綺麗な世界
こ れ が や り た か っ た
少女は初めて城の外に出た。
いつもなら城内から眺めるだけだった。
初めて外に出て、初めて外部の世界を体感する。
傷心の少女、リイナは外の空気を吸い込んでいくうちにさっきまでの心や感情の揺さぶれは治った。今は外の世界が楽しいと思えるほどにだ。
リイナはふと自分が住んでいた城があった後方を見た。
もう城は見えない、あの自分の世界であった場所。
大切な家族がいた場所。
その家族に拒絶された場所。
リイナはもう戻れないのかな、と思いながら城からどんどん離れていく。
一歩一歩、暗くなる気持ちと同時に明るくなる気持ちもある。
懐かしい城内から別れる寂しさ、新しい世界への興奮。
リイナは初めての感情に少しだけ胸が苦しくなるが、その葛藤を続けていくうちに深い森の先から光が漏れ出した。
リイナはよたよたと、初めての感情と共に光に飛び出す。
リイナが飛び出した先、そこは広大な草原だった。
サァサァ、足首まで伸びた草と広い大地。
太陽の光と風の匂い。
その風を顔や体で浴び、透きとおった雲を眺めながら、リイナは口を開けて驚いていた。
言葉も出せなかった。
まさか、こんな場所が今まであったなんてと心の中で叫んでいた。
さっきまでの感情の渦はどこへいったのか、明るい気持ちと希望が胸の内から湧き出した。
素晴らしい。
両親があの城からリイナを追い出した理由が少し分かった。
あの城の外でのびのびと頑張れという意味なのだ。
リイナは両親のあの行為を理解した。
ふと、いつの間にか切られた腕の血も止まっており、あの時母に対して…何か沸々と煮えたぎる思いが何かは分からないが、あの気持ちにならなければ城から出ようとは思わないだろう。
それを理解して、後悔の涙を流すリイナ。
別れも言えなかった。
ありがとうも言えなかった。
利発な彼女だからこそ、人らしく礼儀を示したかった。
だからリイナは森の中に戻ってまた城に戻ろうと決心する。
あの感情も、綺麗な世界を見た後ではすっかり消え去っていた。
今は感謝を言いたい。
だからリイナは戻ろうとした。
「やぁお嬢さん、私のために死んでください」
この時、リイナの人生は終わった。
悲鳴をあげる間も無く、何も世界に残すこともなく『私』に呆気なく殺された。




