救世主
今回は少し短めです。
宜しくお願いいたします。
カイの目をしっかりと見つめ、訴えた。なのに何故かカイの顔が真っ赤になり、あっ、とかうっ、っとか呟いて視線をさ迷わせる。この子使えねぇ。他を当たれと思い欲情していなさそうな子達を見つめるが、皆カイと同様な反応だ。
どいつもこいつも使えねぇ。ガッカリしている間にも絵里の身は今またヒースの腕の中、その間、一度も絵里の足は地面を踏んでない。他の騎士達はヒース、シャベール、バフマンの三人の身分に遠慮してか、実際には手を出してこないが絵里の周りに包囲網をはる始末。
「何をしている。ヒース、絵里を離すんだ。」
厳しい皇太子ラキスの声に騎士達は一瞬理性を戻す。緩んだヒース腕から飛び降りた絵里に、ラキスは大きな布を被せ、絵里を抱き上げる。
「何すんだよ兄貴、絵里は俺のだ」
「ちょっと待って下さいよ。絵里は我が家でお預かりしている身、僕に還してもらいましょう。」
「その子は俺が護衛する」
三者三様の声がするが、今度はラキスに抱えられ、キスされた記憶が蘇る。焦る絵里に
「絵里、落ち着いて、私の理性が崩れないように大人しくしていてくれるかい、悪いようにはしないよ。この布に消臭効果があるんだ。分かるよね。」
(そういえば、なんか葉っぱの匂いがするかも)
「皆落ち着け、絵里の匂いに惑わされるな、全員この訓練場内を一回りしてこい。行け。」
皇太子の命令に騎士達は一斉に踵を返す。絵里を取り合っていた三人も渋々だが走り出した。
足音が遠退いた時を見計らい絵里は布から顔を出す。
「ラキス、ありがとう。助かったわ」
「私も初めての時は、心の赴くままに行動してしまったからね。皆の気持ちもわかるんだよ。初対面の女性にあんな気持ちになったのは初めてだからね。 よく思い出してみると、絵里からいい匂いがしてきたからだと思いついたんだ。君は勿論何もしなくても魅力的だが、匂いが発つと危険だね。今もこの訓練場にいた私の部下が、訓練場で凄い美少女が凄いおいかけっこをしているといいにきてね、これは絵里が危険に晒されると思い急いでやって来たのさ。」
「うっ、私ではどうしようもないさ。小さい頃はそうでもなかったけど、20歳を過ぎた頃から体温が上昇すると近くにいる男の人達がおかしくなるん。じっとしとればええんやろけど、身体を動かすのが大好きなんやもん。」
「そうだね、身体を動かしている絵里はイキイキととても楽しそうだ。今後の対策を私と共に考えていこう。絵里の楽しみを奪いたくはないからね。」
「ありがとう、ラキス♪」
絵里の満面の笑みに、思わず女性に百戦錬磨のラキスも顔が赤くなるのを自覚した。
ラキスも案外好い人なんやな、と思っていた絵里は知らない。
ラキスが絵里に監視を付けていたことを。絵里のおいかけっこを最初から見ていたことを。
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