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家政魔導士の異世界生活~冒険中の家政婦業承ります!~  作者: 文庫 妖
第2章 使い魔の里帰り

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40 幕間・使い魔ペルゥの日記

■十一月×日

 以前森を出て行った瑠璃色の同胞が帰郷するらしい。桃色の同胞から伝え聞いたので、久しぶりに皆で集まることにした。普段は蒼の森やら周辺地域に散って適当に暮らしている同胞が、指定の場所に集まって来る。

 瑠璃色の同胞が帰郷するのは今回が二度目だ。人間も一緒だったから驚いたけど、友達だから大丈夫なんだって。確かに優しい人だった。あの人が作ってくれる水は甘くて美味しいらしい。次に会ったら分けて貰えるかなぁ。

 瑠璃色の同胞――あるじにルリィと名付けられたらしい――が帰郷するまでにまだ数日かかるようだ。折角だから到着するまで遊ぼうということになった。

 人間を盗み見て覚えたかくれんぼや鬼ごっこも捨てがたいけど、伝統の川下りがやっぱり一番面白い。

 森の中から近くの村まで流れる川に一斉に入って流されて行って、村の中で川から上がる。それから川沿いを人間に見つからないように這って逃げて来る遊びだ。時々人間に見つかってしまうけれど、それを振り切って逃げるのもスリルがあって面白い。

 今日の川下りは危うく緑の同胞が見つかりそうになったけど、なんとか草に擬態して凌いだようだ。草が枯れてたからいまいち擬態し切れてなかったような気もするけれど、目の悪い人間だったみたいで事無きを得た。

 面白かった。もう一度やりたいな。



■十一月×日

 ルリィが帰って来た。ルリィの主のシオリと、アレクとかいう茶色い髪の人が一緒だった。赤い髪の人は今回は居ないみたいだ。

 なんだかアレクはシオリと凄く仲が良さそうだ。きっとシオリのつがいだと思う。

 ルリィは元気そうだ。前にも増してつやつやぷるぷるしている。魔法の水のおかげなのかもしれない。羨ましくて皆でぷるぷるつついてやった。うーん、羨ましい。水飲ませて欲しいなぁ。



■十一月×日

 沢山遊んで一晩寝たら、ルリィはまた街に戻るらしい。

 シオリの甘い水が飲んでみたいと皆でお願いしてみたら、飲ませてくれるそうだ。始めはアレクに警戒されたけど、ルリィに教わった通りに半球型になっておねだりしてみたら大丈夫だった。人間はこの「可愛い恰好」に弱いらしい。慣れるまで形を維持するのが大変で疲れるけど、それで甘い水を飲ませて貰えるならと頑張ってみた。

 頑張った甲斐があった。

 本当に甘くて美味しい! もっと沢山飲みたいけど、シオリは魔力が少なくてすぐ疲れるから駄目なのだそうだ。残念。

 でも、アレクが追加で作ってくれた。シオリと違って、力強くてほんのり甘い水だった。どっちの水も凄く美味しいけど、自分はこっちの方が好みかもしれない。沢山飲ませて貰ったら、心なしかつやつやしてきた気がする。

 水を飲み終わったら、またルリィとはしばらくお別れだ。さよならをしてから、それぞれ森の中に散って行った。

 それにしても、なんだか森のずっと奥の方が騒がしい気がする。なんだろう。何かあったのかな。



■十一月×日

 桃色の同胞から連絡が来た。

 沢山の人間が馬車でやってきて、変な薬を撒いて雪狼を捕まえて行ったそうだ。身重の雌狼ばかりで、雪狼達はカンカンらしい。逃げた人間達を群れで追い掛けて行ったみたいだ。皆無事だといいけど。



■十一月×日

 雪狼達が戻って来たらしい。捕まった雌狼は無事だったみたいだけど、群れは随分数を減らしたらしい。悪い人間が逃げ込んだ近くの村を襲って逆にやられたみたいだ。

 雌狼を捕まえたのは人間だけど、逃がしてくれたのも人間だったそうだ。魔獣と一緒で、良い奴もいれば悪い奴もいるということなのだろう。

 それにしても、雪狼の群れって凄く強いのに、人間もなかなかやるものだ。



■十一月×日

 森の中を走って行く変な人間達を見つけた。悪意を振りまいている人間達だ。シオリやアレクと違って、凄く良くない気配だ。こういうものが縄張りに入って来たら、捕まえておかないと。

 気配を察知したのか、あちこちから同胞達が集まって来る。

 ルリィの一族、瑠璃色の同胞が人間を一人捕まえた。自分も一人捕まえてみた。このまま食べてもいいけれど、瑠璃色の同胞が言うにはどうやら先日雪狼を襲った人間らしい。それなら雪狼に引き渡しておこう。

 同胞の誰かが連絡してくれたらしく、森の奥まで連行したら待ち構えていた。

 雪狼の前でぽいっと投げ捨てたら、後は適当に始末してくれた。

 それにしても馬鹿だなあ。大人しく人間の裁きを受けていれば良かったのに、何で森に入ったんだろう。



■十一月×日

 なんだか朝からそわそわして落ち着かない。

 良い事が起きそうな気がして、森の中をうろうろしているうちに人間の村の近くまで来てしまった。雪が積もってて目立つから、あんまり森から出ない方がいいんだけれど、でも、こっちで何か良い事がありそうな気がした。

 向こうの方で、人間の馬車が停まっているのが見えた。あそこだ。あそこできっと良い事がある。

 近付いてみたら、人間達に攻撃されそうになった。ルリィに教えてもらった事を思い出して、慌てて半球型に形を変えてみたら敵意が薄れたようだ。うーん、凄いな。可愛い形の効果は絶大だ。

 金色の髪の人間が近付いて来た。薄茶色の髪の人も一緒だ。

 どうやらルリィの知り合いらしい。シオリとアレクの事も聞かれた。目の色もそうだけど、アレクとこの人はなんだか気配が似ている気がする。同胞なのかな。

 なんだか金色の髪の人間は嬉しそうだ。触らせてあげたら大喜びだった。魔法の水も飲ませてくれた。力強くてちょっとだけ甘い水だ。うん、やっぱりあの人の同胞みたいだ。同じ味がする。とても美味しい。喜んで飲んでいたら、沢山水を作ってくれた。

 この人に付いて行ったら、ルリィみたいに毎日美味しい魔法の水が飲めるんだろうか。連れて行ってくれないかなと思ってたら、本当に連れて行って貰える事になった。

 やった!

 嬉しいなぁ。

「でも、ルリィ君のように里帰りはあまりさせてあげられないかもしれないよ。王都からは遠いからね。それでもいいなら、一緒に行こう」

 それでもいい。寂しくなったら桃色の同胞と通信してお喋りすればいいから。それに、回数が少ないだけで里帰りはちゃんとさせてもらえるみたいだし。

「じゃあ、君の名前は今日からペルゥだ。よろしく、ペルゥ」

 名前も付けて貰った。後で同胞に自慢しよう。

 金色の髪の人の名前はオリヴィエルというらしい。新しい友達が出来た。

 一緒に居たエドヴァルドという人はちょっと不満そうだったけど、気にしない。嫌われているわけでは無さそうだし。

 オリヴィエルの住処は王都にあるらしい。王都はどんな所かな。今からとても楽しみだ。

ルリィ「人気を食われそうで怖い」


蒼の森スライム通信について

・直接通信出来るのは同じ身体から分離した同じ一族のみ

・他の一族と通信する場合は、近場の同族スライムを経由

・人間と意思疎通は出来るが、会話そのものは出来ないため通信内容の詳細を伝える事は不可能

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