07 幕間三 使い魔ブロゥの日記
■二月×日
楽しいなー♪
楽しいなー♪
毎日色々楽しいなー♪
■二月×日
雪野原を散歩中に大白ナナフシ発見!
おっきくて背が高くて、人間が作る鳥小屋くらいの大きさはある。凄いなー大きいなぁー♪
雪の中で何にもしないでじーっと立ってるだけで退屈じゃないかなっていつも思ってたんだけど、じっとしているのが好きらしい。こうやってれば変な木枠にしか見えないから、敵にも見つからなくて平気だって。
普通野原に変な木枠はないからすぐばれるんじゃないかなーって思ったけど、別に何もしないって皆分かってるから、気付いてもほっといてくれるんだって。そういうものかー。
でも今より若くてもう少し小さかったときに、旅人が「ちょうどいい物干しがある」って洗濯物干し始めたときはちょっと困っちゃったみたいだけど。
■二月×日
同胞に誘われて、近くの村にできた人工温泉に行ってみた。足湯とかいって、身体全部じゃなくて足だけ浸かる温泉なんだってー。なんだか面白そう。見つかったら大変だから、夜中にこっそり忍び込んで入ってきた。
すっごいぽかぽかして気持ち良かった!
あんまり気持ち良くてお湯の中でうとうとしちゃったら、明待鳥の鳴き声が聞こえてびっくり。大変だーもうすぐ朝だーって皆で慌てて逃げて帰ってきたけど、それはそれですっごく楽しかったなー♪
■二月×日
森のずーっと奥の方まで遠出したら、雪原カマキリの群れと会った。
雪原カマキリってちゃかちゃかちゃかちゃか面白い走り方するから、見てるとすっごく楽しい。威嚇のポーズで一斉に万歳するから面白くて真似したら怒られた。
うーん、駄目かー。そっかー。
■二月×日
ルリィから瑠璃色の同胞に連絡があったみたいだ。ルリィの友達の知り合いが、スライムと使い魔契約したがってるらしい。
条件は子供好きで遊ぶのが好きなのと、虫取りが好きなのだって!
蒼の森に近いし里帰りもできるみたいだから、行ってみたいなぁ。
興味があるスライムは何匹かいたけど行けるのは二匹だけみたい。だからかくれんぼで行けるスライムを決めたら、自分は外れちゃった。
残念……。
■二月×日
若草色と夕焼け色の同胞はとっても嬉しそうに人間の街に旅立っていった。
いいなぁ。人間との暮らし、興味あるなぁ。楽しそうだなぁ。
ペルゥみたいに自分で友達探しに行ってみようかなー?
■二月×日
えっもう一匹!? もう一匹行っていいの!? 虫取り枠のスライムもう一匹だって!
なんでも夕焼け色の同胞が予定外の人と使い魔契約しちゃったらしい。すっごく気が合ったんだって。門を護ってる騎士の人らしい。
そっかー。でも、気が合う人が見付かって良かったね!
じゃあ自分は次こそ競争頑張るぞ!
……って気合入れてたら、同胞達が譲ってくれた。そんなに行きたいんならいいよって!
やったー! 嬉しいな♪
■二月×日
同胞としばらくのお別れをして、トリスっていう大きな街に来た。ここでルリィと友達は暮らしているらしい。門のそばまで行ったら、夕焼け色の同胞が出迎えてくれた。使い魔契約した騎士の人も一緒だった。
「ソルネの友達かい?」
そうだよ! 夕焼け色の同胞はソルネって名前になったんだね! 夕日っていう意味だって。素敵だね! 若草色の同胞はどんな名前になったんだろう。今度訊いてみよう。
うーん、それにしても、本当に仲が良さそうだ。なんでも会った瞬間に「びびっ」と来たらしい。魔獣にはたまにこうして人間と「びびっ」とくるのがいるらしいんだけど、そういうのなのかなー?
自分はまだそういうのに会ったことがない。まだ分裂して十年くらいだから、もっと長生きしたらそういうこともあるのかなー?
ルリィに迎えに来てもらって、冒険者組合というところに行った。ここに自分と使い魔契約したい人がいるらしい。赤毛で、自分の身体の色と同じ空の色の目をした、すっごく強くて優しそうな人だった。「びびっ」とはしなかったけど、「ほわっ」とした。うん、仲良くなれそう!
嬉しいな♪
自分の新しい友達になってくれる人は、ザックというらしい。人間の中でも凄く強い人なんだけど、虫だけはどうしても駄目だから、虫から守って欲しいんだって!
いいよー! 虫取りは好きだよ! 取れないのは遠くに行ってもらうよ!
って、あ、そっかぁ、使い魔契約すると名前もらえるのか!!
どうしよう凄く嬉しい「ブロゥ」だって故郷の蒼の森と身体の色から取って「ブロゥ」だって凄く嬉しい嬉し過ぎる!
わーいわーいって踊り狂ってたら、ルリィに「落ち着け」って言われた。そんなルリィも結局一緒に踊ってたし、人間達にも笑われた。
だって嬉しいんだもん。名前を付けるって魔獣にはない習慣だから、珍しくて面白くて特別な感じで嬉しい。
これからよろしくね! ザック!
■二月×日
日中は組合でザックと一緒にお仕事。
夜になったらザックの家に帰って、ご飯とお風呂。ご飯は屋台とかお店で買ってくることが多いけど、時々ルリィの友達でザックの妹のシオリが作って持ってきてくれることもある。どのご飯も美味しくて嬉しい。料理って人間にしかない習慣だから面白いなーって思う。
自分はチーズとかバターが好き。ちょっとしょっぱくてちょっと濃い感じの、不思議な味で面白いから好き! 蒼の森の近くの村とか、人間が落としていったのとかで食べたことがあるんだけど、本当にたまーにしか食べられなかった。
でも人間と暮らしているといつでも好きなときに食べられるんだーって気付いて嬉しくなった。
ザックもチーズが好きみたいで、戸棚にいつでも置いてある。自分も好きだって知ってからは、多めに買ってきてくれるようになった。「腹が減ったら食べていいからな」だって!
わーい! ありがとうザック!
この炙ってトロッとしたチーズも美味しいね!
……ところで今後ろに……って、あっそうだった! ザックには内緒で虫取りしなきゃいけないんだった! この間大きな蜘蛛を見つけて嬉しくて、見せてあげたら青くなってひっくり返りそうになってたし。よっぽど嫌いなんだなぁ……。
こっそり仕事しよう。こっそりこっそり。
■二月×日
たっのしっいなー♪
たっのしっいなー♪
まっいにっちとってもたっのしっいなー♪
皆色んなこと教えてくれて面白い。美味しいものの話とか、楽しい遊びの話とか、素敵な音楽のこととか、綺麗な景色の話とか、いろんなことを知るのがとっても楽しい。
ザックがギルドにいる間は、近い場所ならお散歩してもいいっていうから、ちょこっと探検するのも楽しい。
それにザックも色々教えてくれる。今日は図鑑っていうのを見せてくれて、自分が知らない魔獣や植物のことなんかも覚えて楽しかった。
寝る前にはザックの家族のことも教えてくれた。家族は王都っていうところに住んでるんだって。王都はペルゥがいるところだ。いつかペルゥにも会いに行けるといいな!
春が来たらザックは家族に会いに行くらしいから、今からとっても楽しみだなー♪
脳啜り「友達っつーか、これむしろ親子……」
ギリィ「しーっ」
雪狼(……ギリィで確定なのか……)
こ、更新できるうちにせっせと投稿……_(:3」∠)_
次はフィルクローバーの日記で、その次が新章の予定です。




