるのが私じゃなくてあいつなの!?」
それを聞いた『童話の魔女』は、歪んだ笑みを浮かべて言った。
「確かに私はシンデレラの物語を売ったわ。でも―――」
「――――あなたがシンデレラになれるなんて一言も言ってないのよ?」
「何よそれ!訳わかんない!!」
「あら。じゃあ説明してあげる。あなた、靴合わなかったでしょ?掃除をしたのはあの彩って子。それに、舞踏会で時間まで王子と踊ったのも、王子に履かせてもらった靴が合ったのも、あの子。シンデレラはあの子。あなたは、意地悪な姉よ。」
驚く私に『童話の魔女』は問う。
「ところで、意地悪な姉の結末は知ってる?」
するといきなり鳩が飛んできた。『童話の魔女』は続ける。
「意地悪な姉はね、鳥に目をえぐられるのよ?」
「えっ…?ぎゃああああ!!!」
視界が真っ黒になり、痛みが襲ってきた。『童話の魔女』が言った。
「物語の終わりは人生の終わり。契約書通り、命、もらうわね」
「契約書!?あれ何書いてあんのかわかんなかったし!!こんなの…こんなのインチキよ!卑怯よ!!」
大声で抗議する私に、『童話の魔女』は落ち着いた声で言った。
「あなた、童話読んだことないの?童話に出てくる魔女は、決まって悪役でしょう?」
「最初に言ったじゃない。私は童話の『魔女』だって。」
『童話の魔女』がどんな顔をしてそう言ったのか、私にはもうわからない。
読んで頂き、ありがとうございました。
女子に靴を履かせることに定評のある樹君(笑)




