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私に構わんといて  作者: ぽっちゃま
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アラスロンの仕事 2

宜しくお願いいたします。

「さあ、絵里ここが私の職場です」


「「「ようこそ、執政室へ」」」


 大きな声で出迎えられた。扉を開けて入った部屋は、等間隔に机が並んだ日本と同じ様な一般的な会社の風景だった。全体で20人程で女性も二人いた。皆が一斉に立ち上がり嬉しそうに絵里を見ている。あと、少し離れた所に丸テーブルが一つ。そこに随分年嵩の60代位の男性が四人いるが、こちらは座ったままニコニコと笑顔を絵里に向けている。

(何の役にも立たないかも知れへんのにこんなに歓迎してもらい申し訳ない。何がなんでも私が手伝って良かったと思ってもらえる様に頑張らなきゃ)


「皆さん、初めまして今日からこちらでお世話になります絵里と申します。お役に立てるよう頑張りますので、皆様ご指導の程宜しくお願い致します」

 きっちり90度のお辞儀をした。

 ちょっと可笑しな言葉使いと、可愛らしさが噂の絵里からは想像していたものと違いきちんとした挨拶に皆少し驚いたものの、絵里が来るのを楽しみにしていた皆には余計に好印象を与えた。


「絵里、肩の力を抜いてください。頑張って頂くのは嬉しいですが、何時もの絵里らしさも忘れずにいて下さると嬉しいですね」


「はい、アラスロン」

 何故だかアラスロンが微笑んでいるような気がして、嬉しくなり大きな声で返事をした。

 そう、何時もの無表情だが、確かに目が穏やかになり、口角が少し、ほんの少しだが上がっていた。何時もの無表情を見馴れている執政室の人達はその僅かに表情を変えたアラスロンに驚き、アラスロンの表情筋を動かした絵里により一層興味が湧いた。


「では、早速ですが、グリースの手伝いをして頂きます。グリース、こちらへ」


 グリースと呼ばれた男性は、一瞬はっとした顔をしたのち、早足で絵里の前にきたくれた。


「グリース、絵里は字がまだ読めません。数字は分かるのであなたのやっている簡単な計算書類を手伝って貰って下さい。」


「はい、判りました。絵里さん、グリースです。宜しくお願いします」


「絵里です。宜しくお願いいたします」

 ここでもきっちりお辞儀後、顔を上げてグリースを見ると何故か苦笑い。不思議に思って

「どないしたん?」と何時もの喋り方できいてしまった。


「そう、それですよ。僕も昨日食堂に居たんです。絵里さんその変な喋り方のファンになったんです。それに僕の方が年下ですので、あまり畏まらないで下さい。ちなみに僕20歳ですから」


「ほぇ・・」

 どう見たって年上にしかみえないグリース。高身長に切れ長の赤い瞳の美丈夫だ。もはや顔面偏差値の高さに驚かなくなった。


「そうだぞ、ここは仕事は厳しいし、ミスは許されない。だからといってギスギスした雰囲気はご法度だ。困ったことがあったら誰にでも何でも聞いてくれ、皆仲間だ」


 誰かが声を上げた。

 周りを見渡すと皆頷いている。あ~いい職場だなと嬉しくなり、


「ありがとう♪ ほな、改めてよろしゅうな」

 と、無意識の満面の笑みを振り撒く絵里。

 これ以上絵里のファンが増えるのを危惧するアラスロンの心情などこれっぽっちも頭にない絵里は、皆が赤面しているのを不思議に思いながらも笑顔をたやさない。

 黙ったまま席に戻ろうとするグリースに気付き、慌てて後を追った。


  「グリースさん?私は何をお手伝いすればええ?」


  「あっ、そうでしたね、この書類の数字は解りますか? それと、『さん』はいりませんグリースと」


  「分かった、じゃ私も絵里と、ほんでこの数字やろ? 解るよ」


  「では、これを縦に足していって、一番下のここに合計した数字を記入して下さいね」


  「えっこれだけ? 他は?」


  ,「えっ、ええ、先ずはこれをお願いします」


「はい、じゃこの机をお借りします」

 グリースの横の机を借り絵里は計算を始める。机の上で親指と人差し指動かし、数秒すると絵里が合計を記入し、出来ましたとグリースに書類を渡す。

 グリース含め動向を見ていた皆は驚いた。絵里の実力を見るために簡単な計算書類を渡したが数秒で出来るものではないのは皆知っている。目を見開き固まっていたグリースにアラスロンが近付き、確認をと書類を促す。

 急いでグリースが確認するが、絵里の様に直ぐに答えが出るわけもない。

 15分後、焦るグリースが答えを出した。


「合ってます」


「「「「お~」」」」


 普段賑やかではある執務室だが、その日は一際大きな歓声が廊下まで響き渡った。


 



 

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