09 幕間五 蒼の森のスライムの生態
【基本情報】
■棲息地:蒼の森及びその周辺。
■体長
粘液状:直径1.5~2メテル
饅頭形:直径約50~60センチメテル、体高約60~70センチメテル
■色:青、水色、紫、赤、桃、黄、橙、緑、若草色など。希少ではあるが漆黒や無色透明の個体も。
■性質:陽気で温厚。好奇心が強い。昼行性。
■知性:極めて高い。増殖時に分裂前の個体の知識や経験を何割か継承するため、代を重ねるごとに賢くなるという特性を持つ。しかし個体の性格によっては知識の蓄積を行わなず、人間の幼児かそれ以下程度の知性しか持たない場合もある。
※補足情報
下水道の爺さん「勉強嫌いな個体は知識をあまり蓄積せんようじゃのー。勿体ないことじゃ」
■その他:雌雄の区別はないが、環境によって性格がどちらか寄りになる場合がある。四大元素では水に近く、微弱な水の魔素を帯びている。中和能力が高く、毒物に強い。
【暮らし】
蒼の森のスライムは楽しくて面白いことが大好き。基本的には遊んだり食べたりして暮らしている。
とても温厚な性質で、食事のためや外敵に襲われたという理由がない限りは自分から仕掛けることは滅多にはない。
■遊び
追いかけっこや川下り、水浴び、木登りや探検、虫取りなど、森でできる遊びならなんでもする。うねうねと形を変えて一人遊びをすることもある。人間の暮らしを覗き見て覚えたかくれんぼや踊りも大好き。ほかの魔獣の子供を相手に遊ぶこともある。
■食べるもの
肉や木の実、山菜類、花の蜜など。食の好みは個体によって異なる。なんでも食べるように誤解されているが、少なくとも蒼の森のスライムは腐肉や汚物などは食べず、新鮮な有機物を好んで食べる。
人間と暮らしている個体は人間の食べ物も食べる。たまに人里の祭に入り込んで、道に落ちた料理を失敬していることも。
■睡眠
木の洞や草の陰など、安全な場所に隠れて眠る。集団で行動する際は堂々と地面で眠ることも。
※補足情報「各使い魔の好物」
ルリィ:肉、新鮮な内臓。甘いもの。(お気に入りはシオリの魔法の水と手料理と、エナンデル商会の焼菓子と、使い魔の宿り木亭の雪見鳥の臓物シチュー)
ペルゥ:肉、乳製品、甘いもの、度数の低い甘いお酒。(お気に入りはオリヴィエの魔法の水とホワイトシチュー、エナンデル商会の焼菓子、桃のワイン)
ブロゥ:発酵食品。特にチーズとバターがお気に入り(最近シオリ謹製味噌チーズケーキと牛乳味噌スープに衝撃を受けた)
フィルクローバー:花の蜜。花びら。魚。(最近は焼き魚と蜂蜜たっぷりの薬草茶がお気に入り)
ソルネ:肉、牛乳、果汁汁。(お気に入りは一角兎の串焼きと果物のシロップ漬)
【形状変化】
蒼の森のスライムは多くのスライム種と同様、粘液状で生活する。一部例外として人間の街で暮らすスライムは饅頭型や半球型に近い、彼らが言うところの「可愛い形」で生活している。実際人間にはこの方があまり怖がられないようだ。
練習すれば様々な形に変化できる。しかし色や質感は変えられず、あくまでも形のみ。
※補足情報
形状変化の練習中に、水怪と誤認された個体もいるようだ。
【警戒色(警告色)】
蒼の森のスライムは危険を察知すると血液のような鈍い赤色に変色する。非常に毒々しい色で仲間に外敵の接近を知らせるほか、敵を威嚇するといった効果も。
※補足情報
蒼の森のスライムと使い魔契約を結んだ場合、契約者に危険が迫った場合にも警戒色に変化する。ただし契約者が近くにいる場合のみで、数メテル以上離れると機能しない。
【狩りと戦闘】
蒼の森のスライムが戦うのは、動物性たんぱく質を摂取したいときか襲われたときである。虫取りをする個体もあるが滅多に殺すことはない。
■狩り
気の長い個体は水溜まりのように地面に広がって、近くを通り掛かった獲物をぺろりとする。気の利いた個体になると身体の上に美味しそうな木の実や肉などを置いて、獲物をおびき寄せることもある。釣りのようなものだが、かなり気長に待たないといけないのでよほど暇かよほど気の長い個体でない限りあまりやらない。
しゅるんぺろりが最も効率が良い。
■戦闘
外敵に襲われた場合、戦いついでに食事を済ませることもある。基本的には取り込んで溶かすか、中に入り込んで柔らかい肉と内臓を溶かしつつ摂取するかのいずれかである。
※補足情報
使い魔の場合、人間を殺してはいけないので服を溶かす、呑み込んで拘束するなどの方法で戦う。服を溶かすと高確率で無力化する。
【遠隔感応能力】
魔獣には遠隔感応能力を有する種類が多く確認されているが、蒼の森のスライムや近縁種はこの能力が非常に優れている。
祖先となる個体を同一とする個体同士では、距離にかかわらずこの遠隔感応能力を用いて得た知識や経験を共有することができる。
しかしオリジナルが異なる場合は遠隔感応能力による通信はできず、直接相対して「会話」することによって情報交換を行う。
※補足情報
ルリィ「蒼の森のスライムはしょっちゅう情報交換してるよ! 美味しいものと楽しいことがある場所は皆把握してるよ!」
【繁殖と寿命】
■繁殖
蒼の森のスライムもまたスライム種の例に漏れず、分裂によって繁殖する。分裂に要する時間は数時間から半日ほど。
本来分裂のタイミングは「生命の存続の危機を感じたとき」あるいは「人生に満足したとき」だが、個体によってかなり異なる。特に通常のスライム種よりも人に近い場所で生活し、多くの知識を蓄え様々な考えを持つようになった蒼の森のスライムは個体差が顕著となっており、生涯において一度きりしか分裂しない個体もあれば、気が向いたときに何度でも分裂する個体もある。
また、分裂後、基本的にはオリジナルの個体は寿命を終えて核化(核を残してゼラチン質の肉が消滅する現象)するとされている。しかしこれも個体によって大きく異なり、オリジナルもそのまま生き続ける場合もあるなど謎も多い。まだまだ研究の余地があると言える。
■寿命
スライム種の寿命はかなり長く、中和、浄化能力が高いために毒や病原菌にも極めて強く、最低限の水分と餌、魔素があり、なおかつ外敵に襲われるなどの外的要因がなければいつまででも生き続けるのではないかと言われている。
記録に残る限りの最長記録は、下水道の浄化に用いられている腐肉喰で約320年。近縁種とされている蒼の森のスライムも同程度の寿命を持つと考えられている。
寿命を迎えたスライムは核化し、時間の経過とともに徐々に溶けて消えていく。
※補足情報1
下水道管理者と使い魔契約することによって下水の浄化を請け負う腐肉喰の中には、管理者の死亡直後に核化する個体が一定数存在する。これらの個体は管理者との関係は極めて良好で親密であったため、殉死したのではないかという説がある。つまりある程度は自らの意志で寿命を決定できるのではないかということだが、詳細は未だ不明。
※補足情報2
下水道の爺さん「詳しくは分からんが、人生に十分満足したときがスライムの死に時とも言われとるのぅ」
【その他のスライム】
蒼の森のスライムを始めとしたスライム種は世界各地に多数存在するが、ここでは王国内でもポピュラーな二種類を紹介する。
■腐肉喰
その名の通り腐肉や汚物を好んで食べる大型のスライムで、大きさは蒼の森のスライムのおよそ二~四倍。森の掃除屋とも呼ばれている。摂取した「食料」は分解、無毒化され、水分と気体、無毒な有機物となって排出される。この点に着目し、「汚水処理担当」として古くから各地の下水道に配置されている。
王国では最も有名なスライムであるが、その生態や毒々しい色から忌み嫌う者も決して少なくはない。しかし蒼の森のスライムの近縁種で、極めて温厚な性質。知能も高く、下水道管理者の言葉をほぼ理解するという。
■キューブスライム
洞窟や迷宮などに棲息する無色透明のスライムで、天井から壁、床に掛けて通路一杯に広がって獲物が通り掛かるのを待っている。四角い通路などでは立方体状に見えることから、キューブスライムと呼ばれている。
前述の通り無色透明なため遠目には何もない通路のように見えるが、近付くと光の屈折でキューブスライム後方の景色が歪に見えるためにすぐ分かってしまう上、消化できなかった物体が体内に残されていることも多く、狩りの効率はあまり良くはないようだ。
実際には「遊び」で通路一杯に広がっているだけで、食事のためにそうしている訳ではないという説もある。
しかしうっかりこれに捕らえられると体内で溺死、あるいは生きながらにして溶かされるという壮絶な結末が待っている。
ギリィ「ギリィ……」
脳啜り「あんたはまだ調査中」
予定を変更して「蒼の森のスライムの生態」を投稿しました。
「人物相関図」もどこかのタイミングで出せればなと思います。
次回こそ新章入ります_(:3」∠)_




