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正体
ホムンクルスを作ったのは失敗だった。
学者と錬金術師は己の過ちを知り、彼らは作り出したホムンクルスを全て殺した。
それでも全てを殺したわけではなかった。
錬金術師は最後に残ったホムンクルス。
最高傑作の女の子を貴族の知人に渡した。
残った遺体の全てを使った両極端な悪と善を持つ、次なる人を…。
彼女の名はシエラ。
彼女こそ世界を変える始まりの人だ。
未来は分からないが、きっと彼女がする偉業は神をも倒すだろう。
ーおしまいー
「………」
言葉も出なかった。
もう一つの続巻はシエラの身近にあった。
そしてこの御伽話の顛末にはもう声も思考も無くしていた。
王子の神通力と竜の呪いを併せ持った人工的に作られた人間。
最後に書かれた名前。
シエラ。
自身の名前がそこに記されていた。
シエラは自分の正体を知った。
そうだ。
そもそも思い出からしておかしかった。
母や父はシエラにはあまりにも他人行儀だった。
ふとした時には敬語に変わってる時もある。
剣を習ったわけでもないのに剣の扱いに長け。
最初に人を殺した時も最初は懐かしさがあった。
狂気も理由は無い。
私は化け物だ。
人ですら、なかった。