39 登場人物紹介(第八章までネタバレあり)
今回はたくさんいるので取りこぼしがあるかもしれません_(:3」∠)_
【冒険者組合】
■アレク・ディア
シオリが大好きで早く結婚したいけど色々片付けるまで我慢我慢な本作男性主人公。35歳。S級冒険者。魔法剣士。トリス支部所属でシオリの恋人兼パートナー兼フェンリル(通称)の契約主。
ついでに国王の異母兄で彼とは超仲良し。本名はアレクセイ・フレンヴァリ・ストリィディア。公的には失踪扱いで、身分を隠して冒険者業で地道に頑張っていたが、最近同僚の薬師ニルスに身バレしてしまった。しかし信頼できる人物なので、まぁいいかなと思っている。
何かしら特別で複雑な背景を持つシオリを妻に迎えるため、根回しや人脈作り、地盤固めに精を出していたところに伝説級の竜討伐依頼が転がり込んできて、なんやかやあって竜殺しの英雄という結構な称号を得てしまった。
ついでにS級にも昇格したが、散々打診して今回ようやく昇格を受け入れてくれたので、冒険者組合本部の偉い方々もほっと胸を撫でおろしている。
実力・人脈・運の全てが揃っていないとできない偉業なうえに、当の竜に気に入られて逆鱗を贈られてしまい、一つの討伐で「竜殺しの英雄」と「竜の英雄」に「S級冒険者」と、三つの称号を一気に得ることとなった。
王位継承権争いの最中に失踪した王子という汚名(?)を雪ぐどころか、お釣りで新居(庭付き)が買えるほどの快挙である。
また、仕事中に魂の友、幻獣フェンリルと奇跡の邂逅を果たし、新しい家族として連れ帰ることになった。周囲には、聖女と結婚予定で幻獣を従えた竜殺しの英雄とかなにそれ設定盛り過ぎじゃないとか思われている。
なお裏では密かに「紫紺の魔狼」などという二つ名で呼ばれていたことが判明したが、あまりに中等部二年生病くさい二つ名なので、こっ恥ずかしくて黙殺している。
おまけに親友クレメンスには公衆の面前で泣き虫と暴露されてしまい、どっちも恥ずかしいのでなかったことにしたい。
ところで報酬が出てますます懐が温かくなったし、新しい家族を迎えて部屋も大変手狭になったので、そろそろ新居兼シェアハウスを決めたいところ。
異母弟と元交際相手とのお話合いというイベントを終わらせたら、大好きなシオリとの結婚イベントが待っている。
夢いっぱい幸せいっぱい。部屋もぷるぷるモフモフでいっぱい。
余談であるが、コミカライズ版では開幕一頁目にして入浴姿を披露するという通称「開幕全裸」で初登場を決め、淑女の読者を誘引したとかどうとかいう噂。
■シオリ・イズミ
恋人のアレクとますます熱々な本作女性主人公。そろそろ32歳。日本からの転移者。本名和泉詩織。A級冒険者。トリス支部所属。家政魔導士というジョブを確立した才女で、じわじわと同業者を増やしているところ。
アレクの仕事のパートナー兼恋人。周囲には入籍間近かと思われているが、実際それほど時間は掛からないかもしれない。夜は結構な頻度でたっぷり愛情を注がれているので、最近ますます妙にツヤツヤ、色っぽいというかなんというか……と男性陣をドギマギさせている。よもやお触りだけで肝心の最後の一線を未だ超えていないとは誰も思うまい。
家政魔法教本と野営料理本はそろそろ形になりそうである。少部数の自費出版で出した二冊が、後に商業出版されてロングセラーになるとは微塵も思っていない。
今回後方支援として参加した氷蛇竜討伐で氷蛇竜本人に懐かれてしまい、討伐完了後、形見の品に逆鱗を贈られた。魔獣界ではマーキングされたともいう。二つに割れた鱗をペンダントに加工してアレクと一緒に身に着けているが、使い魔達には「なんだかときどき二人の周りをキラキラした何かが飛んでるときがあるなぁ」と思われている。お憑かれ様であるが、イールによると悪いことにはならないそうだ。
またこの出来事を経て「竜の聖女」の称号を得てしまった。聖夜の歌姫編では「天界から遣わされた聖女」と呼ばれそうになって回避したのにこれはこれで色々とアレなのだが、これまでの経験で考え方が少し変わり、ある程度の肩書は必要だと思い直して受け入れることにした。
そうは言っても、「天界の聖女」とかいうのはさすがに勘弁してほしいと思っているので、そっちは隠す方向で。
また、北方騎士隊への技術提供や今回の功績が認められてA級に昇格した。補助職系後方支援職で薬師や治療術師以外がA級に昇格することはかなり珍しく、さらに独自の職業に限れば史上初の快挙。もはや食事の支度と湯沸かししかできないと揶揄されていた頃が懐かしいレベルで、ヴィヴィ・ラレティなどは「どうせならいけるところまで上り切っちゃえ」などと思っている。
夏至祭で公開プロポーズめいた愛の誓いをされ、巷では英雄×聖女の物語や歌が流行り始めた模様。最近余所から人気の吟遊詩人が移籍してきてなんだか物凄い恋愛詩を作ってくれたが、恥ずかしくて床を転げまわりそう。しかしザックや辺境伯からは「ここまで盛り上がったら、並みのやり方では二人の関係に横槍は入れられまい」とそれはそれは生温かい笑顔で言われ、恥ずかしさを呑み込んで我慢している。
それはそれとして、幸せいっぱい。夢と幸せとぷるぷるともふもふが詰まって部屋がかなり手狭になったので、シェアハウス探しに本腰を入れたい。とりあえず目星をつけている物件を見学してみようと思っている。
なお、一部の魔獣からは「厄災の魔女」として大層恐れられている。よわよわだと思って近付いたら予想の斜め上の陰惨極まりない反撃に遭うので、一部界隈ではお触り禁止扱いになっているほど。氷蛇竜でさえ熱湯強水流モードでジャブジャブ洗って手懐けてしまったし。一部大いに誤解があるが、その恐怖伝説は留まるところを知らない。
■ルリィ
本作魔獣主人公。蒼の森出身の瑠璃色スライム。一応五十代前半らしい。スライムなのであまり意味はないけど。シオリの使い魔兼友人兼害虫駆除業者兼アレクの相談相手。トリス支部に所属。
大事な友達のシオリとアレクがそれはもう幸せそうだし、フェンリルの友達もできたし、蒼の森の同胞とも人目を気にせず会えるようになったし、副業の害虫駆除業も繁盛していて毎日がとても楽しい。
害虫駆除業で美味しいお菓子やご飯のほか、綺麗なものや変わったものを報酬代わりにもらうのが最近のちょっとした楽しみになっている。辺境伯家でもらったヴェセルツキー(宝石様に特殊加工した高品質無色透明ガラスを用いたアクセサリーブランド)の大粒のパーツは、ここ最近の一番のお気に入り。光の加減で虹色に輝いて見える瑠璃色のガラスがとっても綺麗。
シオリとアレクが広い新居に移ったら自分専用の部屋をもらえる予定なので、部屋いっぱいに宝物を飾るのをとても楽しみにしている。
ところで、シオリとアレクの周りにたまにふわふわ漂っている光の粒が気になる今日この頃。光の粒の正体には薄々気付いているが悪いことにはならないらしいし、光の粒もなんだか楽しそうなので黙って見ている。それはそれとして、好奇心旺盛なのか光の粒がなんだかあっちへふらふらこっちへふらふらとしょっちゅう余所見をしにいくので、ちょっと落ち着きがなさすぎじゃないか、というか眠りに就いたんじゃないのかとか思っている。
■ヴィオリッド
アレクの新しいお友達。蒼の森の出身の幻獣フェンリルで、その正体は雪狼の先祖返りした個体。蒼の森とノルスケン山の境界付近の穴倉に隠れ住んでいた。
五歳くらいで竜の英雄ご一行様の中では一番の若手だが、魔獣の年齢はあまり当てにならないので気にしない。
肉体的には雄だが中身はほぼ雌。コイバナも美男美女も大好き。しかし自分自身の恋愛にはあまり興味はなく、しかも恋愛対象は強いて言えば雌なので、雄の雪狼はあまり気にしなくていいと思うが、なんとなく苦手意識を持たれてしまっているらしい。
淡い紫色の体毛に金色の瞳という明らかに雪狼とは異なる外見を持って生まれたため、異端を嫌う彼らの厳しい掟に従い、生後半年も経たないうちに群れを追放された過去を持つ。しかし、愛情深い両親と兄弟に匿われて今日まで生き延びてきた。なかなかヘヴィな過去ではあるが、生来の楽観的かつ旺盛な好奇心でちょこちょことそこらへんを出歩き、あちこちで目撃されては騒ぎを引き起こしている。
隠れ住んでいるヴィオリッドのところに手土産付きでしょっちゅう訪ねてくる寡黙だが情に厚い長弟とツンデレの次弟がいる。群れに見つかるんじゃないかと心配にはなるが、案外見つからないものらしい。群れから出ていきさえすれば、ある程度は黙認されるという噂もあるとかどうとか。
そうはいってもあまり大っぴらな行動はできず、隠れ住む生活に鬱々として遂に爆発、はっちゃけて蒼の森をウロウロしていたときに素敵な気配を察知。これは噂に聞くアレかと喜び勇んですっ飛んでいったら、期待通りに「魂の友」がいて大興奮。しかも彼直々に会いに来たということで、テンション爆上げ。
あまりに興奮し過ぎてルリィにはちょっと引かれていた。虫好き……というより生き物全般が好きなブロゥは、珍しいフェンリルとちょくちょく会えるようになるということで大興奮だったようだ。
そのまま魂の友アレクと使い魔契約し、素敵な名前までもらってテンションが成層圏を突破した。
その場の流れで竜討伐に参加し、なかなかの活躍をしたようだ。その後に初めてアレク達とアパルトメントに帰宅した際、管理人のラーシュには五度見された。
余談ではあるが、雪狼たちは「逸れ者」と人間との共存に可能性を見出したらしく、ヴィオリッド以降はせっせと人間界に送り出している模様。掟とはいえ、やはり同族殺しには抵抗があったものと思われる。
■ザック・シエル
シオリとアレクの兄貴分でトリス支部のギルドマスター。蒼の森出身のスライム、ブロゥの契約主。まだなんとかぎりぎり40歳。S級冒険者。剣士。公爵家当主エドヴァルド・フォーシェルの異母兄で、二十五年前に事故死した第二王子ヴァレンティンの元側近。
ヴァレンティンの婚約者だったナディアや、公爵家出入りの商人の息子クレメンスとは少年期からの付き合い。自分と親友ヴァレンティンにお互い男兄弟しかいなかったせいか、仲間内で唯一の女の子だったナディアを二人で猫可愛がりしていた。
その可憐なお姫様だったナディアがまさか二十数年後にはセクシーダイナマイツな姐御肌の爆炎の魔女になるだなんて思いもしなかったし、ヴァレンティンが事故死したばかりか婚約者と友人を心配するあまりに成仏せずふらふら彷徨うことになるなんて考えもしなかったし、中性的な美少年クレメンスが腕利きのしっぶい美中年冒険者になるなんてことも思いもしなかった。
当然自分が竜殺しの英雄になるなんてこともこれっぽっちも思いもしなかったし、なんならその竜殺しを成し遂げたときに装備していた大剣で一番最初に殺したものが、まさか漆黒の害虫だったなんて思いもしないし口外もできない。彼のとっては竜殺しの偉業と某害虫駆除の記憶が薄っすら紐づけられているので、なんとなく微妙な気持ちになってしまうのである。
最近弟分のアレクと妹分のシオリが「竜の英雄と聖女」になり、一躍有名になってしまって大変複雑な半面、このくらいの立派な肩書があった方がかえって都合が良いとも思っている。
そうはいっても、夏至祭の公開プロポーズめいたアレについては、ちょっとお兄ちゃんとしては二言三言申し上げたい。辺境伯夫妻はニヨニヨしている場合ではないと思っている。
使い魔のブロゥは健気に害虫駆除を頑張ってくれているが、同じ棟にお住まいのどこぞの放蕩息子が不潔過ぎていよいよ害虫駆除が間に合わなくなり、本気で引っ越ししたいと物件探し中。もう無理ィ。
■ブロゥ
蒼の森出身の空色スライムでルリィの同胞。ザックの使い魔。十歳くらい。トリス支部所属。
虫捕りのスキルを買われて虫嫌いの英雄の使い魔になったが、当の本人は大の生き物好きで虫が特に大好き。虫が落とした素材を集めるのが大好きで、ブロゥの宝箱には大好きがいっぱい詰まっている。ザックが買ってくれた昆虫図鑑と携帯用昆虫図鑑も宝物。寝る前に眺める時間が至福の時。
一応自宅では個室をもらったので、そこにコレクションを飾ってみたりしているが、就寝時にはザックと一緒。スライムに「父親」という概念はないが、お父さんがいたらきっとこんな感じかなぁと思っている。
竜討伐戦では後方支援に徹し、負傷者の搬送や冒険者達の防御壁として大活躍した。ついでに珍しい生き物も色々見られて、なんだか物凄い体験をしたなぁとしみじみ感じる今日この頃。
シオリとアレクの周りをうろちょろしている光の粒に興味津々。なにしろ珍しい生き物には目がないので。
■クレメンス・セーデン
シオリとアレクの友人にして良き理解者。そろそろまた一つ歳を取りそうな36歳。A級冒険者。双剣使い。トリス支部所属。滴るような美中年でヒロイン気質な歩く不憫。訳が分からないと思うが事実である。
扱いが難しく、ほかの前衛職に比べると使い手が少ない双剣でA級保持者はさらに数が少なく、トリス支部では彼と彼の双剣の師であるハイラルド翁(元A級。年齢を理由に自己申告して現在はB級)の二人だけ。
三人兄弟の真ん中で王都の実家の両親も健在。
本名はクレメンス・ホレヴァで、国内屈指の大商会ホレヴァの関係者であることを隠すために母方の姓セーデンを名乗り、冒険者稼業に身を窶している。本来進む予定だったホレヴァ商会の幹部コースを諦めての選択ではあったが、子供の頃の憧れだった冒険者になれたので、これはこれで気に入っている。
前述の通り大変な美形で冒険者としても実力者であるのに、プライベートが意外に不憫過ぎてもはや歩く不憫と化している残念な人。
しかし竜討伐戦では漢を見せ、身体を張って帝国人の凶刃(狂人ともいう)から親友アレクを庇い瀕死の重傷を負った。普通なら死に至るほどの猛毒を気力で耐え抜き、同僚エレンの尽力で奇跡の生還を果たした。
エレン曰く、数々の出会いと軌跡が相互に影響し合って起きた奇跡。
どれか一つでも欠けていれば成し得なかったであろう奇跡で生き延びた男クレメンスは、生還を果たしたその場で恋人ナディアに求婚。しかも既に婚礼衣装だけはしっかり用意していたという念の入れようで、知らないうちに地味にフラグを立てていた模様。フラグが折れて本当に良かった。
なお、ニルスの薬局兼自宅で療養中、あの世からナディアの元婚約者の訪問を受けている。彼女を心配してずっと見守っていたけど、もうそろそろ大丈夫そうだなと成仏しかけていたのに、なんと相手の男がいきなり瀕死状態になってしまい、驚きのあまりあの世からまろび出てしまった様子。半ば背後霊と化した彼には長生きしろときっちり念押しされてしまったので、是が非でも長生きしなければならなくなった。弟にも大号泣されてしまったし。
ニルスの元で療養とリハビリを続けながら、ナディアが婚礼衣装に刺繍しているのを眺めて過ごす日々。
余談であるが、アレクのように開幕一頁目ではなかったものの、コミカライズ版では初登場を全裸(※入浴)で決めた仲間である。腰にタオルを巻いて頭からお湯を被っている褐色肌の男がそれ。背中のラインと若干際どい腰回りが大変美味しい。
■ナディア・フェリーチェ
シオリとアレクの友人にして良き理解者。38歳。S級打診を辞退したA級冒険者。上級魔導士。トリス支部所属。姐御肌でボンキュッボンの妖艶な長身美女。
ユルムンガンドも飛んで逃げる蟒蛇な酒好き。
現在の妖艶で豪快な魔女っぷりからは想像もつかないが、元は「悲劇の姫君」として有名な旧リトアーニャ王国の侯爵家の末姫ナディアーナ・フェリクス・チェルナンドで、ストリィディア王家の第二王子ヴァレンティンに嫁入り予定だった生粋のお嬢様。
ヴァレンティンが事故死した直後に故国で内乱が勃発し、葬儀に参列することは叶わなかった。その後、リトアーニャ建国以来とも言われた高い魔力を無謀極まりない侵略戦争に利用されることを防ぐため、内乱と政変でぐちゃみそ状態の大混乱の中、良識派の貴族達によってその他多くの若い貴族や領民の子供達とともに国外脱出させられた。その際、父と兄は戦死しており、他国に嫁いでいた姉の元に一時期身を寄せていた。
内乱終結後も「堕ちた英雄」の独裁によって混乱の続く故国には帰らず、成人するのを待って名前を変え冒険者となり、各国を放浪。最終的には嫁入り予定だったストリィディアに流れ着き、同じく冒険者となっていたヴァレンティンの親友ザックと再会。ストリィディアに骨を埋めることに決めたようだ。
なお、再会したときにはお互い見つめ合ったままたっぷり一分ほどフリーズしたという。なにしろ「死んだと思っていた可愛いふわふわのお姫様が物凄いセクシーダイナマイツな姐御になっていた&王宮で少年王の側近になっているものとばかり思っていた赤毛の素敵なお兄様が無精ひげのチョイ悪兄貴になっていた」ので。その後は抱き合って大号泣したので、周囲からは生き別れの兄妹が再会したと思われていたようだ。
そこで出会った滴るようなヘタレの美男子と飲み友達になったりちょっと良い雰囲気になったり銀髪少し燃やしちゃったりして十数年、その男が瀕死の重傷を負って肝を潰したが、なんとか生還した彼にようやく求婚されて近日中に入籍予定。
なお、婚礼衣装には生地と同色の糸で密かに願掛けの刺繍を施していた。沢山の人々の祝福と願いが込められた婚礼衣装は、二人の生涯の想い出と「御守り」になりそう。
■ニルス・アウリン
シオリとアレクの同僚。A級冒険者。薬師兼医師。33歳。
使い魔で高級薬草のイールは友人兼仕事の相棒。イールが調合の腕をめきめき上達させているので、負けていられないとますます頑張る今日この頃。家政魔法や薬膳粥の腕も大分仕上がってきたようだ。
竜討伐戦では氷蛇竜の縫合痕の発見や負傷者の治療で大活躍して、騎士隊からは「あいつ欲しいな……」とチラチラされているようだ。行かないけど。
また、リヌスの手を借りて氷蛇竜の口に「脳啜り撃退スプレーの原液」を丸ごと一本突っ込むなど、身の毛もよだつ攻撃で魔獣達を恐れさせた。この一件以降魔獣達には厄災の魔女の眷属だと思われているが、眷属ではなくて新たなる厄災(薬災?)の魔女が誕生しただけである。なにしろ彼のせいで脳啜りが絶滅したので。
クレメンスの治療をする傍ら、害虫駆除剤や魔獣忌避剤の研究も始めたらしい。ニルス考案の環境に優しいこれらの薬は、後に売れ筋商品の一つになったようである。
最近、クレメンスがホレヴァ商会の創業者一族だと知ったばかりか、アレクが失踪中の第三王子であることにうっかり気付いてしまい、芋づる式にザックの正体までなんとなく分かってしまって青くなった。勿論彼は口が固いので口外することは決してないが、知らないうちにどえらい人脈を築いてしまっていることに気付いて内心慄いたものの、まぁいい奴らだし別に損はないかとあっさり受け入れてしまった。なんだかんだ言って彼も肝が据わっている。長生きしそうである。
■イール
ニルスの使い魔のアルラウネ。ホルテンシア洞穴の主。六十歳前後。
ストリィディア王国のホルテンシア洞穴で古老扱いだった個体が薬師ニルスと使い魔契約を結び、イールと名付けられた。北方神話の医療や薬の神様の名前が名付けの由来。
蒼白い肌に薄紫色の葉っぱという、顔色の悪い人参のような外見。シオリには初対面でアンデッドに誤認されていた。しかし「足元」は妙にセクシーと密かに囁かれている。
全身猛毒(特に根っこ)だが量を間違えなければ特効薬にもなり、薬師にとっては貴重で素敵な薬草である。ゆえに薬草の王様とも呼ばれている。
大変な面倒くさがりでほとんど出歩かないまま毎日ぐうたら過ごしており、ぐうたらするあまりに過去に四回ほど「魂の友」との邂逅を逃している。しかもそのうち二回は寝ていて気付かないまま逃しているため、本人は逃したのは二回だけだと思っている。
わりかし残念だが、作中では結構活躍しているうえ、一般にはあまり知られていない知識を持っている。妖精や精霊とも交流があり、クレメンスと「謎の男」との極秘会談をセッティングするなど、伊達に古老認定されていない活躍ぶり。
なお、イールの搾り汁はこの世のありとあらゆる苦味とえぐ味を凝縮したような味らしく、舐めると瀕死人でも飛び起きるほどらしい。しかしニルスは薬の味見で慣れているのか、舐めてもまったく動じない。動じないのに不味い料理には物凄く狼狽えるので、なんだか面白い人間であるなとイールは思っている。
■エレン・オヴェリ
アレクとシオリの同僚。A級冒険者。治療術師にして外科医師免許を持つ才媛で、27歳とは思えないほどの貫禄がある美女。
有能で貴重な治療術師であるために教団や騎士隊からの勧誘は多かったが、組織に縛られて必要な医療行為が制限されることを嫌い、自らの意思と責任のもとで医療活動ができる冒険者という職業を選んだ。当初は治療術のみで活動していたが、冒険者としてはほとんど無力だったシオリが努力と研究を重ねて優秀な冒険者として活躍している姿に感銘を受け、医師に弟子入りして医師免許を取得している。
竜討伐戦では負傷者の治療に尽力したほか、致命傷を負ったクレメンスの手術を担当した。彼女の選択とシオリの存在がなければクレメンスは助からなかったかもしれない。努力の積み重ねと人の縁はまったく馬鹿にできないと、しみじみ思う今日この頃。討伐戦後、A級に昇格した。
森の精霊やお伽噺のハイエルフのように大変美しい容姿だが、怒らせると悪鬼も号泣しながら命乞いし、冥府の王も土下座して許しを請いたくなるほどの形相になる。その恐ろしさたるや、同僚の弓使いを仰け反らせ竜の英雄を震え上がらせ、歴戦の騎士達が蜘蛛の子を散らすように逃げ出すほどである。魔力の流れをうまいこと制御すれば、そのうち気迫と形相で敵を制圧できるようになるかもしれない。
クレメンスの手術で助手代わりを務めてくれた同僚の弓使いリヌスとは最近仲が良く、ときどき連れ立って食事に出掛けたりしている。以前口にしていた「仕事熱心で陽気で話し上手で気遣い上手な笑顔の素敵な人」とはもしや……と周囲はニヨニヨしながら見守っている。勿論口には出さない。冥府の王が辞職届を出して失踪したくなるような形相で睨まれてしまうので。
■リヌス・カルフェルト
アレクとシオリの同僚。A級冒険者。弓使い兼食材ハンター。その口調や立ち居振る舞いから少年っぽい印象があるが、そろそろ29歳という結構いい年で、弁えるところはきちんと弁える大人の男である。
明朗快活で裏表のない付き合いやすい性格で、トリス支部の人気者。食用になる動植物や魔獣に詳しく弓の腕も立つので、彼がいれば食事にも困らない。パーティに彼が一人いるだけで明るく楽しく充実した旅になると評判。
竜討伐戦では竜の片目を潰し、口に「脳啜り撃退スプレーの原液」を突っ込み、さらにはアレクを狙う暗殺者を見事撃ち抜いて逃亡を阻止したほか、クレメンスの手術ではエレンを手伝い、彼女が医師免許を取得するに至った理由を知ることになった。意外なところでシオリがかかわっていることを知り、ちょっと驚いている。
また、高級食材をいくつも獲ってきて戦勝会に華を添えた。彼が獲ってきたグリンカムビの唐揚げは一瞬で蒸発するほど美味かったらしい。体調的な問題で串焼きをひと齧りしかできなかったクレメンスは、結構本気で悔しがったという。
ところで好みのタイプはギャップのある女性らしい。最近エレンと仲良くしているのはそのせいもあるのかもしれない。聖女のような容姿と戦場での凛々しさのギャップもいいが、たまに見せる一国も滅ぼせそうな憤怒の形相も凄くて悪くないと思っているらしいので。よくよく考えたら、ちょっと変わった趣味の持ち主かもしれない。
余談であるが、アレクのように開幕一頁目ではなかったものの、コミカライズ版でクレメンスとともに初登場を全裸(※入浴)で決めた仲間である。「???」状態のアレクとは対照的に、野営地風呂を満喫していた。
■ルドガー・ラネリード
シオリとアレクの同僚。槍使いマレナの夫。A級冒険者。魔法剣士。トリス支部所属。最近30歳になった。ロヴネル領出身。
マレナより3歳年下で、泣き虫だった幼少期から「マレナねーちゃん」と呼んで慕っていた。成人すると同時に冒険者となっていたマレナを追い掛けて自分も冒険者になり、彼女に釣り合う男になるために魔法剣の腕と男前度を必死で上げて見事にプロポーズに成功したという逸話を持つ。
竜討伐戦に妻のマレナと参戦。同じく魔法剣士のアレクとともに接近戦で頑張った。最後まで自分の足で立っていた一人で、なかなかの猛者である。討伐戦後、A級に昇格した。
なお、戦闘中に負傷して離脱した妻マレナが実は身重だったと知り、そんな身体で竜討伐に参戦したのかとか妻子ともに無事で良かったとか情緒が滅茶苦茶になって大号泣していたところ、「うるさし」とばかりにイールに一服盛られて無力化したようである。
妻のリハビリに協力したり、赤子を迎える支度やパパになる勉強を始めたり、仕事に精を出したりと忙しい今日この頃。でも幸せいっぱい。子どもが生まれたらきっとまた大号泣すると周囲には思われている。
■マレナ・ラネリード
シオリとアレクの同僚。魔法剣士ルドガーの妻。B級冒険者。槍使い。トリス支部所属。もうすぐ33歳な32歳。ロヴネル領出身。
竜討伐戦に夫のルドガーと参戦。ゴリッゴリの近接戦でじりじりと竜のHPを削っていたが、大魔法を食らって左腕を負傷し戦線離脱した。
眠りづわりだけだったので本人も気付いていなかったが、実は妊娠三ヶ月の身体だった。負傷後に発覚してエレンもニルスも衛生隊もルドガーも真っ青。本当に無事で良かった。
腕の骨折も妊娠も経過は極めて順調。
ローズ・トヴォール社の薔薇の香りの石鹸を愛用していたが、妊娠したら匂いが苦手になってしまい、しょんぼりしながら無香料の石鹸に切り替えた。
夫に今まで以上に溺愛されて、ちょっと戸惑うやら嬉しいやらな今日この頃。
■カイ・シャンヴァリ
アレクとシオリの同僚。A級冒険者。魔導士から武闘家に転職した異色の経歴の持ち主。最近武闘家から魔闘士に登録しなおしたが、いまいち浸透していなくて未だに武闘家と呼ばれることが多い。26歳。
東方華帝国由来の気功術を取り入れた東方武術を繰る武闘家。風魔法や魔力放出を応用して跳躍力を上げるなど、魔導士の知識をきっちり応用して戦っている。
非常に身軽で、竜討伐戦ではエレンをお姫様抱っこして弱点探しに協力したほか、拳と蹴りでゴリゴリとHPを削り、竜の口にニルス特製「脳啜り撃退スプレーの原液」をぶち込む隙を作った。
面倒見がよく、後輩や使い魔達にも慕われている。
■シグルド
カイの使い魔。絶滅危惧種の吹雪猫。年齢不詳。
本来は飛べない魔獣だが、カイの気功術を真似て短時間なら低空飛行できるようになった。
鋭い爪と牙が武器で、低空飛行しながら切り裂き攻撃を行う。
カイとともに竜討伐に参戦し、ヒットアンドアウェイで地道にHPを削った。
■イクセル・ヘイグバリ
シオリとアレクの同僚。A級冒険者。上級魔導士。トリス支部所属の26歳。
野生の勘で「次に何をすべきか」を察して行動に移せるタイプで判断力、機動力が高く、明朗快活な性格なのでパーティを組んだときにはリーダー役を任されることが多い。
竜討伐戦ではヨエルと組んで隙を作ったりHPを削ったりする作業に勤しんだ。
竜の大魔法から仲間達を護るために全魔力を放出して魔力切れで失神した際、イールの生汁を口に突っ込まれてそのあまりのクソ不味さに飛び起きた気の毒な人。
■ダニエル・クロンヘイム
シオリとアレクの同僚。A級冒険者。トリス支部では五指に入る上級魔導士。トリス支部所属の52歳。大変ポジティブで陽キャになったス〇イプ先生のイメージ。
年齢を理由に攻撃系から補助系に転向していたが、竜討伐戦では攻撃系に返り咲いてザックとともに戦い、イケイケ攻め攻めだった若い頃を彷彿とさせた。
竜の大魔法から仲間達を護るために全魔力を放出して魔力切れで失神した際、イールの生汁を口に突っ込まれてそのあまりのゲロ不味さに飛び起きたかわいそうな人。口直しに何本も魔力回復薬を開けたようだが、なんとなく口の中に違和感が残ったようだ。
愛妻家で子沢山孫沢山のおじいちゃん。一番下の孫娘がイェリンちゃんで、竜討伐戦後の仮眠中に彼女の夢を見ていた模様。
■ヨエル・フリデール
シオリとアレクの同僚。A級冒険者。上級魔導士。トリス支部所属の26歳。
感情がすぐ表に出るので対人トラブルに発展しそうになることも多いが、どことなく憎めないのでなんだかんだで皆には可愛がられている。最初は多少の不信感や嫉妬を抱いていたシオリとの関係も、現在では極めて良好。シェアハウス用の空き物件探しにも協力してくれている。
褒められて伸びるタイプ。同僚もその辺は理解していて、竜討伐戦でもいい感じに褒め称えてくれて大活躍。イクセルとも組んで隙を作ったりHPを削ったりする作業に勤しんだ。家政魔法講座を経て成長を遂げた彼は、今回竜討伐戦の功績を認められてA級に昇格し、万年B級からの脱出を果たした。
なお、イクセルやダニエル同様に竜の大魔法から仲間達を護るために全魔力を放出して魔力切れでひっくり返ったが、何か大変嫌な予感がして自力で意識回復したためにイールの生汁攻撃を回避できた運の良い人。
そして戦い疲れて爆睡し、起きたところをリヌスに捕まって鳥肉の運搬役に駆り出されてしまった運の悪い人でもある。それでもちゃんと付き合うあたり、やはり悪い奴ではない。
シオリからご褒美でもらったレバーペーストは、あまりの美味しさに翌日までには平らげてしまったようだ。
■ヴィヴィ・ラレティ
シオリとアレクの後輩。19歳。D級冒険者。中級魔導士。トリス支部所属。
新人時代にシオリを一方的に敵視して刃傷沙汰のトラブルを起こして組合を一度は退会したが、諸々反省してシオリと和解し復帰した。
復帰当初は孤立していたが、本人の努力が認められて徐々に受け入れられるようになった。最近、郷里から追い掛けてきた幼馴染みに熱烈な告白をされ、晴れて恋人になったようである。実に甘酸っぱい。
■ハイラルド・ヴョルネ
シオリとアレクの同僚で大先輩。B級冒険者。双剣使い。トリス支部所属。冒険者組合開設以来最高齢の現役冒険者。81歳。
元々はA級だったが、還暦を迎えたときに降格を申請した。体力的、視力的に最盛期ほどの立ち回りができなくなったことが理由だが、それでもそこら辺のB級よりは遥かに活躍している。
容姿も実年齢よりはずっと若々しく、せいぜい60代にしか見えない元気溌剌な爺さん。イケオジィで女性人気も高いが、婆さん一筋なので品の良い遊び方しかしない。
クレメンスの新人時代の指導教官で、孫息子のように可愛がっている。彼の無事を祈りながら竜討伐に送り出したが、瀕死の重傷を負ったと聞いて若干寿命が縮まった。なんとか無事に帰ってきて、今後の活動にも支障がないということで胸を撫でおろしている。
爺さんの年齢が年齢なので、自分よりも早くにこの世を去った子供や孫もいるし、同僚や後輩に至っては数え切れないほどいる。自分より若いのが先に旅立ってしまうのはいくつになっても慣れない。若者(爺さん基準で65歳以下)には是非長生きしてもらいたいと常日頃から思っている。
■ベッティル・ニルソン
シオリとアレクの同僚。C級冒険者。酵母ハンター。トリス支部所属。36歳。
本業はパン屋。パン工房を経営しているオネエさま。しかしオネエなのは言葉遣いと仕草だけで、恋愛対象は女性である。凛々しい騎士様のような容姿で仕事熱心、そして気遣い上手の人なので、女性的な仕草が気にならなければそれなりにはモテるようだ。
竜討伐戦で頑張った仲間達のために、本陣でパンを焼いて待っていた。立派な設備がない野営地でも美味しいふわふわのパンが焼けるのは、さすがはプロと言ったところか。
最近アレクの使い魔になったヴィオリッドに興味を持たれている模様。なんとなく通じるものがあるようだ。
【辺境伯家・北方騎士隊】
■クリストフェル・オスブリング
トリスヴァル辺境伯。42歳になってしまった。ザックの友人でアレクの兄貴分的存在。シオリの後援者でもある。
お腹の出が気になる微妙なお年頃。健康のために一般的な貴族男性よりも多く運動しているが、年齢的にも昔より痩せにくくなったのがちょっと気になっている。
竜討伐戦では司令官を務めたが、元々はゴリゴリの武闘派なので本音では前線で戦いたかった模様。しかし前線から退いて大分年数が経っている人でもあるので、行っても足手纏いにしかならないだろうなという自覚もある。
しかし、見送る側に立つことはいつまで経っても慣れない。自分の目の届かないところで戦友や部下たちが死んでいくのは本当に嫌なので、今回も涙を呑んで見送った。
幸い皆が頑張ってくれたおかげで、重傷者は多数出したものの死者はゼロという快挙に胸を撫でおろしたが、実際に帰還した彼らのボロボロの状態を見てわりと本気で泣いたし、竜の封印を解いた帝国人にはわりと本気でキレた。表にはなるべく出さないように頑張ったが。
ずっと見守ってきたアレクとシオリが今回の戦いで名誉ある称号を得て注目を集めたことで多少心配はしたが、本人達は前向きに考えているのでまた見守る方向で考えている。それはそれとして、英雄と聖女の周りをうろうろする変な奴らに睨みを利かせることは忘れない。
■カスパル・セランデル
ブロヴィート駐屯騎士隊の隊長。38歳。既婚者で領都トリスに妻子を残して単身赴任中。
数年前はトリスの部隊に所属し、とある事件を担当していた関係で、シオリを気に掛けている。そろそろアレクと所帯を持ちそうなので、安堵しているところ。
昨年晩秋の雪狼襲撃事件の影響がようやく落ち着いてきて一安心していたところで、夏至祭直前にフェンリル騒動が持ち上がってしまった。不安がる村人の対応で寝る暇もなく、ちょっと精神的に参ってしまってシオリとアレクに調査の指名依頼を出した。
調べろとは言ったがまさかご本人様を直接連れてくるとは思わず肝を潰すことになったが、どうやら雪狼の変異種らしく、しかも温厚な性質と知って安心した……のも束の間、異端の子を殺したくなかった雪狼たちによってブロヴィート村が「フェンリル」の預け先にされてしまい、その窓口対応を任されたおかげでちょっぴり頭パーン! してしまったとかどうとか。
ちょっと例のない事態に半泣きで、雪狼たちを小一時間問い詰めたい気分で日々を過ごしているとのこと。
それはそれとして赤ん坊や子どもは可愛いので、なんだかんだで可愛がっている。騎士隊預かりとなった仔狼に「アメティスティ」と名付けたが、多分そのうちに使い魔になるかもしれない。「フェンリル」の契約主第二号になりそうである。
■レオ・ノルドマン
北方騎士隊第四後方支援連隊所属。ブロヴィート村駐屯騎士隊の元隊長。44歳。
春の家政魔法講座を経て、給養隊と輜重隊、衛生隊に本格的に手を入れ始め、そこそこには意識改革が進んだようである。最初はめんどくさがっていた隊員も、その恩恵に預かることによってかなり露骨に手のひら返しをした模様。特に簡易入浴設備の導入と食事の改善は大いに喜ばれ、やりがいのある職場として新規入隊、異動希望者もじわじわと増えているようだ。
同期で親友で上官のルードには全幅の信頼を置いているものの、進んで道化を演じに行くのでハラハラし通し。今回も恩人と思っているシオリに無礼を働きにいったので、理由は分かってはいても正直ハラハラドキドキで胃もキリキリしてしまった。ルードにはもっと腹芸も覚えようかと思われているが、あんまりそういうのには慣れたくない生真面目な男。
後方支援連隊に異動してしばらく経ち、だいぶ慣れてきたのでトリスの自宅に帰る余裕もできてきたが、長女がとうとう嫁いでしまったのでお父さんは寂しい。
■ルード・スヴェンデン
北方騎士隊第四後方支援連隊連隊長。レオの同期で三十年来の友人。43歳。
ぱっと見胡散臭くて食えない感じの狸親父で道化役も平気で買って出るが、中身は友人想いで部下想いの熱い男。若い頃に居酒屋で偶然同席したクリストフェルとは身分を越えた友人関係にある。
クリストフェル曰く、記憶力、観察力、洞察力が鋭く、とにかく目端が利く。人材発掘や育成もお手のもので、お荷物扱いされている埋もれた人材を引き抜いてきては適材適所で使ってくれる理想的な上司。
傷病者となって剣が持てなくなってしまったレオを引き抜き、改革と人材育成を任せている。
レオはルードを恩人と思っているが、ルードもまた気兼ねなく話すことができる友人兼右腕の存在に助けられている。
レオと同様、トリスに妻子がいる。末の息子が冒険者になるか騎士になるかで悩んでいるので、どちらを選んでも良いとは思うが、それはそれとして危険が伴う職業でもあるので、お父さんは心配。
■レイフ・レンネゴート
北方騎士隊幹部の一人。五十代。
スヴェンデンに便乗してシオリやその他有益な人材を引き抜こうとしたが、クリストフェルの策の内でもあったので敢え無く失敗。
しかし感性は人並みにまともな男であったので、自分が保護名目で引き抜こうとしたシオリと、数年前の明らかに事件性が認められていながら騎士隊が手を引いた事件の被害者が同一人物であったという事実を知り、ショックを受けたようだ。
■エスキル・アッペルヴァリ
北方騎士隊魔法部隊長。四十代。魔法騎士隊と魔法研究所の双方の長を務めている優秀な男で、夜会に出れば火遊び希望のご婦人方が群がる美中年でもあるが、いかんせん下半身がだらしないので女性騎士の受けは脳啜り以下。なのだが、それなりの地位にあるだけに立ち回りは上手く女性問題もいつも有耶無耶になってしまい、上層部の悩みの種でもあった。
極めて保守的で女性蔑視の傾向が強い。竜討伐戦でもシオリの知識と技術に目を付けて引き抜き、手柄を横取りしたついでに味見もしようと思っていたが、クリストフェルの策にはまって失敗した挙句に何故か下着一丁でうろついていたところを拘束され、更迭された。
新しい部隊長は普通にまともな人なので、部下たちは一安心である。
なお、その後も彼はなんとか返り咲こうと頑張っていたようではあるが、女性問題とパンイチ徘徊事件を雑誌記者にすっぱ抜かれ、奥方にも離縁状を突き付けられて静かになったようである。
イケメン無罪どころか、イケメン満場一致で有罪になった。
■ニクラス・ノイマン
北方騎士隊トリス本部に所属。31歳になった。
相変わらず「水虫」で記憶されているちょっと気の毒な人。アウリン薬局の評判を聞いてニルスの元に通うようになり、最近は大分改善されてきたようである。
竜討伐戦では領都防衛部隊に配置され、最前線に向かう冒険者隊を敬礼で見送った。
なにげに登場回数が多い騎士様である。
■ソルネ
北方騎士隊所属の騎士の使い魔。蒼の森の出身の夕日色のスライムで、ルリィの同胞。
竜討伐戦では契約主の騎士が領都防衛部隊に配置されたため、自身もそこに加わった。最前線に向かう冒険者隊を敬礼で見送った一人。
【その他】
■アニカ
ブロヴィート村の若者を取り纏める女リーダー。32歳。同い年の夫と、14歳になる息子がいる。
村の新名物「足湯」の管理責任者で、相変わらず忙しく働いているようである。しかし疲れを感じさせずにいつまでも若々しい気風のいい姐さんで、皆にも頼られている。
そんな彼女を常日頃から支えている夫には、もう一人ほしいかなぁ……なんて思われている。
■ビョルク翁
ブロヴィート村の古老で元猟師。何ごとにも動じない渋いイケオジィで、若い頃はさぞかしモテていただろうと思われる。71歳。
雪狼に非常に詳しく、ヴィオリッドを「雪狼の変異種」と見抜いた。
森とそこに棲む生き物たちへの敬意と感謝を忘れないことが、狩人としての最低限の礼儀だと思っている。
ところで、滅多なことでは動じない彼も、ブロヴィート村がフェンリルの避難所になってしまったことについては雪狼に一言二言申し上げたいことがあるようだ。
■フロル・ラフマニン
元帝国貴族でC級冒険者。剣士。29歳。平民落ちしてからの期間が長く、感性やものの考え方は限りなく平民に近い。
帝国内の冒険者組合基準ではC級だったが、実際にはA級相当である。なにせ、斃せなかったにせよ一人で雪熊と戦って撃退するような人なので、C級のはずがない。
前年初冬にシルヴェリアの塔で凍死寸前になっているところをシオリ達に保護され、その後はシルヴェリア駐屯騎士隊で療養していた。2ヶ月ほど療養した後に国境の難民キャンプに向かい、精力的に働いて指導者的な立場になる。
竜討伐戦で恩人と再会し、受け入れてくれた王国への恩返しと罪滅ぼしも兼ねて参戦した。クレメンスとペアを組んで戦い、翼を落とすなどして大活躍したが、皇帝派の残党にクレメンスを傷付けられて激怒。プッツンしてぶん殴るなど、なかなか血気盛んなところも見せたとかどうとか。
竜討伐から生還した後に、難民の一部を引き連れてディンマ氷湖付近の開拓村に移住。整地開墾作業や魔法石の回収作業に携わる傍ら、竜墓の墓守と歴史の語り部としても働き、後に辺境伯から直々に村長に任命された。
なお、ここに至るまでの間に従姉妹のユーリャと結婚。村人や親しくなった騎士達に盛大な結婚式を開いてもらい、男泣きしたようだ。子どもにも恵まれ、多忙ながらも幸せな人生を送ったようである。
■ユーリャ・ラフマニン
元帝国貴族でC級冒険者。治療術師。26歳。フロル同様、平民として過ごした期間が長く、感性や考え方はほぼ平民である。
帝国内の冒険者組合基準ではC級だったが、実際にはB級相当。
前年初冬にシルヴェリアの塔で凍死寸前の状態でシオリ達に保護され、一時期は肺炎寸前までいって結構危ない状態だったようだが、生きる希望に満ち満ちていたので無事生還。シルヴェリア駐屯騎士隊で療養した後に、フロルとともに難民キャンプへと向かった。
難民の指導者的立場にあったフロルを支え、竜討伐戦後に彼と結婚。子どもにも恵まれ、幸せな生涯を送った。
なお、治療術師としてエレンとも交流があったようである。
■マリウス・カッセル
トリス支部の近くの食料品店店主。34歳。元帝国民。妻と4人の子がいる。
陽気でカラリとした性格だが、帝国の圧政に耐え兼ねて十年ほど前に一家で国境を越えてきたというハードな経歴の持ち主。家族を亡くした食料品店の老店主に保護され、そのまま店を受け継いだ。
国境の夏至祭では元難民代表として出店し、難民キャンプにいた郷里の幼馴染みと再会を果たした。その後はトリス市内の難民の窓口のような立場になっている。
なお、亡命時に国境付近で亡くなった父親の遺骨は、なんとか無事に回収してトリスの共同墓地に納めることができたようだ。
■氷蛇竜
二百年ほど前に帝国内で生み出された竜型の実験体。地竜と火竜の交雑種で、孵化後にバジリスクの足とワイバーンの翼を移植され、血液を氷属性の魔獣のものと置き換えられて属性を偽装された。
本来は陽気で活動的な性格だったが、窮屈な生活でストレスMAXになり、大暴れしてディンマ氷湖に凍結封印された。
国が傾くほどの税金を投じて集めた氷属性の魔法石とともに氷湖に沈められ、以降二百年近くを冬眠状態で過ごすことに。その間にすっかり陰鬱な性格になってしまった。
元々氷湖には創世神話の氷蛇竜が封印されているという伝説があり、帝国の思惑であたかも実話であるかのように情報操作されていたが、シオリ達によって氷蛇竜とは無関係の交雑種であると看破された。
竜討伐戦で激闘の末に斃されたが、事情を知った冒険者と騎士達によって手厚く葬られている。
今際の際に「温かい想い出」をくれたシオリとアレクに逆鱗を手渡している。イールによると「マーキングされておるぞ」とのことである。また、ルリィ曰く「たまに二人の周りに謎の光が飛んでる」だそうである。
多分憑いている。
そして恐らく数年ほどでHappyな来世が始まるものと思われる。
■皇帝派の男
名前はあったがうっかり出し忘れられていた残念な人。
ドルガスト帝国の元貴族で弓の名手。反乱後に処刑された第十何皇女だかに腕前を褒められたことが自慢。反乱で帝政解体され、連合国に主導権を握られている現在の状況に不満を持っている。
皇帝派の貴族を極秘に集めて反乱組織を結成し、皇帝を奪還するために無謀にも旧時代の怪物「氷蛇竜」の封印を解いたが、案の定仲間の半数を二百年間絶食冬眠していた腹ペコ竜に食われてしまう。
本編でそこそこ重要な位置付けであったうえに、書籍版ではなんと挿絵も付いたのにまさかの名無し。これから先も多分名前は出てこない。
二百年ほど前に氷湖周辺の地域を治めていた一族の末裔で、屋敷の宝物庫(という名のがらくた置き場)に保管されていた古い記録から、先祖が皇帝直轄機関の魔獣生物研究者であり、当時の皇帝のあまりにもな無茶ぶりによって帝国の財政がすっからかんにされていたことを知り「帝国凋落の直接的な原因ってこいつらじゃん!!!!!!!」と絶望した。
意外にも事を起こした後には結構冷静になったようで、あらかた暴露して大人しく刑を受け入れた模様。色々と思うところがあったのか、刑確定後に献体を申請。刑執行後には医学の発展に微力ながらも貢献し、その後きちんと弔われて医療大学の献体用墓地に丁重に埋葬されたようである。
あの世でのお勤めを終えたら、来世では今度こそ真っ当に自分の人生を生きてほしいところ。
■皇帝派残党の皆さん
本編では氷蛇竜に半数がペロリと食われ、半数は逮捕されて無事終身刑に。一部は故国で生涯強制労働して多少なりとも国のために貢献したようである。
目覚めの一杯代わりにペロリとされた皆さんについては、ちらっと残骸らしきものが確認された描写が一瞬だけ出るが、それ以降は討伐戦の混乱で完全になかったものにされている。多分極大魔法や大魔法の連打で回収できなくなったものと思われる。
「皇帝派残党」から「皇帝派残念党」に改名したほうがいいかもしれない。本当はなんちゃら連合とかなんちゃら同盟みたいな立派な名前があったらしいが、誰も認識してない。
■パウル・ホレヴァ
冒険者用品を専門に取り扱うエナンデル商会の商会長。35歳。クレメンスの実弟で仲が良い。既婚者で一男一女の父。商会長として働いているときは大変キリッとしているが、プライベートではちょっと少年っぽさが抜けない無邪気な可愛らしさがあって、少し年上の奥方にも大変可愛がら……愛されている。可愛い。
髪色から髪型、背格好までクレメンスとよく似ているが、肌の色や表情が兄とは全然異なるせいか、一緒にいても実の兄弟だとバレなかった。知っていてそのつもりで見なければ、意外と見抜けないものである。
少年時代の婚約者候補が、婚約間近の恋人がいる実兄クレメンスに横恋慕した挙句に既成事実を作ろうとして大失敗し、社交界からは追放、同業者からも干されている。このときなんの罪もないクレメンスを意図しないながらも巻き添えで汚名を背負わせてしまっており、それが原因でクレメンスが家名を捨てて実家を去ることになってしまったので、今でも地味に彼女を許せない。ほんとマジあり得ないと今でも思っている。
熟練の冒険者となったクレメンスが伝説の氷蛇竜討伐に向かって瀕死の重傷を負い、明日をも知れぬ命という報せを受けて大パニックで彼の入院先まで駆け付けた。しかし商会員の手前表情には出さないように必死に頑張ったためか、憤怒を押し殺したような殺意溢れる大層凶悪な表情になってしまい、商会員にはトリス支店でよほどの大失態があったに違いないと思われてしまった。ちゃんと後から(うまいことはぐらかした)真相を説明して納得してもらったようだ。
それはそれとして、伝説級の竜討伐とか瀕死の重体とかで頭ぐるぐる状態で駆け付けたら、当のクレメンスはケロッとしているどころか、ちょっと前に「これから口説く予定」とか言ってたご婦人と近々結婚するとまで言い出して頭パーン!
取り乱し過ぎてクレメンスには呆れられてしまったが、瀕死の重体だと思って駆け付けた相手が笑顔で出迎えて結婚するなんて言い出したら、それは誰だってキレ散らかす。
王都に帰ってから遂に脳が処理落ちしてぶっ倒れてしまい、何日か寝込んでしまったのでクレム兄さんはしっかり反省するべき。
■ヤエ・ヤマブチ(山渕八重)
遥か東方の国、瑞穂の商人。楊梅商会幹部。ストリィディア王国支社の代表。29歳。
トリスヴァル領北端の国境地帯で難民支援のための夏至祭が開催されると聞き、慌てて物資や商品を積んですっ飛んできた。そこで運よくシオリと再会して大喜び。
半年ほど前に会った頃と比べて、大分肝が据わってきたシオリの様子を喜ばしく思っている。しかし、頑張り過ぎるのもほどほどにとも思っている。
なお、食いっぷりのいい男が好みな彼女は、事業提携しているロヴネル家の補佐官バルト・ロヴネルと交際を始めたようだ。珍しいお菓子が切っ掛けなので、二人らしいというかバルトらしいと周囲には思われている。
それはそれとして新しい恋人がカッコ可愛くて仕方がない。普段はにこにこと春風のようで食事中は子犬みたいに可愛いのに、仕事中に垣間見える冷徹な表情がまた堪らないらしい。ギャップに萌えるタイプである。
■ショウノスケ・ゴトウ(後藤象乃介)
楊梅商会の用心棒。33歳。本人はヤエの護衛だと思っているが、実際には腹心である。東方剣術の達人。元公儀隠密の卵で、隠密デビューする前に組織が解体して民間人になったものの、なんとなく隠密臭さが抜けきれずに世間に馴染めずいたところをヤエに拾われた。
夏至祭ではアレクとの演武で大注目された。その漆黒の衣装と太刀筋から「闇路を照らす導きの光」などと大層な評価を得てしまい、ちょっと恥ずかしい。
近日中に入籍予定の恋人がいる。
■幻の男
ニルスの家の薬草園に現れた謎の光る男。クレメンスに自分の想い出を託して去っていった。その正体は二十六年前に事故死した第二王子ヴァレンティンで、ずっと見守っていた恋人の新しい男がうっかり死に掛けたので、肝を潰してあの世からすっ飛んできてしまった。
無事二人の婚儀を見届けた後は成仏したと思いたいが、どうにも疑わしいところもある。冥府の王には、処理が滞っているのでさすがにそろそろ成仏してくれないものだろうかと思われている。なにしろほぼ同時期に亡くなった彼の兄の方は、とっくに輪廻の流れに入っているので。
【欄外】
■箱詰めマンティコア
序章のラスボスなのにあまり重要ではないので戦闘シーンは省略され、ナレ死すらできなかったが、ギルドマスターが首検分していたので無事討伐された模様。コミカライズ版では登場直後のコマで「木箱」になっていたので、箱詰めしてお持ち帰りされたものと思われる。
残念極まりないが、なんと作者にすらわりと最近まで存在を忘れられていた。残念魔獣大賞の上位に食い込んでいそう。
■大蜘蛛
森などに群れを作る虫型の肉食魔獣で、柔らかい肉や内臓が大好き。縄張りに入り込んだ獲物を皆で分けっこして食べている。
厄災の魔女の被害者第一号と思われる。
欄外では「ハァーイ、ジョージィ」が持ちネタだが、そこはかとなくネタバレである。何のとは言わないが。
■雪狼
棲息域はアルファンディス大陸北西部の森林地帯。ストリィディア王国では蒼の森の雪狼が特に有名。蒼白い森と白銀の狼の組み合わせは美しく幻想的で、絵画や絵本などの題材によく使われている。
情に厚く大変な仲間想いで、仲間に何か起きると群れで復讐に行くほど激情的。また群れの掟が厳しく、掟破りには容赦がない。
その半面、意外にお調子者でちゃっかりなところもあり、掟に反するとして追放していた「フェンリル」と呼ばれる変異種を、頼りになると知るやこっそり人里に預けるなどして現地人を若干呆れさせている。たまに預け先に様子を見に行って分かりやすくうろつくので、ますます人々を呆れさせている。
口先では掟どうこうと色々言うが、内心では皆思うところがあるのかもしれない。
欄外ではたまに思い出したように顔を出している。
■ギリィ
トリスヴァル領からエステルヴァル領に跨る地域で目撃談が相次ぐ幻獣雪男。大陸歴1996年末に初めて生きた個体が確認され、あまりの危険度の高さからその場で冒険者パーティに討伐された。
その初めて討伐された個体が欄外にてネームドになり、ちょこちょこ顔出ししている。
丁寧な口調と物腰で紳士的ではあるが大層嫉妬深く、しょっちゅう歯軋りしており、その音が名前の由来にもなるほどの頻度。
今日も彼はギリギリと歯軋りしている。幻獣仲間がなんだか特別扱いされているうえに、幸せな来世も確定したような匂わせがあったので。
当の本人は討伐後研究のために研究所送りとなった後に剥製になったが、なんだか気味が悪いと言って陛下にも辺境伯にも「要らない」と言われてしまい、結局引き取り手がないまま博物館の展示物になっている。
今のところ、展示物では一番人気。ゆっくり見ていってね!
■脳啜り
暗くて湿った場所や、生き物の新鮮な脳みそを啜るのが大好きな、地球外生命体のような凄い見た目の希少種魔獣。特定の地域に一定期間以上留まることはなく、番と一緒にあちこちふらふらと移動している。
あるとき訪ねた洞穴でグルメ三昧し過ぎて洞穴の主の機嫌を損ねたうえ、厄災の魔女を覚醒させてしまい、全身劇物塗れにされて敢え無くあの世行きになった。ついでに厄災の魔女の知人が脳啜り撃退スプレーなるものを開発してしまい、一気に普及して十数年で絶滅してしまった残念魔獣。
なお、絶滅しても特に生態系に問題が出ることもなく、やはり残念臭が漂っているが、書籍版ではなんとカラーピンナップで主役級の大写しになった結構なラッキーマンである。
欄外ではチョイ悪オジ風で意外に常識人。しかも唯一の既婚者。欄外仲間のギリィには「リア充爆発しろ」とか思われている。
■ユルムンガンド
通称ユル蛇。双頭の怪物と思いきや、尻尾にも顔がついていたので、実は三つ首の怪物である。神話級の名前をもらっているのに、作者の趣味でヘンテコな見た目にされてしまった残念な魔獣。
王国の実験生物で、大脱走の末に王国に辿り着いた。王国は餌が豊富でなかなか快適だったらしいが、過剰戦力な冒険者パーティ+今話題の厄災の魔女の毒牙にかかり、敢え無く昇天。
煮られたので剥製にすらなれなかったし、大人の事情でボスキャラなのに書籍版でも挿絵が付かなかった。なかなかの残念さであるが、作者的には美味しいと思われている。多分残念魔獣大賞暫定二位に急浮上している。
■陽キャ竜
氷蛇竜だけど根っこの性格が陽キャなのでこんな名前に。語呂は悪くないと思っている。
本編では生体実験と氷湖に凍結封印というダブルパンチですっかり陰鬱な性格になってしまっていたが、本来は陽キャ。なんでもポジティブに捉えるし、面白そうなものならなんでも楽しんでしまう、好奇心旺盛で明朗快活な性格である。
その場にいるだけでなんだか明るい気分になるムードメーカー。
なんでも嫉妬しがちな雪男ギリィとは大違いである。
■コカトリス
どうも美味い肉の話しか出てこないと思ったら、とうとう本章で美味すぎて家畜化していることが判明した。なんなら毒腺の調理法まで編み出されていて二度びっくり。
家畜コカトリスは安定して美味いが、野生種も勿論美味いので人類に見つかったら確実に命の危機。そんなこんなで警戒心が強くなり、以前ほど人前には姿を現さなくなっている。
欄外ではたまに顔を出す。だいたい肉の話になったときに出てくる。
■穴倉鳥
ホルテンシア洞穴に営巣している高級珍味な鳥。
脳啜り唐辛子オイル塗れ事件後、せっせと「厄災の魔女」の脅威を拡散していた穴倉鳥であるが、最近姿を見かけなくなった。どうやら人間に捕まって美味しく食べられ、残りは高級料理店に売られてしまったらしい。捕まえたのは鳥肉好きの有能弓使いだったとかどうとかいう噂。
調子に乗って拡散し過ぎた挙句にリアル炎上して串焼きになるオチを付けるとは、ネタ仕込みにしても身体を張り過ぎだと魔獣たちから思われている。
■名無しの幻獣四天王
欄外で幻獣四天王の存在が示唆されていたが、最後の一匹は作中では出てこないし、今後も出てくる予定はなく、外見の描写はおろか名前すらない。あまり話題にならないので多分それほど脅威ではないのだろう。
このまま大人しくしていて、是非長生きしていただきたい。
確か一度だけ「???」表記で欄外に出ている。
残念魔獣大賞暫定一位。このまま優勝しそう。
ルリィ「登場人物紹介で20,000字越えという暴挙」
次回で新章突入、新居見学に行くぞ!_(:3」∠)_




