日常
宜しくお願いいたします。
あの翌日から絵里の日常の予定がほぼ決まっていった。
午前中は宰相家で淑女としてのマナーや立ち振舞い、文字の読み書き(言葉は通じるがこちらの文字はサッパリ?な状態)等々お勉強、午後からは騎士団にて一緒に訓練。というか、絵里は騎士達の訓練の邪魔をしないようにその場を少しお借りして身体を動かしたいだけだった。たまに誰かに相手をしてもらえる程度で良かったのだが…。 そうあの追いかけっこから絵里の噂は騎士達に一斉に広がった。美少女ぶりやその気さくな態度も相まって人気急上昇。 そして絵里から香ってくるいい匂いの耐性をつけるべく、変な訓練も日々騎士団訓練後に行う事が決まった。
今日初めての読み書きの勉強が終わり、グッタリしているところにシャベールが迎えにやって来た。
「やあ絵里、調子はどうだい? 迎えに来たよ。・・・う~ん、あまり調子は良くないようだね。」
「いや、大丈夫。ちょっと慣れない頭を使ったからや。身体を動かせばスッキリするさ」
「そう? じゃ早速城に向かおうか。」
「ちょっと待って、昨日の服は洗濯してもらっとるで今日来ていく服がない。それにお腹すいたよぉ。」
今の絵里の服装はシンプルなワンピース、騎士達と訓練する時の服がない。
「それならば、少し大きいかもしれませんが、クリスティン様の服をお借りしますか?奥様にお聞きいたしますが。」
せっかくの侍女のメイベルだが、汚してしまってはあかんと気にする服は遠慮したい。
「ありがとう。せっかくやけど止めとくわ。お綺麗な服を汚してしまうと申し訳ないで。」
「大丈夫だよ、絵里。僕がきちんと第2騎士団の服を用意してるから」
「本当? さすがシャベール、ありがとう! 嬉しい!」
「うっ… そんな言葉より、ほら、行動でしめしてよ。」
絵里の満面の笑みに少し照れながらも、通常運転のシャベール。甘い笑顔で両手を広げて待っている。
つかさず絵里はシャベールの脇をくすぐりにかかった。
「ちょっっ、何やてるのさ、違うだろ? ほら、絵里が来ないなら僕が行くよ。」
シャベールが絵里に向かって来るより先に、さっとメイベルの後ろに隠れ、
「ふん、てっきり脇を触って欲しいんやと思った。抱きついてってなら昨日で散々や。」
「何を言っているのかな。僕は何時でも腕の中に絵里を閉じ込めておきたいよ。可愛い絵里。」
「シャベール、どっかで頭ぶつけたんか?」メイベルの後ろから顔だけ出して頭を傾け?顔の絵里。
「フフ、シャベール様も絵里様にかかれば色男ぶりも形無しですね。」
「(なんだその可愛い顔は、駄目だ抑えろ自分・・) メイベル言ってくれるね、まだまだ絵里はお子様なだけさ。」
「ちゃうわい、誰かれ構わずに無駄な色気は撒き散らさんときないな、本気の女性が出てきた時にその色気を信じてもらえやんな。嘘っぱちな誘惑に思われるに。」
「・・・・・ 僕の事を心配してくれてありがとう。さあ、そろそろ時間だ。昼は騎士団で食べよう。皆が絵里を待ちわびてるから。」
「うん」
メイベルの後ろから出て、シャベールと共に部屋を出た。その時しっかりと絵里の手を繋ぐ事を忘れないシャベールだった。
*******(メイベル side)
あのシャベール様が赤面している所など、初めて見たわ。それにシャベール様に向かって苦言をおっしゃられる女性が奥様以外にいらっしゃるなんて。シャベール様が微笑み甘い言葉を呟けば皆一様に頬を染め上げるのに、絵里様はお逃げになられる。お腹すいたと、平気でおっしゃられたり、無邪気な笑顔でお礼を仰ったり見た目同様幼いかたなのかと思いがちだけれども、シャベール様に向けられた言葉は相手の事を考えての苦言。
私達侍女にも、何かして差し上げれば、ありがとうとよく仰って下さる。不思議な魅力をお持ちな絵里様。
今以上に精一杯お仕えさせて頂きましょう。
*******(シャベールsade)
絵里には今までの女性ようにはいかない。調子を狂わされる。
なんだ、あのくったくない笑顔は!! なんだあの頭を傾けた時の顔は。可愛い過ぎるだろ!思わず赤面してまっただろうが。あれぐらいでありがとうなんてこっちの女は言わないぞ。やってもらって当たり前だと思ってる女性が貴族の中では大半だ。
皆、僕が微笑めば頬を染め上げるって言うのに逃げるなんて、それに嘘っぱちなの誘惑? そうさ本気じゃないさ、来るもの拒まず去るもの追わずだからね。
昨日絵里の香りに惑わされて思わず抱き上げ、抱き締めた。子供のような体型だとばかり思っていたが、抱き締めた時思った。凄く柔らかくて、そして何故か心が満たされて、力を入れれば折れそうで大切に扱わなくてはと何故か何かに誓っていた。
あの想いは香りに惑わされた訳ではないと今日わかった。
もし絵里が僕から去ろうとしたら追わずにはいられないだろうな。
今まで僕の嘘の微笑みや甘い言葉にばかり目を向けられ、それが無いとシャベールじゃないと思われている節があった。それが嫌で仕方がなかった。
絵里なら甘い言葉が無くても僕を見て、僕自身を知ってくれるだろうか。
ああ、絵里、これから本気で誘惑をするよ、君を。僕の本気をわかってね。
この手を離さないように頑張ろう。
お読み頂きありがとうございます。
次の更新はお時間頂きます。ご免なさい。