ホムンクルス
シエラは書棚の奥にあった御伽話を手に取ると本を捲る。
間違いない。
この本はシエラが大切にしていた本だ。
彼女は本の内容を改めて確認しながら、何か変わったものがない確認する。
視界特に変わったものが挟まっていたり書かれているわけではない。
不思議に思いながらもシエラは改めて表紙を見る。
王子が剣を持って竜に立ち向かう絵。
数百年ぶりに見た表紙に、なんとも懐かしい気分になる。
表紙を見て気分が落ち着いていたシエラだったが、ふと表紙がめくれている事に気づいた。
表紙の下、その下に微かに文字が1つある。
シエラは勿体ないと思いながらも、表紙を慎重にはがすように捲る。
すると、その下にはびっしりと文が書かれていた。
シエラは不気味に思うが構わずに文を読む。
内容は『御伽話のその後』の事だった。
国に平和が戻った。
それから数百年が過ぎ、1人の学者が古の決戦の地で竜と王子の遺体を発見する。
遺体は腐敗しておらず、まるで生きているかのように瑞々しさがあった。
学者は何名かの知人を呼び、その中で錬金術師をしていた者が王子の遺体を媒体にホムンクルスを作り出す。
実験は成功し、いくつもの子が生まれた。
神通力を持ち、また多彩な力を使いこなす。
しかし、問題があった。
王子の遺体は呪われていた。
御伽話にある竜の呪いは実在しており、ホムンクルスにまで重大な影響を与えていた。
ホムンクルス1号は発狂し死亡。
その際に知人が2人殺されてしまう。
その後も彼らの間でホムンクルスに手をかけられて何名もの犠牲者を出してしまう。
ホムンクルスには善がなかった。
呪われた身体は狂気を求めてしまうのだ。