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むかーしむかしの夢物語
さて、昔話をしようか。
……おっと、私が誰かって?
それは後々語るとするよ。
何せ私の情報など今この時点では必要もないからね。
では話をしようか。
これは幕間の一つのことだから気にしないでほしい。
そうだな…これは夢物語と言ってもいいだろう。
なにせこれは昔のある無名の話なのだから。
むかーしむかし。
それは遠くない過去のお話。
ある廃れた城に1人の美女が住んでいた。
それはそれはとても綺麗で魅力的な美女だった。
ある詩人がその姿で詩を作り、ある武人はその姿の前に剣を手放してしまうほど美女は美しかった。
廃れた城に1人で住む化け物でなければ。
この城は美女の父、その一帯を支配していた貴族が建てた城だ。
それだけなら普通で立派な話のように思えるが、これはもう二百余年前の話だ。
今は廃城、付近は雑木林や鬱蒼とした茂みに覆われている。
ではどうして二百余年も経つこの城に今も娘である美女が住んでいるのか。
どうして歳をとっていないのか。
それにはある事情があった。