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58 登場人物紹介(第三章までネタバレ有)

人多くて長いので読み飛ばして頂いても……_:(´ཀ`」 ∠):

■アレク・ディア

 本作男性主人公。34歳。A級冒険者。魔法剣士。トリス支部所属。190cmを超える体躯を生かした重量のある攻撃は殺傷力が高く、トロールや雪熊の分厚い筋肉を貫通させるほど。優れた動体視力と判断力ゆえに素早く正確な動きも可能で、重量と素早さに強力な魔法が加わった攻撃は恐るべき威力である。天才のように思われているが、実際には努力の実力者。どちらかと言えば範囲攻撃よりは単体攻撃の方が得意。

 本名アレクセイ・フレンヴァリ・ストリィディア。現王オリヴィエルの異母兄で、表向きは行方不明扱い。

 シオリの恋人兼相棒。シオリが大好き過ぎて本心では朝から晩までべったりして過ごしたいが、できる大人の男なので公私は分けている。一応。プライベートな時間になると遠慮なくお触りタイム。普段は冷静な男だが、恋人が絡むといまいち冷静さを欠く。

 シオリと組んでの初仕事で知り合い、シオリに社会人失格級の無礼を何度も働いたデニス・ロヴネルに対しては警戒心を抱いていたが、一緒に旅をする中で彼の事情や気骨のある人柄を知り、態度を軟化させた。最終的には友情を結んだようだ。たまに手紙のやり取りをしているが、アンネリエの魔獣素材採集依頼があったら全力で断ってくれという内容の速達が時々届いて困惑している。

 旅やデニスとの出会いを切っ掛けに、気持ちの整理を付けて身の置き所を真剣に考え始めた。全て清算したらシオリにプロポーズする予定。しかし実質してしまったも同然の状態である。

 何がとは言わないが、素人。遅過ぎる思春期満喫中。ルリィにも頭の具合を心配されるほどの思春期ぶりである。シオリのあちこちにキスして楽しんではいるが、メインディッシュのつまみ食いはまだしていない。メインディッシュ()


■シオリ・イズミ

 本作女性主人公。31歳。B級冒険者。家政魔導士。トリス支部所属。魔力は非常に低いが、生来の器用さと集中力の高さ、そして発想力で独自の魔法を多数開発。大魔導士級の魔導士しかできないはずの合成魔法もさらりとやってのけるが、本人曰く「魔力が凄く弱くて集中力があれば案外簡単なんじゃないかな」だそうである。空調魔法や洗濯魔法、お風呂魔法に調理魔法と生活に特化した魔法が得意だが、戦闘中攻撃魔法として使うこともある。洗濯魔法で全滅した大蜘蛛やお風呂魔法で轟沈した雪男の噂は魔獣界では恐怖と哀れみをもって伝えられているという(※ルリィ談)。得意の料理と生活魔法で快適な野営環境提供中。

 本名和泉詩織。4年前にこの世界に転移してきた日本人の元OL。身元引受人のザックには体格とバストサイズから少女だと思われていた。しかし日本基準ではつるぺたではない。アレクが言うには意外にあるらしい。

 アレクの恋人兼相棒。彼の溢れんばかりの愛で過去を思い返せるようになる程度には心の傷が癒え、心からの笑顔も増えてきた。でもたまに隙をついてされる悪戯には少し困っている。ルリィも悪戯を黙認どころか観察を始める始末で困っている。

 アレクと組んでの初仕事で知り合った女伯爵にして女流画家アンネリエ・ロヴネルに大層気に入られ、後に親友になった。いずれは絵のモデルにと請われていたが、早速トリス大聖堂の聖女のモデルにされてしまった。後世、聖女サンナ・グルンデンと同一人物ではないかと唱える一派が現れる原因にもなっているが、これは彼女もアンネリエも知る由のないことである。

 また、同じく知り合ったデニス・ロヴネルには彼の個人的事情から当初邪険にされたが、仕事ぶりや人柄を評価されて後に和解。時折手紙やレシピをやり取りする仲になった。料理研究の末に醤油ソースの黄金比を見つけたという内容の速達が来て若干引いている。たまに会う彼がなんとなく焦がし醤油臭いのはきっと気のせいだとも思っている。

 彼らとの旅を切っ掛けに思うところのあったらしいアレクからは、色々片を付けたらプロポーズすると宣言されてこれを受け入れるが、後から「あれ? あれって実質プロポーズなんじゃ」と気付いた。


■ルリィ

 本作魔獣主人公。とうとう主人公格に昇格してしまった瑠璃色のスライム。?歳。シオリの友人兼使い魔兼害虫駆除業者。トリス支部所属。音を立てずに静かに忍び寄り、隙をついて体内に入り込む奇襲攻撃が得意。ぷよぷよぽよぽよした可愛らしい見た目とは裏腹に、内臓から溶解していく攻撃手法はなかなかにえげつないが、表面から溶かさずに見えない内側を攻撃するのは同行者に対する配慮かもしれない。多分。

 発声器官はないので言葉は話せないが、身振り手振りで人間と同等の意思疎通が可能。冷静で非常に賢く、使い魔仲間や冒険者達の愚痴や相談の聞き役にもなっている。また、シオリと冒険を重ねるうちに、子供の遊び相手や傷病者搬送、緊急避難シェルターなどの様々なお役立ち技能を覚えた。

 しかし人間の性風俗方面には一部に微妙な誤解がある。

 シオリと出会ってから始めた害虫駆除業が思いのほかに繁盛し、最近では固定客が増えてきた。パンや生肉、お菓子など、報酬が顧客ごとに異なるのでルリィの密かな楽しみにもなっている。

 友人のシオリとアレクが(つがい)になって二人とも幸せそうなので自分も幸せ。もっともっと幸せになって欲しいと願っている。クレメンスは頑張れと思っている。

 アレクからご褒美にもらった火の魔法石は宝物。たまに取り出して遊んでいる。



■クレメンス・セーデン

 シオリとアレクの友人。36歳。A級冒険者。双剣使い。トリス支部所属。足を軸に両腕を広げて双剣を振り回し、周囲の敵を巻き込んで切り裂く範囲攻撃や、俊敏な動きで一気に間合いを詰め急所に鋭い一突きを食らわせる単体攻撃など、状況に応じて使い分けできる双剣捌きは見事なもの。

 実家は公爵家とも取引のある王都の大店で、計算が得意。暁事件でシオリの査定記録に改竄されている痕跡を見つけたのは、幼い頃から計算書類を見慣れていた彼である。

 美と戦の男神に見紛うほどの美貌の持ち主だが、奥手過ぎて今まで娼館以外での女性経験がない。アレクとはまさかの素人仲間。女の影がなさ過ぎて、一時期はアレクかザックのどちらかと出来ているのではないかという噂が立ったほど。残念過ぎてスライムにも憐れまれている。同僚のナディアの素性を知らなければ口説こうと思った過去あり。

 アレクとは新人時代からの付き合いで、戦友兼親友。彼の素性や心の傷にも気付いており、早く癒えて幸せになって欲しいと願う一方、密かに愛していたシオリを取られて複雑な思いも抱いていた。しかし失恋の傷は癒えつつあるようだ。

 行きつけの酒屋の「失恋酒特集」で買ってきた東方の酒にはまっている。アレクにも失恋の仕返しに悪戯心で飲ませようとしたが、酒の名前が不吉過ぎて失敗。しかし銘柄を伏せたらザックはまんまと引っかかってにんまり。

 最近ルリィが雌の使い魔を連れてくるのは何故なのかと疑問に思っている。


■ナディア・フェリーチェ

 シオリとアレクの友人。38歳。A級冒険者。上級魔導士。トリス支部所属。火魔法が最も得意だが、水魔法や風魔法などのあらゆる系統の魔法をマスターしている。無詠唱で最上級魔法を放てるほどの魔法の使い手。しかし得手不得手はあるらしく、幻影魔法やシオリのような微調整は苦手。

 保護した当初からシオリを妹のように可愛がり、魔法の指導だけでなく王国風の化粧や着こなし、立ち居振る舞いなども仕込んでいる。いつかは婚礼衣装の世話もしたいと密かに思っている。

 少女時代に事故死した婚約者(※口約束)とザックは親友同士の間柄であり、彼とはその頃からの付き合い。クレメンスに「私では到底釣り合わない」と言われて口説くのを躊躇われるような身分だったようだ。

 長く未練を残すような別れをした婚約者への想いはようやく消化した模様。大台に乗る前に新しい恋をしてもいいかもしれないと思い始めた。


■ザック・シエル

 シオリとアレクの兄貴分。40歳。S級冒険者。剣士。現在はトリス支部の組合(ギルド)マスター。黒い害虫が大の苦手な重剣使い。本名ブレイザック・フォーシェル。公爵家当主エドヴァルド・フォーシェルの異母兄。

 4年前に保護したシオリとは両片思いだったが、暁事件を切っ掛けに気持ちを告げないまま身を引き、兄として接することを決めた。この際不本意ながらもシオリと口移しという名の口付けをしている。彼女はこのときのことを覚えていないが、それでもいいと思っている。

 その後も彼女を見守りながらも恋情を抱き続けていたが、シオリ同様に苦労を重ねてきたアレクと想いを交わし、互いに傷を癒しつつあるのを見て、彼女への想いを消化した。

 女性経験は意外に豊富。しかしどの女性にも「なんだかお父さんとかお兄さんみたい」と言われて振られている。面倒見の良さが裏目に出たようだ。そしてその兄貴ぶりから「ある一定の層」にも人気があるらしい。色んな意味で残念なイケオジ。

 ルリィに自宅と支部の害虫駆除を正式に依頼しようかと悩み始める今日この頃。


■アンネリエ・ロヴネル

 著名な芸術家を輩出する名門貴族、ロヴネル伯爵家の女性当主にして女流画家。25歳。父親が若くして亡くなり、14歳で爵位を継いだ。幼い頃から英才教育を受けた女傑で画家としても領主としても名高く、受け継いだ財産も相当なものであるがゆえに婚約者の座を狙う者が後を絶たなかった。しかしどいつもこいつも大したことはなかったので、全て優秀な二人の部下が退けていた。彼女自ら粉砕した相手もいたという噂も。

 緑色が好き。しかし最愛の人の色である赤色と勿忘草色はもっと好き。

 少女時代から想いを寄せていた第一秘書官のデニスとは両片思いの間柄でいずれは逆プロポーズしようと目論んでいたが、彼の父親の駆け落ち心中事件で彼の社会的立場が悪化。恥晒しの子、そして帝国の血混じりであることを気に病み身を引こうとした彼を引き留めつつも、なんとか彼の心を開けないものかと思い悩む日々を過ごしていた。

 同じく女性の身で爵位を継いでいた曾祖母や先祖の記録を漁っているうちに、「シルヴェリアの塔の儀式」の記述を発見。それは互いの愛を確かめ合い、そしてそれを生涯貫き通す覚悟を問うための儀式だった。危険な旅路を恋人と共に歩き、何の柵もない無垢の景色の中で本音を曝け出し、そして二人して生きて帰るという儀式は、そもそも互いに冬の塔に上るだけの覚悟がなければ成り立たないものである。

 絵の題材を見に行くことを口実にデニスを同行させ、説得の末に彼の心を開くことに成功。生涯共に生きることを誓い合った。

 この旅に出る条件として安全性の確保と体調管理という二つの要件を満たすために雇ったシオリとの出会いは儀式を成功させる切っ掛けにもなっており、その人柄や仕事ぶりにすっかり惚れ込んでしまった。その後シオリとは生涯の親友となる。

 旅の後にデニスの父親の事件は事実が捻じ曲げられていたことが判明した。この件に関しては自身の未熟さゆえに見過ごしてしまっていたと痛感。人を束ねる立場の人間として自身の在り方を見つめ直す切っ掛けになったようだ。

 公務では厳しいがプライベートは甘々とろとろ。何がどうとは言わない。婚儀の際にデニスとともに着用した純白の婚礼衣装は、シオリの言葉から着想を得たデザインにした。ついでに初夜の衣装も「貴方色に染めて」の色にしてデニスを慌てさせた。後に二男三女の母となる。貴方色に染める夜の衣装の効果は絶大。

 最近魔獣素材収集に興味を持ち始めてデニスを困らせている。


■デニス・ロヴネル

 名門貴族ロヴネル家の傍流の出身。26歳。アンネリエとは主従兼幼馴染にして両片思いの間柄。バルトとは従兄弟同士。感情を素直に顔に出してしまう性質で貴族社会では致命的だが、アンネリエにはむしろそこが良いと思われている。

 幼少期にバルトと共に主家の令嬢アンネリエの遊び相手として招かれ、彼女に気に入られて従者見習いになる。非常に優秀で見習い期間が明けた後には側近候補として修業に励み、アンネリエが14歳で爵位を継ぐと同時に第一秘書官補佐に昇進した。

 貴族女性としての気品と貴族社会でも飾らず自然体で振舞えるだけの強さとしなやかさを兼ね備えたアンネリエを、少年時代から密かに愛していた。しかしながら駄々洩れで周囲にはばれていた。

 アンネリエもまたデニスに同様の気持ちを抱いていたために、何もなければそのまま彼女の婚約者に内定していたはずだったが、実父イェルハルドが不倫の末に駆け落ち心中したことで社会的地位が悲惨なことになり、彼をよく思わない者達から激しく糾弾されるようになる。さらに気落ちした母親が衰弱死したことで父親を激しく憎悪。

 また母親から父親を奪った女が移民だったことから、移民や身体的特徴が似ている女性に差別的感情を抱くようになる。お陰で対人トラブルが増え、外向きの仕事には連れ出せなくなってしまった。こういった事情から、指名依頼したシオリに対しても無礼な態度で接して顰蹙を買う。そんな状態でも今まで第一秘書官に据え置きだったのは、ひとえにアンネリエの愛の深さと本人の優秀さゆえ。

 アンネリエが婿を迎えたら潔く辞職するつもりだったが、絵の題材を見に行くという名目で連れ出されたシルヴェリアの塔で熱烈な逆プロポーズをされて、遂に首を縦に振ってしまう。デニス曰く「あの状況で断れる男がいるのなら会ってみたい」だそうだ。

 旅の後にシオリとアレクからの報せで父親の事件に重大な誤解があったことを知る。事件解決後はすっかり毒気が抜けた。

 事実捏造事件の黒幕が慕っていた実の祖父ヴェイセルの仕業であったことを知って多大なショックを受けるが、実の息子と孫に嫉妬するという彼の醜く矮小な人間性に気付き、ショックを受けてやるほどの価値もないと思い直して前向きに考えることにしたようだ。祖父のことは正直どうでもいいが、思いっきり幸せな人生を送って彼を見返してやると意気込んでいるところ。

 余談だが、シオリの話から着想を得たデザインの婚礼衣装は純白だったが、初夜の衣装まで「貴方色に染めて」の純白だったために色んなものを抑え込むのが大変だったそうだ。

 最悪な態度で接してしまったシオリとは彼女の人柄にも助けられて旅の最中で和解し、後に友人となる。時々レシピや食用魔獣についての情報交換をしている。試作品の料理を同僚や使用人に振舞うのが最近の趣味。

 最近アンネリエが魔獣素材収集に興味を持ち始めて困っている。


■バルト・ロヴネル

 名門貴族ロヴネル家の傍流の出身。26歳。アンネリエとは主従兼幼馴染。デニスとは従兄弟同士。食いしん坊で食用魔獣にも興味津々。ルリィに親近感を持たれている。明るいおとぼけキャラに見せかけて非常に優秀かつ辛辣な一面もあったりする。やはり属性はルリィと同じかもしれない。文官としての能力は一級品。アンネリエのために紅茶を選ぶ技量も一級品。

 幼少期にデニスと共に主家の令嬢アンネリエの遊び相手として招かれ、彼女に気に入られて従者見習いになる。アンネリエが14歳で爵位を継ぐと同時に第二秘書官補佐に昇進した。

 父親の事件で立場が悪くなり、荒んでしまったデニスを心底案じていた。事件解決後、幸せそうに寄り添うアンネリエとデニスを眺めては自分も幸せな気分に浸るのが日課。しかし事件の黒幕だった実の祖父のことは彼の死後も許せないでいる。


■ヴェイセル・ロヴネル

 ロヴネル家の傍流男爵家の当主。デニスとバルトの祖父でイェルハルドの実父。

 相応に努力し犠牲を払う覚悟ができなかったために不本意な人生を送るはめになったことを内心不満に思っていた拗らせ老人。「嫌われたくない、良く思われたい」という行動原理が根底にある。

 平凡ながらも堅実な領地経営で領民には慕われ家族にも恵まれ愛されていたので、多くを望まなければ結構幸せだったはず。しかし本人は周りに流され様々なことを諦めてきた人生に大変な不満があり、子供や孫達を愛しながらも反面自らが選択できなかった潔い人生を送る彼らを羨み妬んでもいた。

 10年前の実子イェルハルドの死亡事故を心中事件と偽り汚名を着せた張本人。そうすることで帝国の血を引くデニスをアンネリエから遠ざけ、正統な男爵家の血筋のバルトを彼女の伴侶に宛がおうと画策した。

 しかしそれは表向きの理由で、実際にはデニスとバルトが看破したとおり、息子と孫への嫉妬から、己とは違う潔い人生を送る二人を己の水準まで引き摺り降ろすための工作でもあった。謀略そのものには崇高さなど欠片もなく、ただ自身の醜い嫉妬心を慰めるだけのものだった。

 ほとんど出来心で実行された謀略は、自分でもすぐにばれるだろうと高をくくっていたが、思いのほかに事が上手く進んでしまい、言い出せないまま状況はこじれにこじれて10年経ってしまった。小心者のヴェイセルにとって、いつばれるかとびくびくしながら過ごす10年はなかなかの苦行だった模様で、一気に老け込んだらしい。

 意外なところから事実が明るみに出てアンネリエに断罪されるが、寿命で召される直前だったためにあまり長く生き恥を晒さずにあの世に行ってしまった。しかしこういう性格の人なので、あの世でもずっとうじうじうじうじ過ごしているに違いない。


■イェルハルド・ロヴネル

 デニスの父親。ロヴネル支部所属の冒険者。ロヴネル家の傍流の出で、帝国の血を引く恋人と一緒になるために市井に下った。気さくで面倒見が良く、同僚や後輩にも慕われていた良い男。大変な愛妻家で同僚相手に惚気話を垂れ流し、その点に関しては若干皆を辟易させていた。

 10年前、結婚記念日に妻に贈る花を採集するために相棒のマリオと高山地帯に出向き、転落死した。しかしその事故死は実父のヴェイセルによって浮気の末の心中事件と偽られ、汚名を残すことになる。お陰で妻子が大変な苦労を強いられ、特に息子からは憎悪されることになってしまった。

 死の間際に残される妻と息子の幸せを願っていたことは、誰も知らない。


■ディアナ・ロヴネル

 デニスの母親。うすーーーーく帝国の血が流れる平民の女。移民の街で仕事中のイェルハルドと出会い、その後結婚。その血筋ゆえにロヴネル家周辺からはあまりよく思われていなかったが、優しい夫や「理解のある」義父に可愛がられ、息子にも恵まれて幸せに暮らしていた。しかし10年前に夫が「相棒の妹」と駆け落ちの末に心中したと伝えられ、失意のままに病死。

 あの世でイェルハルドと会い、一足早く真相を知って、また仲良く二人で過ごしていればいいとデニスは思っている。


■マリオ・デ・ペドロ

 デニスの父イェルハルドの相棒。南国系の移民で浅黒い肌に漆黒の髪の中性的な美男子。しかし口を開くと単なる助平オヤジ。ひとつ違いの妹がいる。

 相棒に付き合って花の採集に行き、崖から落ちたイェルハルドを助けようとして自らも転落死した。彼らの死後、その死を不本意な形に歪めて伝えられた。拗らせ老人の被害者の一人。


■イサベル

 マリオの妹。南国系の移民で、兄のマリオとは容姿が非常によく似ている。近寄ればさすがに分かるが、遠目には見分けがつかないほど。この身体的特徴が拗らせ老人に利用され、自身がイェルハルドと駆け落ちの末に心中したことにされていた。しかし本人も含めてロヴネル支部の冒険者は皆そのことを知らず、「ロヴネル家からの使者」にしばらくの間はロヴネル家に接触しないよう懇願され、それを頑なに守り続けたためにヴェイセルの謀略は成功してしまった。

 10年後、ロヴネル家からの報せで兄とイェルハルドの転落事故が利用され、自身とイェルハルドの名誉が汚されていることを知った。事件解決後は時折ロヴネル家を訪れ、当主夫妻にイェルハルドの思い出話をしているようだ。


■ウルリク

 冒険者組合(ギルド)ロヴネル支部の中堅冒険者。イェルハルドとマリオの後輩で、二人の遺髪を取った人物でもある。

 10年前の転落死亡事故で、その調査のために訪れていたイェルハルドの実家からの使者に「まるで心中でもしたみたいな死に方だった」とぽろっとこぼしてしまった。若さゆえの配慮のなさで口にしてしまった軽口だったが、その言葉がヴェイセルに事故を心中事件と偽ることを思いつかせてしまった。確かに配慮のない発言ではあったが、事件に関してははっきり言って彼にほとんど責任はない。全てヴェイセルの責任である。

 事件解決後も冒険者業に勤しみながら、後輩の育成に当たっているようだ。


■テオドール

 ロヴネル家の家令。見習い時代のデニスとバルトの教育係で、当主一家や使用人達の信頼が厚い男。

 画商の息子だったが家業が傾いて路頭に迷っているところをヴェイセル・ロヴネルに拾われ、貴族家でも通用する礼儀作法を仕込まれた。その恩義に報いるために、思うところはありながらもヴェイセルの謀略に加担。彼の指示でアンネリエの手紙を利用し、ロヴネル家とロヴネル支部が今後接触しないように仕向け、支部からアンネリエ宛に送られた封書も抜き取っていた。こうした事情とロヴネル家当主が代替わりした直後のごたごたが重なり、10年間悪事は明るみになることはなかった。

 アンネリエに断罪された後に辞職。表向きは高齢を理由に退職したことになっている。己の罪を噛み締めながら、ひっそりと静かな老後を過ごしたようだ。


■アロルド

 ロヴネル家の料理長。当主一家の体調や精神状態、予定を逐一把握し、それに合った献立を用意するというとんでも技能の持ち主。あまり外したことはない。べらんめぇ口調で職人気質だが、実はどこぞの伯爵家の出だったりする。子沢山の家の末子で気楽に趣味の料理に勤しんでいたが、料理好きが高じ過ぎて一生の仕事にしてしまった人。

 デニスと共に醤油の魅力にはまり、研究に研究を重ねてロヴネル風醤油ソースの黄金比を見つけ出してしまった。醤油の使用量が増えて定期購入を始めたどころか、領内に醤油ブームが巻き起こり、定期的に輸入されることになった。小分け販売も始まってシオリもにっこり。


■リースベット・ロヴネル

 150年ほど前のロヴネル家の当主。近隣でも有名なほどに大変な女傑で、家業を継がなくても良いのをいいことに、大好きな剣技を磨くために武者修行の旅に出ていた。旅の途中でミケール・サリアンという流浪の画家と出会い、恋に落ちる。自分では屈強な男が好みだと思っていたが、線が細くてお姫様みたい(でも口は悪い)な男でも中身が屈強なら好みの範疇だということにこのとき気付いたという。

 後に家を継いでいた兄が病で急死し、爵位を継いだ。身分が釣り合わないからと身を引こうとしたミケールを口説き落とすために、出会いの地であるシルヴェリアの塔まで連れていき、退路を断ったうえで熱烈に迫りに迫ってとうとうモノにした。ミケールが「このままここで食われるんじゃねぇかと思った」と言うほど情熱的だったようだ。女傑な上に肉食系女子だったようである。

 素性の知れない婿殿に絡む輩は物理的に蹴散らした。愛する夫や子供達、大切な領民に囲まれて生涯幸せに過ごしたようだ。


■ミケール・サリアン

 流浪の画家。リースベットの恋人で、後にロヴネル家に婿入りした。公私共に妻を支え、生涯仲睦まじく暮らした。凄く頑張って6人の子供を儲ける。「俺の嫁さんはほんっと情熱的だなぁ……」と寝起きに白目をむきながら呟いていたところを何度か見かけたという記述が当時の侍従の日記に残されている。

 本名ミハイル・サラエフ。実は生粋の帝国貴族で、爵位剥奪された男爵ルキヤン・サラエフの孫息子。無名の画家でもあったルキヤンが皇帝の逆鱗に触れて処刑され、一家は平民落ち。その後理想の景色を求めて各地へと散った。その際に持ち出したルキヤンの絵画が人手に渡り、後にそれらは名画として評価された。

 ちなみにミケールとリースベットの6人の子供のうち3人が後に分家している。このうちの1つがデニスとバルト、そしてヴェイセルの家である。つまるところ、この時点で既に嫡流と傍流全てが帝国の血混じり。「テイコクガー」とか「イミンガー」とか騒いでいた分家の方々は誠にお疲れ様である。草葉の陰でヴェイセルがショックのあまり放心していたかどうかは神のみぞ知る。


■ラネリード夫妻

 魔法剣士ルドガーと姉さん女房の槍使いマレナ。トリス支部所属。ロヴネル領出身で数年前まではロヴネル支部に所属していたが、たまたま仕事で訪れたトリス支部の居心地の良さを気に入り、そのまま移籍した。

 アンネリエの依頼を終えて帰還したアレク達の話を聞き、デニスの父親の身に起きた事件の解決に繋がるヒントを与えた。ロヴネル家が抱える問題を解決に導いた影の功労者である。


和泉(いずみ)詩郎(しろう)

 シオリの実兄。38歳。会社員。妻子と父親と共に暮らしている。母親は先月他界。警察官の友人がいる。

 幼い頃から可愛がっていた7歳年下の妹が4年前に突如失踪。現場の状況から事件性が疑われ、警察が捜査したが捜査は難航した。その後情報提供を求めて公開捜査番組に出演。異常現象と同時に発生した失踪事件は反響を呼び、多くの情報が寄せられるも解決には至らなかった。しかし寄せられた情報や映像データ、そして刑事の態度から、普通の失踪事件ではないということを確信してしまった。

 詩織が恋人らしき男と幸せそうに笑っている姿を夢に見たことで、彼女がどこか遠い場所で生きているということを漠然と察した。もし二度と会えないのだとしても、無事に生きて幸せでいてくれればそれでいいと、祈りにも似た気持ちを抱いている。


■オリヴィエル・フェルセン・ストリィディア

 ストリィディア王国現国王。34歳。4児の父。アレクの異母弟。名君として名高く民にも好かれている良い王様。しかし脱走癖があり、側近達を悩ませている。視察目的の脱走で、しかもやるべきことはやってから脱走するので彼らは文句も言えずとても困っている。

 アレクとは深い絆で結ばれているが、互いに罪悪感を抱えた上でのやや歪んだ結びつきということも自身では理解している。理解はしているがアレクは大事。とても大事。天女と結ばれたアレクが早く幸せになって欲しいと願っている。

 最近使い魔契約した桃色スライムのペルゥが大のお気に入り。ペルゥに顔を埋めると幸せな気分になれる。が、感触が王妃の豊満なバストに似ているとか思っているのは口が裂けても言えない。言ったら教育的指導されるので。

 ペルゥの肖像画を描いてくれる画家を絶賛選定中。内定した画家を困惑させているという。

 誕生日祝いにアレクにおねだりしたペルゥ用キャリーバッグが届くのが楽しみな今日この頃。


■ペルゥ

 桃色のスライム。オリヴィエルの使い魔兼友人。トリスヴァル領ブロヴィート村近隣の蒼の森出身。素の水溜り型の場合は5平方メテルほどのサイズ。饅頭型では直径50㎝前後。ルリィ同様結構でかい。

 ペルゥが来てから何故か城内の(色んな意味での)害虫が激減した。

 オリヴィエルの水魔法が大好物。城内の農場で飼育している乳牛の新鮮な乳で作ったホワイトシチューも大好物。

 ルリィから教えてもらった挨拶で人心を掴み、エドヴァルドに仕込まれた宮廷式挨拶でさらに城仕えの人々の心を鷲掴みにした。人に好かれるための立ち居振る舞いを勉強中。皆とお友達になりたい。

 しかし魔獣としての考え方や矜持はルリィ同様失っておらず、容赦のない一面がある。もしかしたら人知れず始末されている刺客がいるかもしれないという噂がまことしやかに流れているが、ペルゥは賢いので勝手にぺろりしたりはしない。きちんとオリヴィエルのところに連れてくる。全裸で。


■セシリア・ソール・ストリィディア

 ストリィディア王国王妃。オリヴィエルの妻。36歳の姉さん女房。4児の母。独身時代は王立騎士団第三分隊長で元騎士様だった。

 オリヴィエルの婚約者候補を決めるお茶会に「独身だし身分も釣り合うし、まぁ駄目だろうけどせっかくだから行っといで」と気楽に送り出されて来てみたら、なんと彼に一目惚れされてしまった。彼女にその気はなかったが、熱心に口説かれた挙句に「じゃあ君に剣技で勝ったら結婚してくれるかい?」と決闘を申し込まれて、まんまと負けてしまった。手抜きはしていない。先手必勝一撃必殺な技を磨きに磨いた彼に開幕3秒で負けてしまった。しかし、オリヴィエルに負けたのは後にも先にもこの1回だけ。

 ソールというミドルネームはオリヴィエルからの贈り物で、嫁いできた女性に夫となる男性が贈るストリィディア王家の慣わしである。ちなみにソールは王国の古語で「僕の太陽」という意味。

 普段は王妃らしく淑やかな淑女を演じているが、いざというときには騎士様モードになる。騎士様モードは城仕えの侍女達に大人気。抱かれたい人No.1(城内の有志調べ)に輝いた経歴の持ち主。

 脱走していた夫が連れ帰ったペルゥを、それなりに可愛がっている。


■エドヴァルド・フォーシェル

 フォーシェル家当主。王立騎士団副団長。30歳。ザックの異母弟。20代半ばで副団長職に就いた実力者。近いうちに副団長職を退いて、幼馴染のオリヴィエルの側近になる予定。側近という名の目付け役。オリヴィエルは嬉しい反面、戦々恐々としているらしい。

 ザックとは母親違いの兄弟だが、幼少期から彼に懐いている。

 異母兄同様黒い害虫が大の苦手。公務中に見かけても強靭な忍耐力でやり過ごすが、プライベートな時間では逃げ惑うほど苦手。目の前でペルゥが黒い害虫をぺろっとしてしまい、処理能力が追い付かずにその場で卒倒した。しかしこれを弱点と知られるとまずいので、ペルゥ協力のもと克服しようと頑張っている。物凄く頑張っている。


■フレードリク・フォーシェル

 フォーシェル家前当主。ザックとエドヴァルドの父親。先代国王の元側近で現在は特別顧問。59歳。

 武の名門の嫡子でありながら全く芽が出ず、騎士団の幹部だった父親や祖父には失望されていた。代わりに勉学に勤しんで有能な文官として先代国王の側近にまでなった苦労の人。真面目な人だが割と猥談もいける口で、ペルゥの触り心地は女子(おなご)の尻のようだと思っている。


■ベルンハルド・ノルデン・ストリィディア

 オリヴィエルとセシリアの長男。ストリィディア王国王太子。14歳。両親の良いところばかりを受け継いだ見目麗しい文武両道の王子で、将来が楽しみな少年。しかし14歳という年齢の少年らしく、性的な方面に興味深々なお年頃である。

 ペルゥをご婦人の胸に見立ててぽよぽよ突いたり顔を埋めたりして「知的好奇心」を満足させたが、ペルゥに「こうすれば人間は癒される」という間違った知識を植え付けてしまった。このことは母親のセシリアにはばれていないが、万一ばれたら教育的指導は免れない。今のところは無事。今のところは。


■イスフェルト伯爵

 ブロヴィート村の雪狼襲撃事件の主犯。落ち目の伯爵家の当主で、資金調達のために軍事兵器などの禁制品の密輸入に手を染めていたほか、二十年ほど前の王位継承権争いの中心的な人物で、アレクが城を出奔する原因を作った張本人。

 苛烈な詮議の末に有罪判決を下されて投獄された。しかしその「苛烈な詮議」の真相が、ペルゥによって衆目の集まるところで全裸にされて心をぼっきりと折られたのだという事実は、さすがに哀れに思った者達によって伏せられている。その後の事情聴取は大変速やかかつスムーズに行われたという。

 なお、罪状にわいせつ物チン列罪が追加されたかどうかは不明。


■下水道のマダム

 紫色のスライム。下水道の汚水処理用に改良された大型のスライムで、王城地下の下水道に配置されている。下水道に漂いながら、汚水を濾過しつつ生命の美と神秘について考え続けている妖艶なマダム。上げ前据え膳の生活を大層気に入っている。気に入り過ぎてもう下水道から出る気はない。

 時々ペルゥの慰問を受けている。


■さすらいのスライム

 トリス市の下水道に棲む下水道の爺さんの同胞。出不精の爺さんに代わって各地を旅して情報収集している渋いスライム。各地を漫遊しながらその地の名物や魔獣を食べ歩いている。旅の途中でルリィと出会い、雪熊の巨体を二匹で平らげた。

 現在は王都に向かっている模様。

雪男「人間って不便ですよね。私なんていつも全裸なのに」

ルリィ「この間シオリとお風呂中にアレクが……ぬ、黒い虫!」

ペルゥ「……続き気になるんだけど」


次はトリス支部通信書いて、それから次章入ります。

長い話だったので、ちょっと気分替えたい。あくまで希望ですが。

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[一言] トリス支部ルリィ殿に指名依頼出したい、夏 orz 黒いヤツ含め、小さいものは蟻からの大きいものとしてはアブラコウモリ、まれに蛇と、各種バイキング形式にて庭で食べ放題となっております。室内にも…
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