偶然の産物
さて話を戻そう。
負けたシエラ嬢、しかしなぜか錬金術師は嬢を殺そうとしなかった。
錬金術師も妖しい術を使うがそれでも人の子であり男だ。
負けて地を這うシエラ嬢の顔は血で濡れていたが、それでもその美貌に一切の汚れもないどころか錬金術師ですらドギマギとした心境にさせるほどであった。
それを見て失うのは間違いだと思った。
殺すのが惜しくなった錬金術師は生き絶えそうなシエラ嬢にはこう語った。
「貴公は美しい、その美貌は神話をも彷彿させるほどに。だが生かせば多くの人が死に、この山も峰も超えた先でも恐怖を撒き散らし、狂気を目の当たりにした多くの人が道を違えてしまう。それでも貴公が死ねばこの先数千年は貴公のような美を持つ者は生まれる事はないだろう。死ねば絶世の美がなくなり、生かせば多くの人に死が訪れる。私は困った、このように悩んだのは初めてだ。だからこそここで我が集大成の結晶と最善の策を使ってみよう」
錬金術師は懐からあるものを取り出すとそれをシエラ場の顔に近づけてこう言った。
「これは不死の霊薬、我が錬金術で偶然にも出来た擬似的な霊薬だ。これは万物に与えられる死すらも超えたもの。これを口にすればすべての死から逃れ、また傷も完治する。ようは不死になるのだ。我は一生を生きる覚悟もないので口にはしなかったが、貴公のような者ならその一生も容易かろう」