リイナ
シエラはベオを愛した。
ベオもまたシエラを知り、何千年振りに人を愛した。
彼らは共に9年の時を過ごし、1人の宝物を得た。
その宝の名はリイナ。
彼らの娘だ。
リイナが生まれた時、シエラは大変喜んだ。
あの殺人の剣と妖しい笑みしか浮かべない狂人が、一つの命を手に入れたことに感動していた。
ベオもまた舞い上がるように喜び、一晩中リイナの側で過ごした。
セイレンがリイナの乳母役を請け負った時、ベオは一歩も譲らない様子だったが、食料の調達のために森で狩りをしなければならなかったので仕方なしにセイレンに任せた。
シエラの世界はリイナが生まれた時に変わった。
城に客人が迷い込んでも殺さずに一晩泊め、笑顔で見送る。
何気無い普通の行為だが、前のシエラだったら欲求不満でそんなことは出来ない。
でも、今は満ち足りている。
リイナとベオ、それにセイレン。
彼らがいるだけで不死でも化け物も関係がない。
彼女らしくいられる。
残酷で残忍、容赦のかけらのない彼女はもういない。
「ただいまシエラ、リイナ」
「お帰りなさいあなた」
「あ!おとーさま!」
狩から帰ってきたベオに抱きつくリイナ。
その頭を笑いながら撫でるベオ。
そして、顔を上げてシエラにも笑顔を向ける。
曇りない笑顔。
この城で殺された時も絶やさずに向けてくれた笑顔。
あぁ…本当に。
それだけで充分だ……。
シエラは今日も心で彼に感謝しながら椅子から立ち上がる。
ベオと愛する我が娘に向かう一歩が、成長だと感じながら。




