食堂にて
宜しくお願いいたします。
食堂に着き、席に座ったが…
身長が高い人達ばかりだから仕方の無い事だとはわかっているがいかんせん絵里にとってテーブルが高く椅子が低い状態で非常に食べにくい。なので、今はラキスの膝の上だ。何故だ? だが今はどうでもいい。
騎士団の人達が絵里を抱き上げたがり、ましてや抱き上げるとあまりにも嬉しそうにするので、絵里は気恥ずかしくも、皆、子供の面倒を見る様な感覚なんだろう仕方無いなと考え、なされるがままの状態でいる事にした。とにかく今はお腹が空いているのだ。
「なあ、何でラキスやアラスロンまでおんの? 皇太子様も皆と同じ所で食べるの?」
「そうだぞ兄貴、ここに来るのは初めてじゃないか。何時もは自分の部屋で食べるだろうが。」
「アラスロン兄さんも何時もは執務室で食べるじゃないか。何故今日はここにいるんだよ。」
「今日はいいんだ…疲れたから癒しをね、貰いに」
そう言って絵里の頭に頬を寄せ目を閉じるラキス。
「私は今日は絵里に会ってないから、様子を見に」
と言ってはせっせと絵里に食べ物を食べさせるアラスロン。
アラスロンが何時もの無表情で絵里に食べ物を差し出すので思わず絵里も促されるままに口を開け食べている状態だ。
「う~ん美味しい、ありがとうアラスロン。でも自分で食べれるよ」
「いいんです、絵里、私がやりたいんです」
(アラスロンもクリスティンが大きくなったから面倒を見ることもなくなり、寂しいのかな。きっと懐かしいんだろうな。何となく…何となく嬉しそうやで、ま、いっか、今日の所は)
「あっ、狡いぞ、アラスロン、さあ絵里、今度はこっちの料理も食べてみろ」
絵里を挟んでアラスロンと反対側からホークを差し出すヒース。
そのホークを自分の手で持ち変えて口に運ぶ絵里。
「おっ、これも美味しいな♪」 満面の絵里の笑顔。
周りの男性が皆一様に頬を染める。ヒースも絵里の笑顔を見て一瞬固まったが
「違う、俺のもアラスロンと同じように俺の手から食べて、ほら」
またホークを差し出されるが、それを遮るかたちで前からシャベールが、スプーンを差し出す。
「駄目だよヒース、今度は僕の番さ。さあ絵里このスープをどうぞ。もちろんこの僕の手から食べてね」
絵里はこうなりゃとことん思うようにしてやろうとシャベールのスプーンからスープを飲むが、人からスープなど飲ましてもらった事のない絵里は口から上手く飲む事が出来ず、口の端からスープがタラリ。
「あぁ、こぼれちゃったね」
と言うが早く、シャベールの顔が近付き唇の端をペロリ。
「えっ」
一同動きが止まった。シャベールはしてやったりの顔で、ニヤリと笑っている。
我に返り立ち上がろうとした絵里だが、ラキスの膝の上にいるため思うようにいかない。
シャベールを睨み付けていると、後ろから手が出てきて、袖口で絵里の口元をゴシゴシと擦るラキス。
「絵里、後で消毒して上げるね」
ラキスがことさら優しい声で言う。
「シャベール、行儀がなってないですよ」
絵里の頭を撫でながらアラスロンが不機嫌な声で言う。
「てめえ、何してんだよ」
椅子から立ち上がりヒースがシャベールにつかみかかる。
絵里は食べ始めたばかりでまだお腹が空いてるのにと不満満載だ。
睨み付けたままでいるとバフマンがラキスの膝から絵里を抱き上げ、別のテーブルに連れていく。
「絵里はこっちで食べさせる」
今度はバフマンの膝の上。
今度も周りの騎士達が嬉々として、せっせと絵里の為に料理を運んでくれている。
膝の上は代わりがないが、今度は自分でたべる事が出来た。
だが、膝の上はどうやら順番らしい。何人目の膝の上だろうが気にせず食事をしていたが、知らぬまにラキスの膝に戻ってきたらしい。
「美味しそうに食べるね、絵里。それにその小さな身体の何処にそんなに入っていくんだろう」
「いや~、美味しかった。ご馳走さま」
満面の笑みで手を合わせご馳走さまと頭を下げる絵里。食べた量は大柄な騎士達と変わらぬ量。
美丈夫な騎士達やラキス、アラスロンに世話をやかれる絵里に食堂にいた皆の注目を浴びていた。
妙齢の女性というものは一緒に食事に行っても体型なかり気にして食事の量は皆控えめだ。まだまだ自分は食べたいのにさっさと食事を終わる女性に対して遠慮して思うように食事をできないのが現状の男性たちには絵里の美味しそうに食事をする光景は好感度が高い。絵里の年齢を知っている騎士達は益々絵里が好きになり、絵里を初めて見た男性達は小さな子供は可愛らしいと微笑ましく見つめていた。
また、あんなに食べても体型が変わらないの? なぜあんな子供が皆様に構われるの?
と女性達からは、例え子供といえども許せまい。と嫉妬の目を向けられていた。
ここでの出来事が武官、文官、侍女等、城に勤めるもの達に絵里の噂が一気に広がったのだった。
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