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プロローグ 源氏物語の縁
僕の恋。
もしそれが、遥か千年以上も前の大河小説を発端とした縁だとしたら。
幾多もの男女の恋の様が描かれたあの物語――そう『源氏物語』。
春は曙の霞の間よりおもしろき樺桜の咲き乱れたるを見る心地す。
源氏物語の第二十八帖【野分】にて、
風立つ御簾の間より、光源氏の妻である紫の上を垣間見た光源氏の息子夕霧。
その美貌の姿は、いつまでも夕霧の脳裏を離れなかった。
そう、まさにこれだった。
あの時――
もう十数年も前、
5歳の僕が経験したことは。
千年もの間、多くの人に読み継がれ、
積み重ねられた時間の中で脈々と流れ続けていた縁。
とうとう、僕はその縁を手にした。
さあ、この縁の源流に僕は身を投じるよ。
だって、愛しいんだ、あなたが――