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化物達の理想郷  作者: 同田貫
広がりゆく戦火
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戦勝祝賀会

王国や魔国の所属する北部連盟成立がなってからも、安住の地を求める移民達が、日々移り住んで暮らしていた。


北部連盟成立以前からも、少なからず移民は存在していたが、成立後は以前と比べても増加傾向にあった。


帝国のように、階級毎に区画を整理され、住居も満足に与えられない者達がひしめくこともない。

市民税が払えぬ者は、人ですらない扱いを受けることもない。

職を斡旋する者から、不当な差別を受け、職を制限されることもない。


市民税なども存在せず、戸籍を届け、何かしらの職に所属して労役を果たせば、日々の暮らしを保証されていた。

ここの暮らしは、大陸で隠れ住んでいた魔族や亜人、辺境や帝国での低階層に所属し、日々毎日を精一杯暮らす者達にとっては楽園だった。


そんな中移民達の間で、ある噂が流れ、その話で持ちきりだった。


曰く、重税にあえぐ、オギル村長達を村まとめて庇護下に置いた魔国の重鎮がやってくるとの事。

曰く、此度の帝国軍を撃退した第一軍の精鋭を派遣した、第一軍の軍団長であるという事。

曰く、これほどまでの美談があるのに加え、その方は業魔将の一柱であり、御使い様からの信頼もあついとの事。


「エンリエッサ様というお名前らしいぞ、今度の王国への支援隊の責任者としてこられるそうだ」


「到着されるのは、今日から数えて三日後だそうだ。王国の兵士達が話しているのを聞いたんだ!」

「けどその方は悪魔なんでしょ?」


「関係ないね!その方は、天魔の戦争の後から今に至るまで、永く我ら魔族の同胞を庇護して下さるありがたいお方なんだ。そんな事は些末な事さ」


「俺は北部連盟の兵士に志願するのが夢なんだ、帝国なんか踏み台にして、俺たちの北部連盟こそが世界の中心となるべき存在なんだ!」


移民達は自分勝手に理論を展開し、魔国からの支援隊を、遠まきにでも一目見ようと息巻いていた。

そして実際に、本物の支援隊やエンリエッサを目撃して、感想を言い合う前に、思わず見惚れてしまった。


圧倒的な存在感をだす、御使い様直属の魔族の軍勢を前に、ただただ目をパチクリするしかなかった。




マトのいる宿舎の一室では、プリメールとプリメーアが紹介されていた。


プリメールなどは、擬態を交えながら挨拶をかわし、エンリエッサ達をおどろかせていた。


「なるほど、プリメール君!君の特性は実に素晴らしい!是非、1日使って隅から隅まで分析してみたいな、マト!頼めるかな?」


「エンリエッサ様、ここは堪えて下さいませ。ここはリーゼガルドではなく、王国というこをお忘れなきよう」


「…マト、エンリエッサ…様、なんだか怖い、私は苦手かも、しれない…」


マトに窘められ、唸りながらもプリメーアをいじるエンリエッサ。

プリメーアも気持ちよさそうに、白濁色の身体をねじり、ぷよぷよとエンリエッサの腕の中で揺れていた。


その後、マトに暫くは養生しなさいときつく言いつけると、国王や各国代表のもとに向かうエンリエッサ。


供に数名の文官と、レジーナとミミイ達を引き連れ、北部連盟全体の意見の擦り合わせを行っていた。


「帝国の攻勢を挫いた今、今こそこちらの反攻を見せる時かと存じ上げます!こちらには、勢いと時運、さらには各国の精強な軍隊があります。必ずや勝利する事でしょう」


「セプト自治州の方、帝国を侮ってはいけない。確かに攻勢を挫いたが、それは帝国の持つ一兵力を削いだに過ぎない。東西南北の軍集団、さらに最精鋭である中央軍団を叩かなければ、勝利は難しいでしょうな。数はまだまだあちらに有利であり、我らは予断を許さない」


「うむ、ランバルディア藩主国の言に私も賛成だ。積極策ではなく、専守防衛に努め、相手の出方を窺い敵の戦意が挫けるまで、寄せてきた軍勢を各個撃破するこれしかあるまい」


「ええそうねジョン国王、今はそれが具体的な策と言えるわ。私達の北部連盟の規模は徐々に大きなものとなりつつある。周辺国の加盟がなれば、やがて強大な帝国とも、肩を並べることができるだろう。そこでまず優先すべき事柄があるのを、各国の方々に教えたい」


「…優先事項というのは、一体なんでございましょうかエンリエッサ殿?」


「陛下も人が悪い。まずは我ら北部連盟全体の戦勝祝賀会をいたしましょう。これからの事は、その後でも遅くはないと思いますが?」

「はっははっは、それは一大事だ、失念しておりました」


「結束するのが先決ですな!」


「エンリエッサ殿驚かさないで下さい、私は小心者なんですから、あまりからかわないで下さい…」


「あらジョン国王、そうだったんですね。これはいい情報を聞けました!」


和やかな戦勝祝賀会が、連日ぶっ通しで行われ、飲めや歌えやの大騒ぎとなり、数日間は王国の都市機能が麻痺し、何事かと心配した各国の使者が来るほどであったとされる。

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