視線との関係
ある日の夜。
リイナを寝かせたシエラはいつも通り父の書斎に向かう。
書斎に向かう最中に感じる視線。
シエラはこの視線の正体を知っている。
この城で死んだ者たちのもの。
シエラが城から出られない呪いの元であり、殺されながらもシエラの美貌に囚われた亡者たち。
昔なら鬱陶しく思い無視するが、今ではその視線に対して語りかけることにしている。
「今日もリイナを見守ってくれてありがとう、あの子ってば本当に可愛いわよね」
誰も答えない。
でもそれは視線と城の記憶が答えてくれる。
廊下の明かりがより一層灯り、暖かさを放つ。
ただの視線も見ているのではなく、まるでこれからの行先を心から見ているような気分のものとなる。
シエラはそれが嬉しかった。
だから色々と語りかける。
自身の手にかけて殺した者たちに、今日の出来事を事細かく。
その都度、視線と廊下はより明るくなり、城の全盛期よりも綺麗になる。
心が洗われるその時間は、書斎に着くと終わる。
「今日はここまで、ありがとう…本当にありがとう」
感謝を述べる頃にはもう明かりはそこまで明るくはなかった。
視線も消えて、あるのは静まり返った廊下のみ。
シエラは書斎のドアを叩き、ガチャリと部屋に入る。
「お疲れさま、あなた」