人魔の交わる都市にて
都市リーゼガルド防衛隊は、ローガルド要塞からの伝令の到着を、今か今かとやきもきして待っていた。
ローガルド要塞はいまや北部連盟の重要な戦力拠点となっている。
もし仮にローガルドが陥落したならば、さしたる防衛能力のないリーゼガルドを放棄し、戦線を下げてロート山脈まで防衛線を下げる必要がある。
そうなると、王国側との連携が難しくなり、北部連盟に致命的な楔をうたれる形となってしまうからだ。
「報告します!伝令が、伝令がローガルド要塞から参りました!」
途端に執務室に詰めていた、オギル村長や防衛隊の司令官に緊張が走る。
防衛が成ったのか、逆に突破されたのか、誰もが嫌な汗を流しつつ、伝令に先を促す…
「任務ご苦労、してローガルドからはなんと?連合軍が来るのか、それとも来ないのか?」
「はっ!ローガルド要塞は健在です、御使い様と業魔将の方々が、連合軍を辛くも退けました!今は軍勢を二つに分け、一方はこのリーゼガルドに向けて、その後に、集結した兵達を順次原隊に復帰させるとの事です!」
瞬間執務室に詰めていた、リーゼガルドの代表達は喜びを爆発させた。
まるで部屋全体を揺らしているかのような、感情の発露であった。
「リーゼ様とエンリエッサ様方が成し遂げたぞ!ラタニア、歓迎の準備をせねばな!司令官殿、なんとか首の皮一枚繋がりましたな」
「左様ですなオギル殿、私共も覚悟していたのですが、御使い様には頭が上がりませんよ」
「仰る通りですな、前回と今回で二度の防衛を達成されたのだ。連合軍側も、これほどの大攻勢は連発できまい。なんにせよ僥倖ですな。エンリエッサ様やリーゼ様の好物である、フラリスの果実酒を樽ごとご用意せねば!あとはフラリスを使ったお料理などを…」
「市長殿が張り切っておられる。これラタニア、お前も歓迎の為の智恵を絞らんか!王国側でも防衛が成った今、なにも心配はいらんぞ」
「えぇオギル叔父さんすいません、マトさんがどうしても心配で、顔を見るまではどうにも落ち着かなくて…。杞憂であればそれでいいのですが」
「マトさんを信じよラタニア、あの人に限ってそんな無茶はしないさ」
「えぇ、オギル叔父さん…」
心配顔のラタニアを、なんとか宥めようとするオギルだが、暗い顔のまま晴れることはなかった。
リーゼガルドに凱旋したリーゼ達は、まるでパレードでもするかのように、都市を練り歩く。
それを都市に住む住民や、防衛隊の兵士達が総出で出迎える。
「リーゼ様ー!」
「きゃーリーゼ様、今私に手を振って下さったわ!ねぇ見ました?」
「違うわよ!今のは私に振って下さったのよ、勘違いしないでちょうだい」
「御使い様ー!」
住民や兵士達の興奮は最高潮であり、手を振りながら、気さくに握手したり声をかけるなどしていた。
「ありがとう、私だけの勝利じゃない。これは私達みんなの勝利よ!貴方達が私に勇気をくれたから、これだけ戦うことができたのよ」
「そんなリーゼ様、私達はなにも。私達は御使い様方が戦う間、闇の神に祈ることしかできませんでした…」
そんな奥ゆかしい住民をひと撫でし、オギル村長と防衛隊の司令官の待つ執務室へと向かう。
街頭では、ひと撫でされた住民を中心に黄色悲鳴が辺りにこだましながら、騒ぎが拡大していた。
「さて、オギル村長に防衛隊の皆も留守番ありがとう。なんとか防衛も成り、連合軍側の脅威も過ぎさった。次は内政面に力を入れるべきだろう、本当に今回は皆に感謝するわ」
「ご謙遜なさらないでくださいリーゼ様、引き続き我ら業魔将が貴方様の手となり足となり、供に貴方様と歩ませていただきます」
「私も同じ思いですリーゼ様、貴方様の覇道の道をお手伝いさせて下さい。微力ながらお手伝いいたします」
「荒事なら私にお任せを、リーゼ様の盾となり矛となる自信があります。この身は、貴方様の御身の為に」
それぞれがそれぞれの思いを、率直にリーゼに伝える業魔将達。
揺るぎない信念を胸の内に秘め、誓いを新たにする業魔将の面々を、まじまじと見つめるリーゼ。
「ありがとうエンリエッサ、イシュガルにバンネッタ。貴方達は私の宝であり誇りだわ、これからも頼りにしている。では、次の指示をだす。エンリエッサは王国への援助、バンネッタはローガルド要塞の守備、イシュガルは私と内政を担当してもらうわ」
「かしこまりました直ちに」
「拝命いたしました」
「承りました」
各々が返事をする中、予想外の人物から発言があった。
「御使い様、私もエンリエッサ様に付いて、王国へ向かってもよろしいでしょうか?身勝手な発言をどうかお赦しくださいませ…」
「こ、こらラタニア何を…」
「わかったラタニア好きにしなさい、エンリエッサと同行して、大金星のマトを労ってきなさい。」
意味ありげにラタニアへウィンクするリーゼに、ラタニアは顔を真っ赤にし、顔を下に向ける不思議な反応を見せた。




