竜殺しの王子
書物を漁っていたシエラだったが、ふとあることを思い出した。
父が初めてシエラにくれた本。
あの御伽話の本は不死になる前から読んでいない。
それどころか、地下牢に入れられる前に見かけたはずが出た後からは一度も目にしていない。
もう200年も昔に無くしていたのだ。
父が隠した。
今この日記の答えを挟んで隠した。
何となく、あの父がやりそうな行為だと思い彼女は部屋の中をくまなく探す。
探している最中、シエラはあの御伽話の内容を思い出していた。
御伽話の内容はこうだ。
御伽話の冒頭から英雄と謳われた騎士が竜に殺され、その竜がある国を滅亡まで追い込む。
しかし、1人の王子が竜と対峙し自身の死とともに竜を討伐する。
国は滅亡の危機から救われ、多くの人達が王子を讃える。
内容はこうだった。
シエラは幼いながらに『竜を殺したい』と言って父を困らせたのも覚えているほどあの本が好きだった。
そうして、あの時父が「まだ続きがあるよ」と言ってくれたのも思い出す。
続巻。
その存在があの頃のシエラには眩しいものだった。
どんな内容か、王子亡き後の国はどうなったか、気になって眠れなくなるほど好きだった。
あの頃は純粋だったな。
心で呟くのと同時にガタンと物音がした。
ふと振り返ると、父の部屋の書物が数冊だけ書棚から抜け落ちるように床に落ちた。
そして、落ちた後の書棚の奥に見覚えのある本の表紙を見つけた。
シエラの探していた御伽話の本だ。




