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むかしばなし  作者: 瀬木御ゆうや
夢は一瞬、愛や憎しみは永遠
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エピローグ

「面白い話でした。まさかあの男がそう思って動いていたとは…意外というか、僕でも共感出来ますね」


そう言って語り手の私の話を聞いていた彼は感心しながら頷き、私がわざわざ百貨店の地下デパで買った有名なケーキ店のチーズケーキを頬張る。


私はそんな彼がチーズケーキを最後まで平らげる姿に満足し、この夢幻の物語のエピローグを語る。


「私の千里眼…異常脳力の由来がまさか神のものとは未だに信じられないが、それでもこの力にはシエラ嬢という1人の女性の想いが込められている…そう思うといつも彼には同情してしまう」


「そうですね。僕は異常脳力者ではないですが、同じ境遇なら同じように思うかもしれません」


目の前で客人用ソファーに座って私の言ったことに同意する彼。冬用コートを着た目の細い彼は「ですが」と言ってさっきまでの感心した顔から少し厳しめの、目が細いからそう見えないが、眉間に皺を寄せて私に言った。


「その話、界外術と神格者…僕が知りたかった敵が出てきました。まだお目にしていませんが、あの竜が最後どこに行ったか…見えませんか社長さん」


「分からない。不思議とあの城から逃げたリイナの姿がその後を探しても見えない。異常脳力者は行動が読めないので違う未来が見えることがあるが、この竜はそもそも見ることが出来ない。どういったオカルトかは分からないが、おそらく生きている」


「……そうですか」


彼は悔しそうに顔を俯かせて口元を歪ませる。

彼の表情からしてあの竜は現代でも生きているのが分かった。

不死でもないのに、リイナの体を使っている。

私はそう考える。


とその時事務所のドアが開き、外で待っていた彼の連れが電子辞書を掲げて彼に近付いてくる。


『お腹空いたから夕食食べに行こうよ〜ご飯はハンバーグがいいなぁ(^。^)』


氷のように冷たい表情で、眉を動かすことも変わることもない顔に似合わない文字を打ち込んだ電子辞書。

それには神妙な顔をしていた彼も笑う。


「はははは!そうだなシズク、お腹空いたしそろそろここを発つか!しかし、ハンバーグだとまた体重気にすることになるが大丈夫か?」


『(`・ω・´)太らないから!!』


氷の顔に似合わず、可愛らしい文字を打った電子辞書を彼に見せるシズクという女性。

その姿には私も抑えようとしていた笑いが出てしまう。

さてと、2人の邪魔をしてはいけないから私ももうここらで話を終わらせるか。


「そちらのご婦人の頼みは私でも敵いませんし、そろそろここらで…」


「えぇ、とても有意義な時間をありがとうございます。押し入ったようにきて僕が聞いたのに失礼ながらありがとうございます」


「いえいえ、私とあなたの敵は違えども、最後に相対するモノが同じモノだと話せただけ満足です。そちらの敵は分野が違うので手は出せないですが、私は私で、社員と共に日常を守っていきます」


「はい、僕らも同じよう世界の揺らぎを正していきます。それではこれで」


そう言ってお互いに会釈をした後に彼はシズク嬢と共に扉に向かう。

出る前にもう一度こちらに軽く頭を下げたので私も同じようにする。


2人が出て行った後、誰もいなくなった部屋で私は天井を仰ぐ。

仮面の下から見る天井は狭まって見えるが、私は神通力、バラバラになった異常脳力を使って天井以外を見る。


それは幸せそうに過ごす中世の服を着た3人の家族。

楽しそうに、嬉しそうに笑いながらお喋りをしていた。


それをもって、今度は違うものを見る。

過去、夢物語が終わった後の物語。


ベオだった男は武器を大量に調達し、幾人もの人間を道具のように使い、時には殺し、時には濡れ衣を着せる。

国同士の戦いを嬉々として眺め、双方の死者数に歓喜しそれらに則った事業を打ち出す。

富も名誉も、多大なる力を手に入れた彼。


それを見てから普通の天井を眺める視点に戻して彼は思う。


この苦しみ。

この顔の裏にある愛情。


彼の脅威に晒される人を助けるのが私、『社長』である私の役目だが、それでも彼を救いたいと思う。

この感情は狂っているのか、異常脳力者は何処かおかしいのが常だが私は彼を救いたいと思う。


もしかしたらこの感情は…。


と、私があり得るかもしれないその正体について考察しようとしたところでガチャリとドアが開く。


「あー疲れた、つーか今回の仕事ってただの強盗倒しただけじゃね?警察から表彰も貰えないしつっかえ」


「彼らを後方でサポートしてた者達にオベリスクの手下がいたので無関係ではありません。お疲れ様です飯島さん」


「デュフフ!拙者のフックで2人もノックアウトしててクソワロタwwwww」


我が社の社員、3名の男女が会話しながら仕事から帰ってくる。

賑やかになる部屋で私はさっきまで思っていたことを心の隅に置き、今目の前で楽しそうに笑う今の希望に対して言った。



「やぁ、おかえり」


それは彼が戻ってきた彼女に言う言葉か、あるいは化け物から人間に戻る彼に対して彼女が言う言葉か。

それは私でも分からない。



この裏と裏、始まりを確認した二人の特別な人間。

彼らは絶対的にサポートに徹する者だ。しかしこの夢物語をもとに彼らはあの男女を救おうとする。


残忍な化け物でも、多くの死者を出しても、それを知りながらも。


幸せな彼らを、幸せな時間を。






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