笑み
シエラ嬢は17の時に領地内にある村一つをたった1人で虐殺を始めた。
その時期は領主である父が隣国での戦争のために王城に兵士を率いて出払っていたのだ。
この時をシエラ嬢は待っていた。
使用人が寝たのを確認し、シエラ嬢は特注の甲冑を着て馬を走らせた。
村に着くとまずは放火を始める。
騒ぎに気づいた住民を1人ずつ斬り殺し、騒ぎが大きくなり全員が起き始めた頃に地獄が始まった。
ここからは詳しくは聞いていないが…。
子供や女はもちろん関係なく殺し。
武器を持って刃向かうもの達は全員躊躇なく四肢を斬り落としていったそうだ。
シエラ嬢は天性の剣の腕があったそうだ。
まったく美貌や生まれ、頭や才能も良いのにどうしてこんな事をしたのか?
それは後ほど彼が聞くだろうね。
さて、シエラ嬢は住民全員…は殺せなかった。
逃げのびた数名の村人が近隣の村に助けを求め、その情報はすぐさま2日かけて領主であるシエラ嬢の父の耳に伝わった。
父は激怒し、すぐさま軍を反転させて領地に戻る。
城に戻った領主は目の前の光景を見て怒りすら忘れてしまった。
なにせ娘が使用人の屍の山で優雅に座りながらティーカップを啜っていたのだ。
その姿は実に美しく、顔に付いた返り血ですらそれを引き立てる妖艶さを放っていた。
領主はそこでやっと気づいたのさ。
本心から悟った。
これは娘ではない……と。
ただの化け物だ……と。