ローガルド要塞戦線(4)
天秤部隊凶星の猛攻が続く、サソリを先頭に第二軍の戦列を幾層も突破し、陣の中心を目指していく。
サソリは武器を持たず、己の腕のみで獣人や魔族を淡々と屠っていく。
「なんだなんだ〜、噂程ではないな第二軍よ?こんなもんじゃ我々を止めれないし、止まらないぞ!あぁそうか、君達は救済を待っていたのかね?それなら仕方ないな、仕方ない…死に絶えろ」
一人悦に浸っているサソリに向け、ナイフが投擲されるが、サソリの身体に当たったナイフが粉々となった。
「んー?なんだねなんだね、ささやかな抵抗だな。もっと気持ちを込めないといけないな、そんなんじゃ全然足らないよ?魔族の将よ」
「薄気味悪いやつだ、そのニヤけた面ごと首を刈り取ってやる。同胞の仇をとらせてもらうぞ」
「今日は実に素晴らしい、なんと良き日か。穢れた存在が自ら懺悔の場に来るとは、宜しい貴方の告解を聞き届けましょう。迷える子羊よ」
「ふん後悔するなよ似非神父がっ、奇妙な戦い方の種をあばいてやる」
ティナは重心を低くし、下段よりサソリの急所を狙いにいくが、サソリはそれを先読みし、ティナの頭に向け猛烈な蹴りをはなっていた。
半身ずらして、辛うじてかわしたティナだったが、掠った箇所から猛烈な痛みを感じていた。
「へぇ、やるじゃないか異端審問官の化物。久々に楽しめそうね」
「虚勢をはるのは良くないな魔族の将よ、ただあの一撃をかわされるとは、私も修行不足だな…。私も楽しくなってきましたよ」
辺りでは天秤部隊と、魔族第二軍が激戦を繰り広げており、聖句を唱えながら戦う天秤部隊達と、ティナを援護するべく第二軍の部隊が展開していた。
身体が真っ二つになる第二軍の者や、射出式炸裂弾を至近距離でうけ、身体が四散した天秤部隊の者など、天秤部隊の者達は、本来身体能力で勝るはずの魔族達と互角以上に戦いを行なっていた。
第二軍が思わぬ形で苦戦している頃、リビングデッド達が率いる第一軍は、戦場を掻き乱していた。
骸骨兵達より先んじて敵陣に突入し、突破口を無理矢理にこじ開け、後続の骸骨兵がその突破口をさらに大きく広げて侵入経路を確保する。
また一つの陣を潰し、リビングデッド達はさらに奥の陣を目指しひた走る。
「聖人がいないねぇーネコゼ、ここも我が軍が頂こうカ?」
「いいやチビよ、そう判断するにはあまりに早計だろう。ここは様子を窺いつつ、攻めに攻める時!」
「委細承知しタ」
「ホソミ待った待った、まったくあいつはー、自分が戦いたいだけだロ」
「あらあらチビ、それは貴方も私も一緒でしょ?戦う場所さえあれば、私達は満足するし、なければその場をつくりにいく。簡単なことじゃない、私達の欲求を満たせれば、あとはなんでもいいのよ。なんでもネ」
「ハッポウ口を慎め、チビもだ。我々はただ職務を遂行すればいいのだ、それが主人様の望みことでもあるし、ひいてはリーゼ様の望みでもあル」
「はいはーイ」
「真面目だなーフトッチョ」
奥の陣を目指すリビングデッド達の前に、白い焔を灯したカンテラを持つ者と、緑色の髪色をした筋肉質の若者が前方を遮るように立ち塞がった。
さらに後方からは、勇者であるマークが立ち塞がり、リビングデッド達と相対していた。
勇者が聖剣を一振り振るうと、光の奔流が降り注ぎ、回避行動の遅れた骸骨兵の隊列を、その存在ごと消し飛ばした。
「あれは勇者だよね?あの存在感はきっとそうに違いない、ちょっといってくるね。エンリエッサ、付近の聖人を頼める?」
「お任せ下さいませリーゼ様、聖人共とは一度手合わせしたいと思っておりました」
そんな彼等を上空から見ていたリーゼは、エンリエッサを伴いながら地上を目指して降下していく。
ゆっくりと勇者の表情を観察しながらに、辺りを見回しいく。
「リビングデッド達、この場は譲ってくれるかしら?勇者は私の獲物なの」
「はいリーゼ様、お前達は付近の敵を掃討にむかえ。敵を一掃するのも役目のうちだ。いい?」
「「了解しましタ」」
辺りは静寂に包まれ、勇者と御使いであるリーゼの視線が絡まる。
エンリエッサも笑みを浮かべたままに、聖人二人を凝視していた。禍々しい魔力が放たれ、まるで気温が下がっているような感覚を覚えた。
「君が勇者かな?私は御使いのリーゼと言うの、君達にはさっそくで悪いけど死んでほしいの。もちろん精一杯抵抗してくれて構わない、そうじゃないと面白くないでしょう?我が父の宿願成就の為にね…」
「はいそうですかと、首を渡すほど私は愚かではないさ。それに私は諦めの悪い人間でね。敵の首魁を打ち倒すお役目があるからさ、君の首を頂くよ…光の神の名に懸けて」




