閑話 プリメールとプリメーアの発声教室
プリメールとプリメーアは暇を持て余ししていた。
自分達の創造主であるマトは眠り続け、お見舞いにきたラタニアも、マトが心配で寝不足だったこともあり、今はマトの手を握りながら、熟睡していた。
自分達の所属する軍団の長であるエンリエッサは、予定があるとの事でお見舞いを済ますと、何処かへ出かけていったしばらく経っていた。
第一軍のメンバーからは、マト達を頼むと直々に頼まれたので、この部屋から出るのは、彼らとの約束違反となり、信用をなくしてしまうと考えた。
ならばこの時間を少しでも有意義にしようと、プリメールは一計を講じる。
「…プリメーア、少し私と、言葉の…発声の特訓、やろう…。言葉を喋ることは、相手に自分の意思を伝える、とても大事で、不可欠な事だよ」
「…⁉︎」
突然の申し出に、プリメーアは嬉しそうに全身をくねらせ、同意を示す。
「…じゃあまず、簡単な発音から、一音でもいいから、喋ってみてプリメーア。貴方はやればできる…」
「…っ⁉︎…?…」
プリメールの激励を受け、プリメーアは部屋で発声の特訓を開始する。
口を何度もパクつかせるが、なかなか言葉がでてこない、プリメールとのやりとりは、身振り手振りで伝わるが、他の魔族とはそうはいかない。
プリメーアは必死だった。
「……っ!!…、…っ。…」
「プリメーア、頑張れ、今でかかってた、…考えるなプリメーア、全身で、感じる様に、言葉、出す」
やがてプリメーアに感化されたのか、プリメールもよくわからない精神論を展開させて、プリメーアを鼓舞する。
しかし、次第にうなだれていくプリメーアに、どう励ましていいかわからなくなるプリメール。
「…焦らない、プリメーア。根気と根性、この二つが合わされば、大抵なんとかなる、マトがよく言ってた…」
「…ウナー」
瞬間だがか細いながらも、プリメーアから高い声がした。
それは鳴き声のようにも聞こえたが、二人にとってはまさに、実に大きな一歩であったといえる。
「…プリメーア、言葉が聞こえた!言葉だせた、すごい!すごい…」
「ウナーウナ、ナー」
やめろよ、照れるじゃないかみたいな言葉のスタンスのように聞こえた。
この日、プリメーアは初めて、ウとナの発音に成功した。
さらに濁音をつけたり、語尾を伸ばすなど、高等テクニックまでも身につけ、プリメーアは上機嫌だった。
「ウナナナー!」
「…あぁそうだねプリメーア、マトが褒めてくれるよ。これはすごい、本当にすごい事だ…。また一つ賢くなった、どんどん知識を増やそう」
プリメーアはたしかに言葉を発するようになったのだが、相変わらずプリメールにしか言葉の意味が伝わらない事に気づくのは、もう少し後となる。
「プリメーア、これからこれから…」
「ウナァ…ウー」
相方がしょぼくれるのを、プリメールは力強く励まし、しばしば二人で発声教室を行い続けたが、プリメーアが完全に言葉を習得するのには、まだ時間がかかりそうであった…




