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化物達の理想郷  作者: 同田貫
広がりゆく戦火
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ローガルド要塞戦線(2)

リーゼの号令のもと、ローガルド要塞にいる魔族全軍が動きだす。

朝もやの中、半月を逆さにしたようなシンボルマークの魔族側の軍旗ががはためき、どこまでも静かに攻撃の準備をしていた。


蟻の巣の塹壕陣地帯から、亡者が這い出るかのように、リビングデッド達に先導された骸骨兵が進軍する。


「ようやく出番ね、今までまるで土竜のような暮らしに飽き飽きしていたところよ。リーゼ様に勝利ヲ…」


「では手筈通りになハッポウ、連合軍側の警戒線を越え、前線を押し上げル」

「はいはい、仰せのままに」


「フトッチョとネコゼ、チビと私とホソミの隊で奇襲でしょ?あとは、レジーナ達との空中部隊との連携よネ」


「心得タ!」

「やっと出撃ダッー!」

「承知…」


蟻の巣の無数にある出入り口から、隊列を組みながら、各隊合流しつつ目標へと向かう。

やる事は簡単だった、敵陣に突入し陣形を乱せ、ただそれだけだった。


半月の軍旗を掲げ、防具や武具の擦れる音を最低限にし、摺り足で忍び寄る亡者の軍団。

あえて速度を捨て、連合軍側の巡回の兵や物見の兵を着実に排除し、先鋒という大事な役目を果たすため、じりじりとゆっくりと近づいていく。

警戒線を抜け、敵陣前衛部分に差し掛かる頃、彼等は行動を開始する。


「総員前進せよ、敵を鏖殺し尽くせ、奴らの死骸をリーゼ様の供物となすのダ」


カチャカチャカチャカチャ…

骸骨兵達の骨の擦れる音が一斉に響き渡り、連合軍側の前線陣地に亡者達が突撃していく。

魔族側は防戦一方だと、思い込んでいた連合軍側の対応はどこまでも鈍く、完全な奇襲攻撃が成立した。

連合軍側が体制を整える頃には、前線陣地各所に魔族達が溢れかえり、血飛沫舞う修羅場と化していた。


「…こいつらいつの間に、巡回の奴らはなにやっていた!急ぎ将軍達と勇者様方に伝令をだせ、破れかぶれになった敵の悪足掻きだ」


「ハッ!了解しました!」


部隊を編成し、現場にいる人間で対応する前線指揮官の士官達。

そこに魔族側のさらなる追い打ちがかかる。レジーナ達の空中部隊が大挙して来襲し、連合軍側の陣地を散々に荒らし回っていく。


リビングデッド達のいる箇所からは、緑色の狼煙が立ち昇り、友軍への誤爆を避けていた。

レジーナ達は低空飛行を繰り返し、敵陣を爆撃してゆく。


「ミミイ、後続はついてきてる?炸裂弾を落とし終えたら、メメイ達の隊と入れ替わり補給しに一時ローガルド要塞にさがるわよ!」


「はい隊長!敵陣を我々の力で存分に吹き飛ばしてやりましょう、私達こそが精鋭であると敵に改めて教育してやりましょう」


地上と空中からの二面攻撃に、連合軍側の陣地は、乱れに乱れた。

爆撃を避けるために、塹壕に籠ればリビングデッド達と白兵戦となり、地上軍の対応をすれば、空中部隊に狙い撃ちにされるというじり貧状態であった。


しかしそんな混乱状態も、連合軍側のある部隊が現場に到着したことにより、急速に終息していく。

イズマイル聖女直轄の部隊であり、中央教会からの増援部隊で、グローリアスの隊とは別に連合軍側と合流した部隊、異端審問官達の所属する天秤部隊であった。


イズマイル聖女を頂点とする中央教会の組織の中で、所有する武力の一つであり、対となる聖堂騎士団とは異なる存在。

その性質は殲滅を主目的とし、対魔族戦のエキスパート達であった。人であれ魔族であれ、仮面を被り外套に逆さ十字の入った審問官達は、畏怖と恐怖の対象であった。


今回は大司祭達の命により、約千人が着陣していた。


「教会の教義に反する異端を排除しろ、あまねく者に教会の教えを!愚か者達には断罪の光を照らせ!」

「「あまねく者に光を、愚者に断罪を!」」


「では敬虔なる信徒諸君、この地に穢れが満ち満ちている。速やかな断罪が必要だ、穢れに与する全ての者に罰をっ!」


天秤部隊を間近で見ていた連合軍の部隊は、固唾を飲んで見守る、彼らは命令であれば、赤児であれ、老人であれ老若男女問わず、あらゆる者を殺戮し、殲滅する。


それは人でも魔族でも同様であり、今回はたまたま標的が魔族なだけであった…

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