りゆう()
さて、ベオに話を聞いたセイレンはそれから日が経ってから今度はシエラに対して質問をした。
「お嬢様はどうしてあの者を追い出そうとしないのですか?」
それに対してシエラは一瞬だが不機嫌な表情を浮かべた。
セイレンは二百数年間もの長い年月の間でこのシエラのことについては誰よりも知っているはずだった。どの食べ物が好きで、どの衣服が好みかなど十分承知しており何に怒るのかも分かっている。
しかし、そんなセイレンでも不可解なのは半年もこの城にベオを置いている事だ。
口元に手を置いて考えていたシエラが手を離し問いに対してその場しのぎで答えようとする。
それを見越してセイレンは、答える前に違う問いを投げかける。
「どうしてあの者を斬らないのですか?」
その質問にはシエラは言葉を詰まらせた。
傲慢さ故の悪女。
彼女を表す言葉がそれであり、実際に少しでも彼女の機嫌を損ねた使用人がいればそれを斬り捨てていた。
もちろん、セイレンも最初はよく失敗したりして何度も斬られてきたのでそれは十分わかっていた。
だがベオにはあの日以来1回も剣を向けていない。
それどころか最近のシエラは剣に興味がなくなったのか帯刀はせず、よく部屋に置いていた。
本質が変わったわけじゃない。
もちろんベオが働き始めた後も来訪者を殺し続けている。
しかしセイレンにはそれがいつも行なっている事と全然違うことに気づいていた。
いつもならば血を啜り肉を咀嚼するのに、あれ以降は斬り殺ししかしていない。そして最近では自らの手で地面を掘り哀れな犠牲者を埋葬し始めた。
何かが変わった。セイレンにはあのシエラが何に対して変わったのか不思議で仕方なかった。
だがシエラは。
「人を斬るのも食べるのも飽きたし、あいつが最近死体を放置するなってうるさいからよ。それにあいつを斬ってもつまらないじゃない、あんなの斬るだけ無駄よ」
と言って足早にセイレンの前から立ち去る。




