魔国からの支援隊
リーゼ指揮の元、業魔将達は動きだす。バンネッタはローガルド要塞の守備に、エンリエッサは王国への支援隊を組織し、それぞれ先発していった。
また、エンリエッサ率いる支援隊の中には、第二軍の力自慢達や、第三軍のゴーレム達を借り受けていた。
巨大な荷馬車や荷車の中には、建築資材や保存の利く食糧、仮設のテントや医療品、さらには少量ながら嗜好品などを満載した車列が続々と王国へと進んでいく。
反対にバンネッタ率いるローガルド要塞への赴任部隊は、全ての兵士が完全武装した物々しい行列であった。
連合軍側が撤退したとはいえ、情勢が不透明なローガルド要塞へは、魔族軍全体から精鋭が集まり、人族側の国々に睨みをきかせる目的があった。
「わっはっは、それでは暫し行って参りますリーゼ様。イシュガルよ守護を任せたぞ、エンリエッサもな!」
「えぇバンネッタ、第二軍の力自慢達を上手く使ってみせるよ!イシュガルもゴーレムありがとう、これは貸しにしといて、いずれなにかで還元するわ!多分ね、いやいずれね!約束は守ると誓うわ」
元気が良すぎるバンネッタに、どこまでが冗談か本気かわからないエンリエッサ。
相変わらずのぶれない二人に不思議な愛着心を覚えながらに、暫しの別れの挨拶をしてゆくイシュガル。
「二人共気をつけてな、私もリーゼ様の守護に全力を尽くそう!油断すると、リーゼ様はすぐサボろうとなさる。だいたいリーゼ様はですね…」
「えーおほん、バンネッタにエンリエッサ、問題があったらすぐに連絡すること。独断先行はせず、個々の能力を過信せずに、事にあたってほしい」
「はっ!では行ってきますね」
「もちろんにございますリーゼ様」
バンネッタとエンリエッサにそう告げるやいなや、イシュガルから避難を始めようとするリーゼを、後をおいながらにぴったりマークしているイシュガル。
ぶれない二人に、苦笑いするバンネッタとエンリエッサ。
果たして本当は仲が良いのか、悪いのか時折本気で疑問に思う。
それから程なくして、両者は握手を交わしつつ、挨拶を交わした。
お互いの無事を祈りながらに。
エンリエッサ率いるウェルドア王国の支援隊の中には、以前より王国への使節団として、信仰のあったラタニアとレジーナがエンリエッサに付き添っていた。
さらにはレジーナの部下達であるハーピー三姉妹、ミミイとメメイ、ヌメイも同行していた。
リーゼとの会談で、ラタニアが申し出した意見を皮切りに、同行者達があれよあれよと増えていった。
「エンリ姉様がいかれるなら、この私レジーナもお供のご許可をリーゼ様!私の居場所はエンリ姉様の横なんです、どうか、何卒!」
「レジーナ隊長を一人にはできません!この私、不肖ミミイも支援隊に同行させて下さいませ御使い様!なにかとお役に立てると存じます!」
「あっ!ミミイ姉が行くなら、私とヌメイも行ってよろしいですかリーゼ様!社会勉強だと思って是非、是非ー!」
御使いであるリーゼも、レジーナやミミイ達の勢いに押され、渋々と許可をだす。動機が不純な者もちらほら混じっていたが、これもなにかの縁だと感じていた。
「いいだろう、皆あちらの方々に粗相のないようにね。あとはエンリエッサの指示に従う事!」
そうした事情もあり、支援隊のメンバーに騒がしいメンツも加わり、賑やかなものとなっていた。
長々とした荷馬車隊が王国に着いたのは、リーゼガルドを出発してから一週間程であり、荷物や資材がある分、移動に制限がかかり到着が遅れてしまった。
それでも王国側や、セプト自治州とランバルディア藩主国の兵士達は、先頭を歩くゴーレムからはためく半月の軍旗を見つけると、割れんばかりの歓声と拍手で支援隊を歓迎した。
「御使い様の軍勢だ!魔国からの支援隊だ、みんなお行儀よくしろよー!」
「第一軍団の旗印だっ!」
「跳ね橋下ろせ!城門近くを整理しろ、荷物が置けないだろがっ!」
「わかってるさ」
番兵達や兵卒達が喜び合いながら、肩を叩き合って騒いでる。
城壁では酒ビン片手に浮かれた者達もでるが、今日ばかりは上官達も見逃していた。それほどまでに今日はめでたい。
ジョン国王もこれには感激し、側近達の制止を振り切り、国王自らエンリエッサ達に握手を求めるほどであった。
到着してからはさっそく、砲撃などで破損した城壁や内壁、住居の修繕に取り掛かる支援隊の兵士達。
傷ついた兵士達に炊き出しを行ったり、治療を王国側と共同で行うなどの細やかな連携をみせていた。
エンリエッサは一通りの指示を支援隊に出し終えると、マト達のいる宿舎を目指し、歩みを進める。
第一軍のメンバーの健闘を励ましながらに、マトのいる部屋に入り、マトの顔を心配そうに見やるエンリエッサ。
当人であるマトは、エンリエッサの言いつけを破ってしまいばつの悪そうな表情をみせており、伏し目がちに縮こまっている。
「マト、色々と言いたいこともあるけど、まずは無事で良かった。呪力は身体に無理を強いる、それ故に負荷も相当に根深いのよ。暫くは安静にして、大人しくなさい。過去には酷使し過ぎた術者が、二度と目を覚まさないこともあったのよ。あまり無茶するな…」
「うぅ、マトさん。無事で良かったです。約束守ってくれましたね、私はもう心配で心配で…、眠れない日だってもちろんあったんですよ…」
「エンリエッサ様、ラタニアも、済まない心配をかけました。暫くは療養する事にいたします」
優しく怒るエンリエッサに小突かれ、ラタニアはポカポカとひとしきりマトを殴っていた。病み上りのマトには辛い。
そしてエンリエッサはふと真顔になる。
「それとマト、一つ聞いていいかしら?部屋にさも当然というようにいる、彼らは一体どこのどちら様だい?」
エンリエッサとラタニア、レジーナ達の視線が、プリメールとプリメーアに集中するが、彼らはそんな事には無頓着で、マトへのお見舞いの品である果物を食べるのに夢中になっていたところだった。




