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むかしばなし  作者: 瀬木御ゆうや
夢は一瞬、愛や憎しみは永遠
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残酷な理由


「…なぜシエラを狙う?」


生気のない、もう顔の表情を変えずにベオはリイナ…邪竜に尋ねた。

対して彼は、その質問に疑問を抱く。


「?ちょっと待て…確かに私たちはそのシエラを欲するが、なぜ亡き者の話をまるで生きているかのように名前で語るのだ、あれから200年も経っているのに…まるで今も生きている」


「…いいから答えろよ!聞いてるのはこっちなんだ!!」


急に激昂するベオ。

それに気圧されたのかリイナは左足が一歩下がる。

しかしそれだけだ、無意識に下げたであろうその片足を戻し再び平静を保った顔で語り出す。


「ホムンクルス…あれの元は救国の王子、私の本体を殺して死んだ者の肉体で出来ている。錬金術と界外術師の合作であり、最高傑作の器だ」


「器…だと?」


「そう器だ、ホムンクルスはそのために作られたのだ」


「まて!意味が分からない、どうして器なんて必要なんだ!!界外術ってのは何だ!?」


そうベオが聞くとリイナは背後にいる黒い異形に指をさして答える。


「界外術、神を現界させる最も希少な魔術だ。神を地上に界外させるのは簡単でね、供物と才能、周囲の願いや感情さえあれば可能の素敵な術だ。だが失敗例もある、それがこいつだ」


「答えになってない!一体どういう…」


そう言いかけてふと思い出す。

200人の成れの果て。

自己紹介の時、確かにこのリイナの口からその説明を受けていた。

だとすると。


「ホムンクルスを手に入れるのに我慢が出来なくなった私は当時の信徒200人を使って神を界外させようとした。しかし、神の力は莫大だった。そのため界外術は失敗し、代償として神が中途半端に残した天啓によって信徒達は化け物に姿を変えた」


「本当に…そんな事が…」


「この時私は思い知ったよ、やはり我が神を入れるにはホムンクルスが必要だとね。だからこそ器が欲しい、神を内包できる奇跡の恵体、神1人を体に降ろしても無事なのはあの勇者の体で出来たあのホムンクルスしかいない!私はそのためだけに2000年も彷徨っていたのだから!!」


盛大に語るリイナ。

それに反応して黒い異形も不気味で不愉快な奇声をあげる。

ベオは彼が言った事すべてが信じられなくて、また固まってしまう。


「この不死性だけ得た不愉快な化け物も、ホムンクルスの肉体をその身に取り込めば『神格者』としての力を得る事が出来る。その為の200年!結界を破る為の試行錯誤の年月だった!!しかし、それも今日までだ!!ホムンクルスを手にし、我々の神をこの地上に降ろす!古い神の定説を塗り替えた新しい世界の誕生を我々は目にし手にする!!」


『我ガ神ヨ"ォ"ォ"ォ"ォ"ォ"ォ"ォ"ォ"ォ"ォ'ォ"ォ"ォ"ォ"ォ"ーーーーーー!!我々ヲ"ツギノ"人間ニシテクレ"タマ"エ!!!!』


固まったベオに話しているのか自分に語りかけているのか、聴衆もいないはずの城の中庭で大仰に語りだすリイナと、それに呼応して喋り出す異形。

不快な声と綺麗なはずの声が合わさりベオの耳をつんざくように響き渡る。


しかしベオは、それよりも驚いていた事があった。


「…シエラを、そんな理由だけで生み出したのか?他にもっと……もっと理由があるんじゃないのか?」


その問いに対してリイナは。


「そんなものは無い、あのホムンクルスの命は別にいらなかった。ただ器となる肉体が成長するのを待っていただけだ、狂うのも知っていた、それだけの存在に我々が他の理由を考えると?」


…そう、彼らは最初からシエラ本人のことなどどうでも良かったのだ。

錬金術師も、シエラの父も、シエラの母も、学者達も、そしてこいつらも。

ただ欲しかったのはその肉体。

美しい容姿と神をも受け入れる奇跡の体。

そこにシエラ本人は入っていなかった。

あるのは薄汚い欲望のみで、1人の少女が狂気で狂い苦しむ様もすべてが織り込み済み。

人ですらない化け物、あの愛する人と自分がそうなら目の前にいるアレはなんだ?

アレは人間じゃない。

でもそれに多くの人間が賛同した。

新しいものを手に入れるために犠牲を出そうとする考えに、賛同した人間がいた。


それは、ゾッとする事だった。

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