25 氷蛇竜戦(5)祈り、そしてそれぞれの戦い
※怪我の描写など少し生々しい表現がありますので苦手な方はご注意ください。
「クレメンス!」
悲鳴にも似た声は、ザックのものだろうか。
何者かが放った矢を受けて倒れたクレメンスの、その左腕から滴る雫が地面にいくつもの赤黒い染みを作った。
「嘘、射られた……!?」
「なんで!? 流れ矢か!?」
竜ではない、明らかに人によるものだと分かる攻撃で倒れた彼の姿に動揺が走り、戦場の一角に乱れが生じた。
「狼狽えるな! ここは俺が見る、お前らは竜を頼んだ!」
集中を乱した同僚を一喝してその意識を竜に戻したアレクだったが、当の自分がこの場で最も動揺しているだろうという自覚があった。
――己と友の立ち位置、その直線上に射手と思しき男の姿を認めて、友が己を庇ったのだと理解したからだ。
弓を構えていたその男は、リヌスの矢に肩を射抜かれて後ろ向きに倒れ込んだ。憤怒の形相で駆け寄ったフロルが男の胸倉を掴み上げ、激しく罵倒している。
男の身形とフロルの様子から、男が帝国人であることが察せられた。
それですべてを理解してしまった。
あの男とは面識がないが、己を狙ったのは偶然ではあるまい。
クレメンスは己の身代わりに射られた。それも帝国に捨ててきた偽りの姿、アレン・シュリギーナという幻影の身代わりにだ。
「反逆者に死の鉄槌を!」
薄汚れた猟師の成りをしたその男は、騎士達に取り押さえられながらも笑っていた。
「皇帝陛下万歳! 竜の英雄に永久の栄光あれ!」
狂ったように哄笑する男の姿は狂人そのもの。
ゆえに男の「反逆者」という言葉を真剣に捉える者は一人もなく、ただ正気を失くした皇帝派残党の凶行として片付けられた。
抱き止めた親友の身体から急速に力が抜けていく。
脱力したその身体のあまりの重さに、アレクは息が止まりそうになった。
この重みには覚えがある。冒険者となってから幾度も見送ってきた仲間達の、物言わぬ身体の重みによく似ていた。
「……馬鹿野郎」
泣き出したくなる気持ちを堪えて、アレクは叫んだ。
「馬鹿野郎! 何故庇った!」
「……何故って、お前」
クレメンスは痛みに引き結んでいた唇を微かに開いた。笑ったようだった。
「やっと、幸せを、掴んだんだ。こんなところで……終わりになんて、してる場合じゃ、ない、だろう」
「それはお前もだろうが! あいつを、ナディアを二度も行かず後家にするつもりか!」
「一度目は、私では、ないんだが、なぁ」
もう一度笑おうとした彼はしかし、低く呻いて呼吸を荒くした。空気を求めて開く唇が激しく戦慄き、じっとりと滲む汗がこめかみを伝って流れ落ちていく。胸を掻きむしるようにして動いた右手は、ひどく震えていた。
忍耐強いこの男が身を捩って苦鳴を上げる様は尋常ではなく、その苦痛の原因がただ矢傷ばかりにあるのではないと知れた。
(最悪だ……っ)
これは毒だ。鏃に毒が仕込まれていたに違いなかった。
竜との戦いで血の巡りが早く、既に毒は全身に回っているようだった。
「クレムっ……」
地に横たえられた恋人に縋るナディアの顔は、蒼白を通り越して紙のように白い。
愛する男を再び失うことになるかもしれないという恐怖が、爆炎の魔女をひどく打ちのめしていた。
だが治療術師も薬師もまだ来ない。間が悪いことに、彼らの手は全て塞がっている。騎士隊の衛生兵も手一杯だ。ここで薬に頼ったところで、矢を抜かない限りはほとんど無意味だ。
だからと言ってここで下手に抜けば、激しく出血して状況を悪化させるかもしれない。
(だが、このままではこいつは……!)
出血を伴う矢傷と、毒による中毒症状。このままでは確実に死に至る。
忍び寄る死の気配が親友の端正な顔にべったりとした濃い影を落とし、今にもこの男を連れ去ろうとしていた。
もはや猶予はない。
いつの間にか隣に膝をついていたシオリの手には、血止めと解毒薬、包帯が握られている。いつでもやれると彼女の目は訴えていた。
アレクは覚悟を決め、血に濡れた服を切り裂いて傷口を露出させた。そして、そのあまりの惨たらしさに息を呑む。
浅い角度で肘上に突き刺さった矢が、表面の肉を縫うようにして肩先まで潜り込んでいたのだ。
(これは……素人が手を付けていいものではない)
ならばせめて止血だけでもと、躊躇いながら傷口に手を触れようとしたそのとき、横合いから飛んだ怒声がアレクの手を止めさせた。
「駄目だっ、無暗に触るな!」
普段からは想像もつかぬほどに激しい怒声を発したリヌスは、クレメンスを、正確には彼に突き刺さった矢を覗き込んだ。
「くそっ、やっぱりご禁制の毒矢だ! 引き抜くと鏃が取れて中に残るんだよ。おまけに残りの毒が全部飛び出る仕組みなんだ」
その構造上、応急処置すら命を縮めてしまう。
リヌスがこの矢を最後に目にしたのは子供の頃、誤射で大叔父を亡くしたときだ。魔獣向けのこの毒矢は、死亡事故の多発で使用が禁止された。一般にはもう流通していないはずなのだ。
あの帝国人は、人一人を殺めるためにそんなものを使ったのか。
今すぐあの男を斬り捨ててやりたいという衝動を抑えながら、クレメンスに解毒薬を含ませる。
「でも、じゃあ、どうすれば……?」
シオリの声は震えていた。
矢を抜かない限り、クレメンスは毒に苦しみ続けることになる。傷口からの出血も止まらず、矢を伝ってしとしとと流れ続ける血液が服の染みを広げていた。
弓使いなら対処を知っているのではと縋るように見たが、リヌスは「ごめん」と首を振った。
「俺にも無理。誰が抜いても鏃は残る。切開して取り除かないと駄目なんだ。だからニルスかエレン先生を待とう。それまでなんとか……薬で凌ぐんだ」
毒の供給源が体内にある限り、解毒剤ではその場凌ぎにしかならないことはこの場にいる誰もが分かっていた。
包帯で止血しようにも、矢傷の場所が良くなかった。肩先に潜り込んだままの鏃に要らぬ振動を与えるかもしれないとあっては、肩に止血帯を巻くことすら難しい。
「……ルリィ。ニルスさん達が来るまで、傷口を押さえてくれる?」
震える声でシオリが言った。いつ来たのか、傍らに佇んでいたルリィが、心得たとでもいうようにぷるるんと震える。
水魔法を浴びて埃に塗れた身体を清めたルリィは触手を慎重に伸ばし、柔らかな身体を傷口の形状に沿わせるようにして貼り付いた。
「……毒は大丈夫なのか」
「吸収しなければ、平気だって」
「……そうか。ありがとう、ルリィ」
ひとまずの血止めをして、少しずつクレメンスに解毒剤を含ませる。
エレンが来るまでごく数分のことだったが、その僅かな時間が永遠のことのようにも感じられた。
「お待たせ、ごめんねどいてちょうだい!」
ようやく駆け付けたエレンはアレクを押し退け、患部を診て息を呑んだ。
「これは……すぐにでも手術しないと。でも」
彼女は戦場に素早く視線を走らせ、顔を曇らせた。
相変わらず治療術師も薬師も手一杯で、特に治療術師は一人でも抜ければ戦況にも影響しかねない。
致命傷を負ったクレメンスを優先したい、けれどもそうすれば戦場に戻せる者を何人も後回しにしてしまう。
仲間への想いと戦場の医師として責務、エレンはその狭間で激しく葛藤した。
しかしそんなエレンを、ニルスが後押ししてくれた。
「大丈夫、君の分は僕達が引き受ける。だからどうか、クレメンスを頼むよ」
イールもまた同意を示すように葉をわさりと揺らした。
「いいの?」
「僕達は騎士じゃない。だから優先順位は好きに決められる」
イールの根の成分から作った鎮静剤をエレンに握らせながら、ニルスは笑った。
「上の言いなりになって患者を選別するより、自分の意思で仲間を救いたいから騎士隊よりも冒険者を選んだんだって、前に君も言ってたろ」
「ニルス……」
「冒険者は冒険者のやり方でやる。ザックだってそう言ってたじゃないか。だから気にするな。さあ」
行けと背中を押され、エレンは頷いた。
答えも待たずに行ってしまったニルスに「ありがとう」と呟くだけの礼をして、「さあ、貴方達もここは私に任せて行ってちょうだい」とアレクを促した。
アレクは咄嗟には返事ができなかった。
本音では友に付いていてやりたい。
けれどもそれを半ば強引に飲み下した。
クレメンスは己のせいで矢を受けたのだ。片を付けるのは己だ。
「……分かった。だがナディアは一緒にいてやれ」
主力魔導士が抜けるのは正直痛い。それでも今は二人一緒にいさせるべきだとアレクは思った。
しかし、その気遣いは当のクレメンスが断った。
「私、は、大丈夫、だから、ナディアを……っ、連れて、いけ」
クレメンスは途切れ途切れに言葉を発しながら、ナディアの首筋にそっと触れた。本当は頬を撫でたかったのだろうが、それ以上、そのほんの僅かの距離にも手を伸ばせないようだった。
「あまり喋っては駄目。体力は温存して」
エレンの忠告にも彼は耳を貸さなかった。言い終えるまではどうか許してくれと視線で訴える彼が、終わりが近いことを既に受け入れてしまっているようにも見えて、アレクは唇を噛む。
「こんな、ことで……むざむざ、死ぬつもりは、ないさ」
苦しい息の下、それでも彼は笑った。
数多の女を虜にした美貌の男は、今や唯一となった女を真っ直ぐに見上げて微笑んだ。
「必ず、生還する。だから、行け。主力が、いつまでも、ぐずぐず、するな、ナディア、お前の、花嫁……衣――」
朦朧とする意識で発する言葉は取り留めがなく、その言葉途中でずるりと手が落ちた。
ぞっとして身を乗り出したアレクを「落ち着いて、気を失っただけよ」とエレンが押し止めた。
「……こんなときにまでかっこつけて、憎ったらしいくらいにいい男だね、まったく」
そっと掬い上げたクレメンスの手のひらに口付けた妖艶な魔女は、アレクが知る限りでは恐らく初めて気弱な笑みを見せた。
それでも彼女は気丈に言った。
「いいさ。あんたの分まで戦ってやる。だから死ぬんじゃないよ」
力なく横たわる男の唇を愛おしげに撫で、そのままくるりと背を向けて彼女は駆け出した。
アレクもまた親友の手に触れた。
冒険者になって以来ともに戦い、切磋琢磨しあった得難い友の無事を祈る。
「――エレン。後は頼んだ」
「ええ」
「シオリ、行くぞ」
「……うん」
「俺は先生を手伝うよ」
リヌスはクレメンスを担ぎ上げ、駆け付けた衛生兵がそれに手を貸した。
外科医師と治療術師という二つの肩書を持つエレンと、いつになく真剣な面持ちのリヌスに友を託して振り返ったアレクとシオリの目の前には、いつの間にかザックが立っていた。
無言でクレメンスを見下ろし、視線だけで「頼む」とエレンに伝えたザックは、二人を促してともに戦場に戻っていく。
「――皆、貴方が帰ってくるのを待ってるわ。だから、頑張って。私も頑張るから」
命を賭けた戦いは、戦場ばかりにあるのではない。
医師のもとにもまた、生命を賭けた戦いがある。
クレメンスを三人がかりで衛生隊まで移送すると、衛生兵が土魔法で簡易的な手術台を作ってくれた。
シオリの家政魔法が、既に衛生隊の末端まで行き渡っている。
(ありがたいことだわ)
患部の血止めをしてくれていたルリィを再び戦場に送り出してから、エレンは手早く手術の準備を始めた。
腰ポーチから医療器具と薬品を取り出し、切り裂かれていた衣服を更に大きく広げて、患部周辺を剥き出しにした。
「手足を押さえててくれる?」
「分かった」
リヌスがクレメンスの両腕を、左右の足は包帯で片腕を吊った二人の騎士が押さえてくれた。複雑骨折でもう戦場には戻れないが、治療の手伝いくらいはできると彼らは言った。
「ありがとう。じゃあ、始めるわね」
患部に局所麻酔を打ち、それからニルスに手渡された鎮静剤を手に取った。
(やっぱり……あまり強いものではないわね)
アルラウネの薬は、今のクレメンスには負担になってしまう。この鎮静剤も、どちらかと言えば眠りを深めるためのものだ。
(それでも、少しでも痛みを軽減できるなら)
局所麻酔も鎮静剤も、痛みを完全に遮断できるものではない。戦場の片隅でできる処置としてはこれが限度だ。しかし、ないよりはずっといい。
振動で矢の毒が噴出しないよう最大限の注意を払いながら傷口を広げる間、クレメンスは鈍痛に呻いていた。切開する範囲が広く、どうしても痛みは残ってしまう。
手術なんてせずに、このまま治療術で治してしまえればどんなにか良かっただろう。
それでも異物を取り除かなければ、傷を塞ぐことすらできないのだ。
あまりに弱った身体に使っては、術そのものが患者の命を削ってしまうことだってある。
癒しの術を持つエレンを人は羨むけれど、決して万能ではない力はむしろエレン自身を苛んだ。
――クレメンスの体温が、高くなっている。身体が毒に抗っているのだ。
けれどもこれ以上の高熱は、本格的に彼の生命力を削る。
あまり、時間は掛けられない。
痛みに背を撓らせた彼を無言で押さえつけていたリヌスが、唇を噛み締めるのが分かった。
「……あまり噛むと唇に傷がつくわよ」
「クレメンスに比べたらどうってことないよ」
「それって、比べるものではないと思うわ」
「まぁ、そうなんだけどね。でも、やっぱり辛くてつい」
「ええ……そうね。よく知っている人だから、なおさらだわ」
互いに視線を合わせぬままの会話。
「……何故治療術で全部治せないのかしらって。こういうとき、いつも思ってたの」
「うん」
「治療術一つで骨折の整復も、消毒も、痛みの軽減も、異物の除去も、全部できたらって何度も思ったわ。こんなに苦しんでるのに、すぐには治してあげられない。施術前の処置中に手遅れになった人を、何人も見てきて……どうして早く治療術で治してくれなかったのって責められたこともあるの。そのたびに悔しくて、歯痒い思いをさせられたわ」
「うん」
「でも、傷を塞ぐだけでは完全ではないのよ。せっかく塞いでも、異物や汚れを取り除かないままだと中毒症状が出たり雑菌が繁殖したりして、最悪死に至るわ。そういうことが知られていなかった時代には、治療術で治したはずの患者が結局助からなかったことも多かった。治療術は万能じゃない。だから私達は、沢山の医療知識と技術を身に付けなければならなかった」
「うん、そうだね。だからエレン先生は冒険者業を休んでまで、偉い先生のところで勉強してきたんだろ」
「ええそう。そうよ。持って生まれた力だけでは足りない。知識と技術がなければ何の意味もないんだわって、頑張っているシオリを見ていて改めて気付かされたわ。あれだけの魔力じゃ何もできないってさんざん言われてたのに、知識と技術で補って立派に仕事をしているんだもの。だったら私も、まだやれることがあるはずだわって思ったのよ」
組合の治療術師として働く傍ら、市内の開業医や施療院に出入りして医学を学んでいたエレンは、治療術師としての自分に行き詰まりを感じていた。
そのとき、優秀な後方支援職として頭角を現し始めていたシオリに感銘を受けたのだ。
「……そっかぁ」
リヌスは小さく笑った。
「先生もシオリの影響受けてたのかぁ」
「ええ。ちょうどそのとき外国の偉いお医者様が王都にいらしてて、期間限定で助手を募集してたの。だからこれを利用しない手はないわって、頭を下げて頼み込んでなんとか助手にしてもらったのよ」
当時のギルドマスター、ランヴァルド・ルンベックは貴重な治療術師が長期間留守にすることにあまり良い顔をしなかったが、良い師のもとで学んだ数ヶ月で得るものは多く、エレンは最終的に医師免許を取得した。
「お陰でできることが格段に増えたわ。それまでは医師が処置し終えるまで治療術を使うことを許されなかった患者さんも、自分一人で対処できるようになったのよ」
本人は知るべくもないだろうが、あのとき背中を押してくれたのは間違いなくシオリなのだ。
「あの一歩がなかったら、今だってニルスの手を借りなければならなかったわ。そうしたら多分、クレメンスの処置は遅れてた。でも、今の私ならできるのよ」
鏃から軸が抜けないよう慎重に取り除いて患部を洗浄し、解毒魔法を念入りにかけ、資格を持つ者しか携行を許されていない抗菌剤を投与する。
幸い大きな血管の損傷はなく、あとは傷口を塞ぐだけだ。
(でも、治療術を受け入れるだけの体力は……もうほとんど残ってないわ)
治療術とは、正確には治療する魔法ではない。本人が持つ自然治癒能力を促進する魔法だ。本来安静を保ちながら時間を掛けて治す過程を、数十秒程度までに大幅短縮するものなのだ。
だから傷や中毒症状が重いほど、本人の体力をそれだけ多く消費してしまう。
これだけの大きな傷を完治させるだけの体力は、クレメンスにはもう残されてはいない。
最低限の治療術ですら、いくらかの時間を要してしまった。
「……ああ、これ。沼蛇の毒だ」
取り除かれた矢を慎重に確かめていたリヌスが、内部の管に残っていた毒液の臭いに顔を顰めた。
蛇と名付けられてはいるが、実際には尾に毒を持つ小竜の一種だ。今ほど豊かではなかった時代、過酷な環境で得られる数少ない貴重な獲物を確実に仕留めるために使われていたその猛毒は、雪熊を数時間で悶死させるほどのものだ。
「全身が激痛に襲われるって話だけど……クレメンスはこんなものに耐えてたんだな」
強靭な肉体と鋼の精神力で耐え抜いたということなのか。
しかし、そのために彼は体力のほとんどを使い切ってしまった。
「残念だけど、今のクレメンスは治癒魔法にも耐えられない。だから軽く塞ぐだけに留めておきましょう。しばらく療養させて、ゆっくり治していけばいいわ」
呼吸は浅く弱々しく、熱も下がり切ってはいない。けれどもきつく顰められていた眉は緩み、表情も穏やかだ。脈も安定している。
「……つまり?」
「多分、峠は越えたってことよ。勿論まだ油断はできないけれどね」
直後に響き渡ったのはリヌスの歓声だ。
助手を務めてくれていた二人の騎士にも笑みが浮かんだ。
「あとは竜を斃すだけね」
最前線にはまだ仕事が残っている。
クレメンスを騎士に預けて薬品類の補充をしたエレンの前に、リヌスの手が差し出された。
「お疲れ、先生。あともう一息だよ」
行こうと言った彼の手にごく自然に右手を預けたエレンは頷き、そして二人一緒に駆け出した。
戦いの終焉が、もうそこまで迫っていた。
↓↓↓ワンクッション置いていつもの後書き
陽キャ竜「自然毒と違って化学物質による中毒は解毒魔法効かないイメージある」
ルリィ「突然何」
※作者のいつもの考え過ぎ病_(:3」∠)_




