衝突する軍勢
ウェルドア王国の国境線を越えてから、グローリアス率いる帝国軍の本隊は進撃を続ける。
さしたる抵抗もなく、王国軍は王都方面へと後退するので、グローリアスの鬱憤は溜まる一方であった。華々しい戦をして勝利を飾りたい彼にとっては、つまらない戦いになっていた。
「つまらんな、実につまらん。王国軍は臆病者の集まりではないか。将軍、部隊を集結させ一挙に攻めたてよ。すぐに白旗を持った軍使を遣いに出すにちがいない。さしたる被害がないのがよい証ではないか、なぁ?」
「それは感心しませんな殿下、王国軍の本領は専守防衛ですぞ。守りの戦をなによりも得意とする者達なのです。まして王城は堅城として名高い城、力攻めして息切れするのは我らです。過去の遠征隊も抜けなかった城です、ここは包囲を厚くし、兵糧攻めがよろしいかと?」
「将軍、それではローガルド方面の雌雄が決するぞ!まったく、将軍では話にならんな。軍団長達はどう思うか?直ちに意見を述べよ」
「殿下、正攻法で攻めに攻め、短期決戦にて王城を陥落させ、ローガルド要塞の後背をつき目的を達成させるべきです、殿下御采配をっ!」
「私も同意見だ、殿下」
「うむ、そうか皆の意見はわかった!直ちに王城攻略を開始せよ、我ら帝国の旗印を掲げてやろうぞ!」
同調する事に長けた者達により、将軍が反対していた短期決戦に話が纏まろうとしていた。
もはや将軍一人の力では、この場は諌めきれない事態となっていた。
「敵軍勢進撃を開始、真っ直ぐに王城を目指しています。敵影多数、我らの倍かそれ以上の数です!」
望遠鏡を覗く監視兵が、悲鳴にも似た報告をする。
途端に辺りは緊張感がはしり、要所を守る城門守備隊が装備の最終点検を行う。
マト達を中心に、セプト自治州とランバルディア藩主国、ウェルドア王国の兵士達が城壁の上に展開し、段取りの確認を行っていた。
「マト殿、では手筈通りに。我らは所定の位置につきます、御武運を!」
「えぇ頼むわよ、ランバルディア藩主国とセプト自治州もよろしいかしら?敵は包囲をせず、無策で力攻めを選んだ。その愚かさを教育してあげましょう」
ドン、ドドドドンドドン、ドン
くぐもった野砲の連続した発砲音が辺りに響きわたる中、第一軍の兵達にマトは鋭く命令を出す。
「魔術兵各員、風壁展開!城門とその周辺を守りなさい、絶対死守を敢行せよ!砲撃を散らせ」
「「おぉーー!!」」
砲撃が城門付近に集中するが、命中段は少なく、明後日の方向へ右や左に流れていった。
その結果、城門は無傷で残り、守備側は大いに士気をあげた。敵は遠距離攻撃に効果がないとみると、距離を詰めながら、攻城塔や梯子を装備した兵達を前進させた。
城壁に敵が迫っても、マト達は攻撃をしなかった。
「マト殿、まだですか?敵が迫っています!これ以上は、危険ですよ」
「待ちなさい!まだよ、まだ潮が満ちてない。帝国軍がひしめき合うギリギリを狙う、まだ、まだ、まだ……放て!」
そして敵兵力が城壁下に殺到し、埋め尽くす程になって攻撃命令を下す。帝国軍の頭上からは、炸裂弾が雨霰と降り注ぎ、油と火矢が大量に投げ込まれた。
炸裂弾が兵士達を引き裂き、火矢が追い打ちをかける。
「熱い、熱い!あ…つい…」
「俺の手がない!手がないんだ!」
「助け、助けて…誰でもいい…」
帝国軍との距離が近いので、どこに投げても敵に命中するという、まさに入れ食い状態だった。
「プリメール、プリメーア!奴らに地獄をみせてきなさい!御使い様の融和を拒絶し、敵対するということがいかに罪深いか、教育しなさい!」
二体の人外が、命令を受け音もなく城壁下に降り立ち、行動を開始する。混乱の極みといった城壁下に
帝国軍にとっての長い長い1日がこうして幕をあげた。




